神経膠腫(グリオーマ)は、悪性度によってグレードⅠ~Ⅳに分類されます。その中でも星細胞系・乏突起膠細胞系・上衣細胞系とに分けられます。
今回は、この神経膠腫について、グレードⅠ~Ⅳまでそれぞれご説明したいと思います。
神経膠腫の分類
星細胞系・乏突起膠細胞系・上衣細胞系と由来別に分けられ、以下のような4段階のグレード(悪性度)に分類されます。
【グレードⅠ】毛様細胞性星細胞腫
アストロサイトやその前駆細胞から発生します。神経膠腫の中で最も良性とされています。小児期~思春期の若い世代に多く発生し、特に小児の神経膠腫としては最多となっています。
小脳半球に発生することが多いのですが、それ以外の部位にも発生することがあります。
症状は、腫瘍が発生した部位により異なります。ほとんどの場合は、画像検査のみで確定診断が可能ですが、診断がはっきり出来ない場合、生検術が有用です。
詳しくはこちらをご覧下さい。→毛様細胞性星細胞腫とは?症状や診断、治療法のまとめ
【グレードⅡ】びまん性星細胞腫・乏突起膠腫・上衣腫
星状膠細胞(アストロサイト)や、その前駆細胞から発生します。
びまん性星細胞腫
神経膠腫の中で、びまん性星細胞腫は膠芽腫に次いで2番目に多いと言われ、神経膠腫の28%を占めます。30~40代に好発し、前頭葉・側頭葉・頭頂葉など、大脳半球を中心に脳の様々な部位にも発生します。
再発を繰り返しながら悪性化していくのが特徴です。脳局所症状による痙攣発作や片麻痺や失語、頭蓋内圧亢進による頭痛や嘔吐症状が現れます。
画像検査をしても、石灰化は15~20%と少なく、腫瘍内出血は稀です。
詳しくはこちらをご覧下さい。→びまん性星細胞腫の症状と原因、治療法のまとめ
乏突起膠腫
発育緩徐な浸潤性腫瘍です。原発性脳腫瘍の約1.7%、神経膠腫のうち約7.1%を占めます。
20~50歳代に好発し、大脳半球皮質下(特に前頭葉)によく出現します。しかし、小児でも時々見られ、初期症状としては、痙攣(てんかん発作)が多く現れます。約90%の割合で、石灰化が確認でき、画像診断が有用です。
詳しくはこちらをご覧下さい。→乏突起膠腫とは?症状、診断、治療法のまとめ!
上衣腫
脳室壁を構成する上衣細胞由来の脳腫瘍で、神経膠腫のうち約4.6%を占めます。10歳未満の小児に発生することが多く、特に3歳未満の小児の30%の脳腫瘍がこれに当たります。
脳室内、特に第4脳室壁に好発します。非交通性水頭症をきたし、それによって頭蓋内圧亢進症が現れ、また発生する部位による局所症状が見られます。画像診断を行うと約半数に嚢胞・石灰化が確認されます。
詳しくはこちらをご覧下さい。→上衣腫とは?症状、診断、治療法のまとめ!
【グレードⅢ】退形成性星細胞腫・退形成乏突起膠腫・退形成性上衣腫
いずれも腫瘍の前に「退形成性」と言う文字が付いており、高細胞密度、核の異型、核の濃縮といった退形成性変化を伴うもので、悪性のグレードが上がります。
画像診断では、壊死などを反映して不均一な吸収値や信号強度となります。
造影効果はまちまちですが、グレードⅡの腫瘍よりは造影効果が見られる割合が高いとされます。
【グレードⅣ】膠芽腫
アストロサイト(またはその前駆細胞)から発生し、急速に進行する特徴があり、最も悪性度が強い脳腫瘍です。
初発時から膠芽腫の所見を確認出来る一次性膠芽腫と、星細胞腫などから悪性に転化して生じた二次性膠芽腫の2種類に分けられます。新傾膠腫の中では37%を占めます。
45~70歳代に好発し、成人の場合は大脳半球に発生することが多く、小児にも見られますが、前頭葉と側頭葉の白質に発生します。急速に症状が進行し、1番多く感じることの多い症状が、頭痛です。
平均生存期間は12~14ヶ月程度と、腫瘍摘出手術が一般的な治療法ですが、腫瘍全摘出が厳しいのがこの膠芽腫で、予後不良です。
詳しくはこちらをご覧下さい。→膠芽腫とは?症状、画像診断、治療法のわかりやすいまとめ!
最後に
脳腫瘍は、臨床症状から脳腫瘍を疑い、CTやMRIといった画像診断を用いて詳しく検査し、血清学的診断や病理検査を行い確定診断を行います。
全ての神経膠腫において、基本的には腫瘍全摘出を目標に外科的治療が行われますが、中には保存療法で経過を見ることもあります。また、術後に放射線療法や化学療法が選択され、再発防止が重要になります。