
「スキルス胃がんは見つけにくい」という話を聞くと、胃カメラやバリウム検査を毎年受けていても、本当に安心してよいのか不安になる人は多い。
結論からいうと、スキルス胃がんは、胃の壁を硬く厚くさせながら広がるタイプの胃がんで、粘膜に目立った変化があらわれにくいため、検査を受けていても進行していない段階で見つけるのが難しいことが多い。早い時期は症状もほとんどなく、あっても胃炎や胃潰瘍と区別がつかない。だからこそ、検診を定期的に受けることと、気になる症状を放置しないことの両方が大切になる。
この記事では、スキルス胃がんとはどんな病気か、見つけにくい理由、症状、検査、検診の受け方、受診の目安を整理する。
- スキルス胃がんは、胃の壁を硬く厚くしながら広がる胃がんで、粘膜の変化が目立たず見つけにくい。
- 早期は症状がほとんどなく、胃の不快感や食欲不振など、胃炎や胃潰瘍と同じ症状から始まることが多い。
- 食事がつかえる、体重が減るといった症状は進行のサイン。検診を待たず内科・消化器内科へ。
- 検査は内視鏡(胃カメラ)と組織検査が中心。CTなどで広がりを調べる。
スキルス胃がんとは
胃がんは、胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞ががん細胞となり、増えていく病気である。その中で、胃の壁を硬く厚くさせながら広がっていくタイプをスキルス胃がんと呼ぶ(国立がん研究センター 2026)。
医学的には、胃の壁の外観から分けるボールマン分類の4型(Borrmann type 4)に当てはまるものとされることが多い。切除できる胃がんの約10%を占めるとされ、多くはないが、よく知られたタイプである(Nakayama 2025)。
顕微鏡で見たがんの性質では、胃がんのほとんどは腺がんで、「分化型」と「未分化型」に大きく分けられる。スキルス胃がんは未分化型が多い。未分化型は、がん細胞がまとまりをつくらず、胃の壁にバラバラとしみこむように広がるものが多い。ただし、未分化型のすべてがスキルス胃がんというわけではない(国立がん研究センター 2026)。
スキルス胃がんでは、発見したときにすでにおなかの内側をおおう腹膜に転移している場合もあり、治りにくいがんとされる。スキルス胃がんだけに特化した治療法はまだ確立されておらず、治療の研究が続けられている(Nakayama 2025)。

なぜ見つけにくいのか
見つけにくい理由は、がんの広がり方にある。
- 粘膜に目立った変化が出にくい:がんが胃の壁の中を広がるため、胃の内側から見ても、はっきりした盛り上がりやただれが見えにくい(国立がん研究センター 2026)。
- しこりをつくらないことが多い:ボールマン4型の多くは、はっきりした塊(腫瘤)がなく、胃カメラでの診断には、胃の壁が硬くなっていないか、粘膜のひだが太くなっていないかといった変化を見抜くことが必要とされる(Jung 2016)。
- 症状が出にくい:早期はほとんど症状がなく、かなり進行しても症状がない場合がある(国立がん研究センター 2026)。
胃カメラの検査の内容や、胃カメラでわかる所見については、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)とは?目的や所見の判定についてで解説している。
症状
胃がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどない。代表的な症状は次のとおりである(国立がん研究センター 2026)。
- 胃の痛み、不快感、違和感
- 胸やけ、吐き気
- 食欲不振
- がんからの出血による貧血や、黒い便
これらは胃炎や胃潰瘍でも起こる症状で、胃がんに特有のものではない。そのため、胃炎や胃潰瘍で内視鏡検査を受けたときに、偶然がんが見つかることもある。
食事がつかえる、体重が減るといった症状がある場合は、進行した胃がんの可能性がある。このような症状があるときは、検診を待たずに内科や消化器内科などを受診してほしい。
どんな検査で調べるのか
胃がんが疑われたときは、まず内視鏡検査で病変の有無や場所を調べ、疑わしい部分があれば組織をつまんで採り(生検)、顕微鏡で調べる。がんと確定した場合は、広がりを調べるために造影CTなどを行う(国立がん研究センター 2026)。

内視鏡検査では、胃の内部を直接見て、病変の場所・範囲・深さを調べる。バリウム検査(X線検査)は、バリウムを飲んで胃の形や粘膜の状態をX線写真で確認する検査である。胃バリウム検査でわかる病気や流れは、胃バリウム検査とは?わかる病気・検査の流れ・検査後の注意点をやさしく解説を参考にしてほしい。
