多くの芸能人が患ったことでも、よく耳にすることの多いスキルス性胃がん。
他のがんに比べ、膵臓がんと同様に発見が遅れがちで、気づいた時には進行してしまっていることも多い怖いがんです。
今回は、このスキルス性胃がん(英語表記で「Scirrhous gastric cancer」)について
- 症状
- 原因
- 検査
- ステージ
- 治療
- 予後
など、気になることをまとめてみました。
参考にされてください。
スキルス性胃がんとは?
がんの中でも悪性度の高いもので、びまん性に浸潤しているものをいいます。
語源はギリシャ語のskirrhos、硬い腫瘍という意味で、別名「硬癌(こうがん)」ともいわれます。
胃がんは肉眼的分類を用いて0型〜5型まであり、その中で間質結合組織の増生が強い硬性がんで、びまん性に浸潤した4型胃がんのほとんどが、スキルス性胃がんです。
スキルス胃がんは、胃の粘膜にはほとんど所見がない状態で、粘膜の中で進行し、気づいたとき(診断されるとき)には胃の広範に病変の広がった状態であるということが多い胃がんでも知られています。
胃がんの中でも、より悪性度が高い組織型(特に印環細胞がん(signet-cell carcinoma))を示す未分化型の胃がんがスキルス胃がんになりやすく、比較的若年者に多いとされます。
リンパの流れに沿ったリンパ行性転移や、腹腔内に腫瘍細胞がばら撒かれる播種(はしゅ)という形態でがん細胞が広がりやすいのが特長です。
中でも、Douglas窩(骨盤の最下部)への播種をSchnitzler(シュニッツラー)転移、卵巣への血行性もしくは播種をKrukenberg(クルッケンベルグ)腫瘍とそれぞれ名前が付いています。
関連記事)胃がんのステージ分類や治療方針は?どうやって決まる?
スキルス性胃がんの症状は?
初期症状
初期症状があらわれず気づかれにくいことも、このスキルス性胃がんの特徴ですが、中には
- 心窩部痛
- 体重減少
があらわれることもあり、いつもと何かが違うと胃の不快感を感じる方もいます。
進行した際の症状
また進行すると
- 上腹部の不快感
- 膨満感
- 悪心
- 嘔吐
- 黒色便(出血による)
- 軟便
- 疲労感
- 貧血症状
- 食べ物の通過障害
- 閉塞症状
などがあらわれます。
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スキルス性胃がんの原因は?
ピロリ菌の長期持続感染が原因となり、萎縮性胃炎や腸上皮化生を引き起こすために発症しやすくなるといわれています。
その他、
- 喫煙
- 食塩の過剰摂取
- βカロテンの摂取不足
などの生活習慣や糖尿病や肥満の関与も考えられています。
関連記事)鳥肌胃炎とは?ピロリ菌・胃がんとの関係・原因・治療まとめ!
スキルス性胃がんの検査は?
血液検査や内視鏡、画像検査、生検などをおこない診断されます。
血液検査
がんの存在をチェックするために、腫瘍マーカーの測定をおこないます。
ただし腫瘍マーカーでがんの有無を診断できるわけではなくあくまで補助診断となります。
内視鏡
本来なら内視鏡検査で発見されやすいがんですが、スキルス性胃がんの場合、浸潤しているために表面が正常組織に覆われていることもあり、見つかりにくくもあります。
そのため、気付いた時にはステージ4まで浸潤していることも多く、生検と合わせておこない診断することも重要です。
症例 60歳代 男性
胃壁は固く凹凸不整です。
含気を行っても膨らまず、スキルス胃がんを疑う所見です。
画像検査
X線やCT検査をおこない、リンパ節・肝臓・腹膜・隣接臓器などへの転移を調べるのに有用です。
また、がんの位置や広がり、胃壁の深達度診断のためにも必須の検査となります。
症例 60歳代 男性 上記と同一症例。
胃壁は全域にわたり壁が厚く、周囲の脂肪織濃度上昇を認めています。
スキルス胃がん及び漿膜外への進展を疑う所見です。
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そもそも、スキルス性胃がんのステージとは?
ステージは、他の胃がんと同様に壁の深達度(T分類)、リンパ節への転移(N分類)、遠隔転移の有無(M分類)の程度などをもとに決まります。
壁の深達度(T分類)、リンパ節への転移(N分類)、遠隔転移の有無(M分類)の組み合わせで上のようにステージが決まります。
壁深達度
- T1a(M)・・・粘膜にとどまるもの
- T1b(SM)・・・粘膜下層にとどまるもの
- T2(MP)・・・固有筋層にとどまるもの
- T3(SS)・・・漿膜下層にとどまるもの
- T4a(SE)・・・漿膜表面が遊離腹腔に露出しているもの
- T4b(SI)・・・直接他臓器まで及ぶもの
リンパ節への転移の程度
- NO・・・領域リンパ節転移なし
- N1・・・領域リンパ節に1〜2個の転移
- N2・・・領域リンパ節に3〜6個の転移
- N3・・・領域リンパ節に7個以上の転移
- M1・・・領域リンパ節以外のリンパ節転移
このようにしてTNM分類が行われ、ステージ分類がなされます。
スキルス性胃がんの治療は?
2/3以上の胃切除とリンパ節郭清が標準治療となります。
早期に発見できれば、EMR・腹腔鏡下胃局所切除術・開腹による胃切除を検討します。
ですが、進行しているものに対しては開腹による胃切除をしますが、中には転移や浸潤により切除不能な場合もあり、その場合は放射線療法や化学療法を用いた後に、手術を検討する場合もあります。
その他、切除不能例で緩和医療として、出血や狭窄改善のためにバイパス術や部分切除をおこなうこともあります。
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完治は?
早期であれば完治も望め、最近では死亡率も減少傾向にあるものの、スキルス胃がんは早期発見が難しいため、まだまだ予後不良ながんといえます。
参考文献:
病気がみえる vol.1:消化器 P116〜127
内科診断学 第2版 P850〜854
消化器疾患ビジュアルブック P72〜77
新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P76〜79
最後に
スキルス性胃がんについてまとめました。
- がんの中でも悪性度の高いもので、びまん性に浸潤しているものをスキルス性胃がんという
- 4型胃がんのほとんどが、スキルス性胃がん
- 初期症状があらわれず気づかれにくい
- ピロリ菌の長期感染・喫煙・食塩の過剰摂取・βカロテンの摂取不足などが原因となる
- 血液検査や内視鏡、画像検査、生検などをおこない診断
- 2/3以上の胃切除とリンパ節郭清が標準治療
早期発見が予後にもつながりますが、なかなか見つかりにくいがんなため、人間ドック等の健康診断の重要性がお分かりいただけたかと思います。