胃カメラ検査を受けるときに、「麻酔を使えば楽に受けられるのか」「眠っている間に終わるのか」「全身麻酔とは違うのか」と気になる人は少なくない。
結論からいうと、胃カメラで一般的に使われる麻酔は、のどの反射を抑える咽頭麻酔と、苦痛や不安を軽くする鎮静剤である。
通常の胃カメラで全身麻酔を行うことは一般的ではない。「眠って受ける胃カメラ」と説明される場合でも、多くは全身麻酔ではなく、鎮静剤を使ってウトウトした状態で受ける検査を指している。
ただし、鎮静剤を使えば必ず完全に眠れるわけではなく、薬の効き方には個人差がある。また、鎮静剤を使った場合は、当日の車・バイク・自転車の運転を避ける必要がある。
この記事では、胃カメラで使われる麻酔の種類、咽頭麻酔と鎮静剤の違い、全身麻酔との違い、鎮静剤のメリット・デメリット、検査後の注意点について整理する。
- 胃カメラで一般的に使われるのは、咽頭麻酔と鎮静剤である。
- 咽頭麻酔は、のどの「オエッ」とする反射を軽くするために使う。
- 鎮静剤は、検査中の不安や苦痛を軽くするために使う。
- 眠って受ける胃カメラは、多くの場合、全身麻酔ではなく鎮静剤である。
- 鎮静剤を使った日は、運転・飲酒・重要な判断を避ける必要がある。
胃カメラで使われる麻酔の種類
胃カメラで使われる麻酔は、大きく「咽頭麻酔」と「鎮静剤」に分けられる。
胃カメラ、すなわち上部消化管内視鏡検査では、口または鼻から内視鏡を挿入し、食道、胃、十二指腸を観察する。口から挿入する場合、のどに内視鏡が触れることで咽頭反射が起こり、吐き気やえずきが出ることがある。
この反射を軽くするために使われるのが咽頭麻酔である。さらに、検査への不安や苦痛を軽くする目的で鎮静剤を使うことがある。
| 種類 | 目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| 咽頭麻酔 | のどの反射を抑える | スプレーやゼリーでのどをしびれさせる。 |
| 鎮静剤 | 不安や苦痛を軽くする | 点滴から薬を入れ、ウトウトした状態にする。 |
| 全身麻酔 | 意識と痛みを完全に取る | 通常の胃カメラでは一般的ではない。 |
胃カメラの「麻酔」といっても、手術で使う全身麻酔とは異なることが多い。
咽頭麻酔とは何か
咽頭麻酔とは、胃カメラがのどを通るときの反射を軽くするために行う局所麻酔である。
口から胃カメラを入れる場合、内視鏡がのどに触れることで「オエッ」とする咽頭反射が出やすい。咽頭麻酔は、この反射を抑える目的で行われる。
一般的には、リドカインなどの局所麻酔薬を含むスプレー、ゼリー、液体などを使う。施設によって方法は異なるが、のどに麻酔薬をためたり、スプレーを噴霧したりして、のどの感覚を一時的に鈍くする。
- のどの反射を軽くする。
- 内視鏡が通るときの違和感を減らす。
- 検査中のえずきを軽くする。
- 検査を安全に進めやすくする。
咽頭麻酔をしても、違和感が完全になくなるわけではない。ただし、麻酔なしに比べると、のどを通るときの反射が軽くなることが多い。
咽頭麻酔後に注意すること
咽頭麻酔後は、のどの感覚が戻るまで飲食を控える必要がある。
のどがしびれている状態で水や食べ物を飲み込むと、むせたり、気管に入ったりする危険がある。そのため、検査後すぐに飲食せず、医療機関から指示された時間をあける必要がある。
食事を再開するときは、まず少量の水を飲み、むせないことを確認してからにする。
- のどのしびれが残る間は飲食しない。
- 水を少量飲んで、むせないことを確認する。
- 熱い飲み物や刺激物は避ける。
- 強い喉の痛みや息苦しさがあれば医療機関へ相談する。
胃カメラ後の食事開始は、「お腹が空いたか」ではなく、「安全に飲み込めるか」で判断することが重要である。
鎮静剤とは何か
鎮静剤とは、胃カメラ中の不安や苦痛を軽くするために使う薬である。
鎮静剤を使うと、眠気が出たり、ぼんやりした状態になったりする。人によっては「寝ている間に終わった」と感じることもある。
ただし、鎮静剤は全身麻酔とは異なる。完全に意識をなくし、人工呼吸器で呼吸管理をするような麻酔ではなく、検査に必要な反応を保ちながら苦痛を軽くする目的で使われることが多い。
代表的には、ミダゾラムなどのベンゾジアゼピン系薬剤や、施設によっては別の鎮静薬が使われることがある。薬剤や投与量は、年齢、体格、持病、検査内容、施設の方針によって異なる。
- 検査への不安を軽くする。
- 吐き気や苦痛を感じにくくする。
- 検査中の記憶が残りにくくなることがある。
- 検査を受ける心理的負担を減らす。
鎮静剤と全身麻酔の違い
