若い人のピロリ菌感染でよくみられる内視鏡(胃カメラ)所見・バリウム検査所見に、「鳥肌胃炎(とりはだいえん)」があります。
後述するように、鳥肌胃炎のある胃には、びまん型(未分化型)の胃がんが生じやすいことが報告されています。
今回は鳥肌胃炎の原因と、治療などについてまとめてみました。
- 鳥肌胃炎は、胃の出口に近い前庭部の粘膜が鳥肌のようにぶつぶつ見える慢性胃炎で、ピロリ菌感染が原因です。
- 10〜20歳代の若い人、特に女性に多く、ほとんど症状がありません。診断は胃カメラまたはバリウム検査で、血液・尿検査やCTでは診断できません。
- 鳥肌胃炎のある胃にはびまん型(未分化型)の胃がんが生じやすいと報告されており、ピロリ菌の除菌が勧められます。
- 除菌後も胃がんのリスクがゼロにはならないため、除菌後も定期的な胃カメラが大切です。
鳥肌胃炎とは?
鳥肌胃炎は読んで字のごとく、胃の内視鏡(胃カメラ)所見が、「鳥肌」のようにみえることからこのような名前が付けられています。
実際の内視鏡所見はこんな感じです。

2013年放射線科診断専門医試験問題62より引用。
まさに「鳥肌」のような胃の壁ですね・・・。
鳥肌胃炎は慢性胃炎に分類され、特に胃の前庭部側の粘膜がこのような形態を呈することで知られています。

10~20歳代の若い人、特に女性のピロリ菌感染の胃によく見られます(Shiotaniら 2007)。ほとんど自覚症状がなく、健診や胃カメラで偶然見つかることが多い所見です。
鳥肌胃炎の原因は?
鳥肌胃炎は、ピロリ菌の感染が原因となります。

なぜ鳥肌のような胃壁になるかというと、病理組織学的には、粘膜固有層のリンパ濾胞の増生が隆起を形成するためと言われています。
隆起を形成した結果、鳥肌のように見えるということです。
鳥肌胃炎を見つける検査方法は?
この鳥肌胃炎を見つけるには、実際に胃の壁の様子を見る検査をする必要があります。
その検査は2つあります。
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
- 胃透視検査(バリウム)
この2つです。

腹部の触診などではもちろん診断できませんし、CTやMRIなどの画像検査でも診断できません。
ちなみに胃透視検査で鳥肌胃炎を見ると次のように見えます。

2013年放射線科診断専門医試験問題62より引用。
内視鏡で見られたのと同様に「鳥肌」のような形態(胃小区が類円形で密集している)を示していることがわかります。
胃カメラとバリウム検査の違いについてはこちらに詳しく解説しました。→胃カメラとバリウムのどっちを受ければいい?比較

鳥肌胃炎は胃がんになりやすい?
鳥肌胃炎の、最大の問題は胃がんになりやすいことです。
日本の内視鏡検査の報告では、ピロリ菌陽性の674人のうち鳥肌胃炎は114人(17%)で、女性と若い成人に多くみられました。鳥肌胃炎の人に見つかった胃がんはすべてびまん型(未分化型)で、鳥肌胃炎のない人では腸型(分化型)が大半でした(Nishikawaら 2018)。
びまん型は粘膜の下に広がるように進むため、早期には見つけにくいことがあるタイプです。同じピロリ菌感染でも、年齢が上がると胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎が増え、鳥肌胃炎は目立たなくなっていくとされます。逆に言えば、10〜20歳代の若いうちにピロリ菌を調べて除菌しておく意義が大きいと考えられています。
鳥肌胃炎の胃がんは、胃の出口(前庭部)の鳥肌所見だけでなく、胃体部(胃の上〜中部)にできることが多いとされます。胃カメラでは前庭部だけでなく胃体部まで丁寧に観察することが勧められています(日本の総説 Nihon Rinsho 2012)。
鳥肌胃炎との関連が知られるスキルス胃がんについては、スキルス胃がんとは?見つけにくい理由・症状・検査で解説しています。
鳥肌胃炎の治療は?
鳥肌胃炎は上に述べたように、ピロリ菌(H.pylori)感染が原因と言われています。
ですので、治療は、速やかにピロリ菌の除菌が効果的です。
胃がんを予防するためにはピロリ菌の除菌が有用であることは、日本ヘリコバクター学会が正式に推奨しています3)4)。
ピロリ菌除菌すると鳥肌胃炎は消えるのか?
若い人の鳥肌胃炎では、除菌により鳥肌状の粘膜が改善し、腹痛などの症状が軽くなることが多いと報告されています5)。除菌に成功した鳥肌胃炎の82人では、3年間の経過観察中に胃がんは見つからなかったとの報告もあります(Nishikawaら 2018。ただし小規模な後ろ向き研究です)。
ただし除菌をしても胃がんのリスクがゼロになるわけではありません。ピロリ菌除菌は胃がんの発生を減らすことがランダム化試験のまとめ(Cochrane)で示されていますが、その効果の大きさは明確でないとされています(Fordら 2020)。除菌後も、定期的に胃カメラで経過をみることが一般的です。
鳥肌胃炎の治療は保険適応?
2013年までのピロリ菌除菌の保険適応は胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃がん内視鏡治療後などに限られていました。
しかし、2013年に「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」が保険診療の対象に加わりました(日本ヘリコバクター学会ガイドライン 2016年改訂版)。
そのため鳥肌胃炎や萎縮性胃炎といった慢性胃炎にも、保険でピロリ菌の除菌が受けられるようになりました。保険適用の条件(胃カメラ等で胃炎を確認していることなど)は医療機関で確認してください。