スキルス胃がんでは、腹膜播種(おなかの中にがん細胞が散らばること)の有無が治療方針に大きく関わる。CTだけでは腹膜播種がわかりにくいため、腹膜播種が疑われる場合には、全身麻酔で腹腔鏡を入れて、おなかの中を直接観察する審査腹腔鏡が行われることがある。
腫瘍マーカー(CEAやCA19-9など)は、手術後の再発や薬物療法の効果判定の参考に使われることがあるが、これだけでがんかどうかは診断できない。
検診の受け方とピロリ菌
厚生労働省の指針では、胃がん検診の対象は50歳以上で、間隔は2年に1回とされている。検診の内容は、問診と、胃部X線検査(バリウム検査)または胃内視鏡検査(胃カメラ)である。当分の間は、胃部X線検査を40歳以上に年1回行ってもよいとされている。検査の結果が「要精密検査」となったときは、精密検査(胃内視鏡検査)を受けることが大切である(国立がん研究センター 2026)。
胃がんの発生要因には、ピロリ菌の感染と喫煙があり、食塩や高塩分食品のとりすぎもリスクを高めると報告されている。ピロリ菌の除菌で胃がんの発生リスクは下がるが、ゼロにはならないため、除菌後も胃内視鏡検査を受けることが勧められている。ピロリ菌の検査と除菌については、ピロリ菌とは?症状や検査、除菌方法についてを参照してほしい。
受診の目安
次のような場合は、内科や消化器内科を受診してほしい。
- 食事がつかえる、体重が減ってきた
- 胃の痛みや不快感、食欲不振が続く
- 黒い便が出た、貧血を指摘された
- 健診の胃の検査で「要精密検査」と言われた
症状がなくても、年齢が検診の対象になったら、2年に1回は胃の検診を受けることが望ましい。
自分でできること
スキルス胃がんだけを防ぐ方法は示されていないが、胃がん全般の予防として、次のことが勧められている(国立がん研究センター 2026)。
- 禁煙する
- 塩分や高塩分食品のとりすぎに注意する
- 野菜や果物をとる(胃がん予防に効果的な可能性があると報告されている)
- ピロリ菌の検査を受け、感染していれば除菌を相談する
- 定期的に検診を受け、症状を放置しない
よくある疑問
Q1. 症状がなければ、胃は大丈夫と考えてよいか。
早期の胃がんは自覚症状がほとんどなく、かなり進行しても症状が出ない場合がある。症状がないことは、がんがないことの保証にはならない。
Q2. ピロリ菌を除菌したら、胃がんにはならないか。
除菌によって胃がんの発生リスクは確実に下がるが、ゼロにはならない。除菌後も胃がんになる人は一定数いるため、除菌後も内視鏡検査を受けることが大切である。
Q3. 胃の腫瘍マーカーが正常なら安心か。
腫瘍マーカーだけでは、がんかどうかを診断できない。診断は内視鏡検査と組織検査で行い、広がりはCTなどで調べる。
気になる症状や健診の結果があれば、早めに医療機関に相談してほしい。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 胃がんについて」(2026年1月13日更新・確認) https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/about.html
- 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 検査」 https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/diagnosis.html
- 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 予防・検診」(2026年1月13日更新・確認) https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/prevention_screening.html
- Nakayama I. Therapeutic strategy for scirrhous type gastric cancer. Jpn J Clin Oncol. 2025;55(8):860-870. PubMed 40403741
- Jung K, et al. Borrmann Type 4 Advanced Gastric Cancer: Focus on the Development of Scirrhous Gastric Cancer. Clin Endosc. 2016;49(4):336-345. PubMed 27456608