胃カメラで使われる鎮静剤と、手術で使う全身麻酔は別のものである。
全身麻酔では、意識を完全に失わせ、痛みを取るだけでなく、呼吸や循環を麻酔科医が管理する。手術内容によっては気管挿管や人工呼吸管理が必要になる。
一方、胃カメラで使う鎮静剤は、検査中の不安や苦痛を軽くする目的であり、通常は全身麻酔ほど深い麻酔ではない。
| 項目 | 鎮静剤 | 全身麻酔 |
|---|---|---|
| 目的 | 不安や苦痛を軽くする | 手術中の意識・痛みを取る |
| 意識 | ウトウトする、記憶が残りにくいことがある | 意識がない状態にする |
| 呼吸管理 | 通常は自分で呼吸する | 人工呼吸管理が必要になることがある |
| 胃カメラでの使用 | 比較的よく使われる | 通常は一般的ではない |
「眠って受ける胃カメラ」は、多くの場合、全身麻酔ではなく鎮静剤を用いた胃カメラである。
鎮静剤を使うメリット
鎮静剤を使う最大のメリットは、胃カメラに伴う不安や苦痛を軽くできることである。
胃カメラが苦手な人、嘔吐反射が強い人、以前の検査でつらい経験をした人では、鎮静剤を使うことで検査を受けやすくなることがある。
また、検査中に緊張が強いと、体が動いたり、のどに力が入ったりして検査がつらくなることがある。鎮静剤により緊張が軽くなると、検査を進めやすくなる場合がある。
- 胃カメラへの不安が強い人
- 過去の胃カメラが非常につらかった人
- 咽頭反射が強い人
- 検査中の緊張が強い人
- 医師が鎮静下での検査が望ましいと判断した人
ただし、鎮静剤は希望すれば誰でも必ず使えるわけではない。持病、年齢、内服薬、当日の体調によっては、使用を控える方が安全な場合もある。
鎮静剤のデメリット・副作用
鎮静剤にはメリットがある一方で、眠気、ふらつき、呼吸抑制、血圧低下などのリスクがある。
鎮静剤を使うと、検査後もしばらく眠気やふらつきが残ることがある。また、判断力や反応時間が低下することがあるため、検査後すぐに運転したり重要な判断をしたりすることは避ける必要がある。
まれに、呼吸が浅くなる、血圧が下がる、酸素濃度が低下するなどの副作用が起こることもある。そのため、鎮静剤を使う場合は、検査中に血圧、脈拍、酸素飽和度などを確認しながら行うことが多い。
- 眠気
- ふらつき
- 判断力や反応時間の低下
- 血圧低下
- 呼吸が浅くなる
- 酸素濃度の低下
- 薬剤アレルギー
鎮静剤を使った日は、検査が終わっても薬の影響が残ることを前提に予定を組むべきである。
鎮静剤を使った胃カメラ後の注意点
鎮静剤を使った胃カメラ後は、当日の運転、飲酒、重要な判断を避ける必要がある。
Mayo Clinicは、鎮静剤を受けた場合、検査後に記憶、反応時間、判断力が影響を受ける可能性があり、帰宅のための付き添いを用意し、24時間は運転や重要な判断を避ける必要があると説明している。
施設によっては、鎮静剤を使う場合に、家族の付き添い、公共交通機関の利用、院内での休憩時間を求められることがある。
- 車・バイク・自転車の運転
- 飲酒
- 危険作業
- 重要な契約や判断
- 一人で遠方へ移動すること
鎮静剤を使った日は、検査後に仕事や運転の予定を入れず、休めるスケジュールにしておくことが安全である。
鎮静剤を使えない・注意が必要な人
鎮静剤は、年齢、持病、内服薬、体調によって使用に注意が必要なことがある。
高齢者、呼吸器疾患がある人、睡眠時無呼吸症候群がある人、重い心臓病がある人、肝機能や腎機能が低下している人では、鎮静剤の効き方や副作用に注意が必要である。
また、妊娠の可能性がある場合や、薬剤アレルギーがある場合も、事前に申告する必要がある。
- 睡眠時無呼吸症候群がある
- 喘息やCOPDなど呼吸器疾患がある
- 心臓病、不整脈がある
- 肝臓・腎臓の病気がある
- 薬剤アレルギーがある
- 妊娠中または妊娠の可能性がある
- 抗不安薬、睡眠薬、向精神薬を内服している
「眠って受けたい」という希望があっても、安全性を考えて鎮静剤なしをすすめられる場合がある。
経口胃カメラと経鼻胃カメラで麻酔は違うか
経口胃カメラと経鼻胃カメラでは、麻酔の方法が異なることがある。
経口胃カメラでは、口から内視鏡を入れるため、のどの麻酔が重要になる。咽頭反射が強い人では、鎮静剤を併用することもある。
経鼻胃カメラでは、鼻から細い内視鏡を挿入するため、鼻の通りをよくする薬や鼻の局所麻酔を使うことがある。口からの検査に比べて咽頭反射が少ない場合があるが、鼻の痛みや違和感、鼻出血が起こることがある。
| 方法 | 特徴 | 麻酔 |
|---|---|---|
| 経口胃カメラ | 口から挿入する。咽頭反射が出やすいことがある。 | 咽頭麻酔、必要に応じて鎮静剤。 |