除菌がうまくいかなかったときの対応は、ピロリ菌除菌が失敗する原因は?失敗したらどうする?成功率と再発の目安で解説しています。
除菌治療中に出ることのある症状については、ピロリ菌除菌の副作用は?下痢・味覚異常・発疹・受診目安を解説で解説しています。
よくある疑問
Q. 鳥肌胃炎と言われました。症状がなくても治療が必要ですか?
A. 症状がなくても、ピロリ菌の検査(呼気・便・血液・内視鏡下の検査など)を受け、陽性なら除菌が勧められます。何科かは、消化器内科が目安です。
Q. 子どもや10代でも除菌できますか?
A. 可能ですが、年齢や体重に応じた薬の選択が必要です。小児の場合は小児科や、小児の除菌に慣れた消化器内科で相談してください。
Q. 除菌したら、胃カメラはもう不要ですか?
A. 除菌後も胃がんが生じることがあるため、定期的な胃カメラが勧められます。間隔は医師と相談してください。
Q. 家族もピロリ菌を調べたほうがよいですか?
A. ピロリ菌は主に幼少期に家庭内で感染すると考えられており、家族に感染者がいる場合は検査を考えてよいでしょう。気になる症状や検査結果があれば、医療機関を受診してください。
最後に
10-20歳という非常に若い、特に女性の鳥肌胃炎は胃がんの発症率が高く注意が必要です。
鳥肌胃炎の原因はピロリ菌ですが、若い人はなかなか症状がでない限りピロリ菌検査をしたり、胃カメラを飲む機会は通常ありません。
ですので、自治体によっては中学生を対象にピロリ菌検査を実施しているところもあります(佐賀県の中学生対象の事業など。内容は自治体ごとに異なります)。保護者の同意のうえで検査を行い、陽性の場合は除菌治療につなげる仕組みです。
このように無症状であっても、10代という早い段階でピロリ菌をチェックして、陽性ならば除菌をしておくということが重要であるという認識が広まってきています。
参考)
1)Dig Endosc,19:180-184.2007
2)胃と腸46;1363-1369,2011
3)胃と腸,46:75-82,2011
4)Helicobacter Research,13:374-378,2009
5)胃と腸46:1353-1362.2011
参考文献(追加):
Nishikawa I, et al. Nodular gastritis in association with gastric cancer development before and after Helicobacter pylori eradication. JGH Open 2018. PubMed
Shiotani A, et al. Nodular gastritis in Japanese young adults: endoscopic and histological observations. J Gastroenterol 2007. PubMed
Ford AC, et al. Helicobacter pylori eradication for the prevention of gastric neoplasia. Cochrane Database Syst Rev 2020. PubMed
Kato M, et al. Guidelines for the management of Helicobacter pylori infection in Japan: 2016 Revised Edition. Helicobacter 2019. PubMed
[Nodular gastritis and gastric cancer in young adult]. Nihon Rinsho 2012. PubMed