| 経鼻胃カメラ | 鼻から挿入する。咽頭反射が少ないことがある。 | 鼻の局所麻酔、血管収縮薬など。 |
どちらが楽かは人によって異なるため、過去の検査経験や不安を医療機関へ伝えて相談するとよい。
胃カメラの麻酔でよくある誤解
胃カメラの麻酔では、「鎮静剤=全身麻酔」「鎮静剤を使えば絶対に何も覚えていない」といった誤解が多い。
鎮静剤を使っても、完全に意識がなくなるとは限らない。ウトウトした状態で検査を受け、あとから記憶があまり残っていない人もいれば、検査中のことをある程度覚えている人もいる。
また、鎮静剤を使うと楽になることが多い一方で、副作用や検査後の制限もある。
- 「眠る胃カメラ」は必ず全身麻酔である。
実際には、多くは鎮静剤である。 - 鎮静剤を使えば絶対に何も感じない。
薬の効き方には個人差がある。 - 鎮静剤を使っても検査後すぐ運転できる。
当日の運転は避ける必要がある。 - 咽頭麻酔だけでは意味がない。
咽頭反射を軽くする重要な処置である。
麻酔ありの胃カメラを希望するときに確認すべきこと
麻酔あり、特に鎮静剤ありの胃カメラを希望する場合は、予約時に確認しておくことが重要である。
すべての医療機関で鎮静剤を使った胃カメラを行っているわけではない。また、鎮静剤を使う場合は、検査後に院内で休む時間が必要になり、当日の運転ができなくなる。
- 鎮静剤を使えるか
- 経口・経鼻のどちらを選べるか
- 検査後にどのくらい休む必要があるか
- 付き添いが必要か
- 当日の運転制限があるか
- 費用はどのくらいか
- 普段の薬をどうするか
「眠って受けたい」という希望だけでなく、検査後の移動手段や予定も含めて考える必要がある。
胃カメラの麻酔後に受診すべき症状
胃カメラ後に強い症状がある場合は、麻酔や検査後の一時的な違和感と決めつけず、医療機関へ相談する。
軽い喉の違和感、腹部膨満感、眠気は一時的にみられることがある。しかし、症状が強い場合や悪化する場合は注意が必要である。
- 強い喉の痛みが続く
- 飲み込みにくさが強い
- 息苦しさがある
- 強い腹痛がある
- 吐血や黒い便がある
- 発熱がある
- ふらつき、冷や汗、意識がぼんやりする
生検や処置を受けた場合は、検査後の説明書に書かれた注意点を必ず確認する。
よくある質問
胃カメラは全身麻酔で受けられるのか?
通常の胃カメラで全身麻酔を行うことは一般的ではない。「眠って受ける胃カメラ」は、多くの場合、全身麻酔ではなく鎮静剤を使った検査である。
鎮静剤を使えば必ず眠れるのか?
必ず完全に眠れるわけではない。ウトウトする人、記憶があまり残らない人、ある程度覚えている人など、薬の効き方には個人差がある。
咽頭麻酔だけでも胃カメラはできるのか?
咽頭麻酔だけで胃カメラを受けることは可能である。鎮静剤を使わない場合、検査後の運転制限が少ないなどの利点があるが、咽頭反射が強い人ではつらく感じることがある。
鎮静剤を使った後に車を運転してよいか?
鎮静剤を使った当日は、車・バイク・自転車の運転を避ける必要がある。検査後に眠気や判断力低下が残る可能性があるためである。
高齢者でも鎮静剤は使えるか?
高齢者でも使える場合はあるが、眠気、ふらつき、呼吸抑制などに注意が必要である。持病や薬の内容によって判断が変わるため、医師に相談する必要がある。
まとめ
胃カメラで一般的に使われる麻酔は、咽頭麻酔と鎮静剤である。
咽頭麻酔は、のどの反射を軽くする局所麻酔であり、胃カメラを受ける際のえずきや違和感を軽減する目的で使われる。
鎮静剤は、不安や苦痛を軽くするために使われる薬であり、「眠って受ける胃カメラ」と説明されることがある。ただし、全身麻酔とは異なり、完全に意識をなくす麻酔ではない。
鎮静剤を使った場合は、当日の車・バイク・自転車の運転、飲酒、重要な判断を避ける必要がある。
胃カメラが不安な人は、予約時に、咽頭麻酔の方法、鎮静剤の有無、経口・経鼻の選択、検査後の運転制限、付き添いの必要性を確認しておくとよい。
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出典
- American Society for Gastrointestinal Endoscopy. Understanding Upper Endoscopy.
- Mayo Clinic. Upper endoscopy.
- 日本消化器内視鏡学会. 消化器内視鏡診療に関する情報.
- 日本消化器内視鏡学会. 内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン.





