頚動脈エコー検査(頸部血管超音波検査)は、文字通り頚(クビのこと)の動脈を調べる検査のことです。読み方は「けいどうみゃく」です。
頚動脈エコー検査は、脳ドックにおいて頭のMRIおよびMRAに加えて受けられるケースが多い検査です。
しかし、
「エコー検査でクビの血管を見て一体何がわかるの?」
そんな方も多いと思います。
そこで今回は、
- 頚動脈エコー検査を受ければ何がわかるのか?
- 正常値はどれくらいなのか?
- プラークって何なのか?
このような疑問にお答えしていきます。
頚動脈エコー(頸部血管超音波検査)とは?何がわかる?
近年、生活習慣の欧米化および高齢化に伴い、動脈硬化の原因となる高血圧、糖尿病、脂質代謝異常にかかる人が増えています。
動脈硬化は、脳、心臓や腎臓など様々な臓器に循環障害を起こす原因となります。
頚動脈エコー(頸部血管超音波検査)は脳梗塞や心筋梗塞の原因となる
- プラークの有無
- 頚動脈の狭窄の程度
をチェックするための検査で、非常に重要な検査です。
脳ドックを行う施設では、この検査をルーチンで行うことが推奨されています。
なぜ動脈は動脈でも頚動脈なのか?
- 頚動脈はプラークが生じやすい部位である
- 本当は脳の血管および心臓の冠動脈の動脈硬化の状態を見たいけれど、体の深部で見えにくいので、皮膚から浅い位置にある頸部の動脈で代替しているという意味があります。
- 頚動脈の動脈硬化性病変を評価することにより心血管イベントの発症を予測することができる
(N Engl J Med 340:1762-1763,1999)
さらにエコーの検査方法として、Bモードのほかに、
- パルスドプラ
- カラードプラ
といった血液の流れをリアルタイムでチェックできる点でエコーは優れているとされています。
ところでプラークってなに?
プラークとは頚動脈内に限局的に突出した病変のことで、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、加齢などが原因で生じます。
頚部エコーでは下のように見えます。
プラークがあれば何が問題になる?
プラークにより動脈が細くなると、脳への血流が行きにくくなるばかりか、このプラークは剥がれて飛んでしまうことがあります。
そうなると、より細い末梢の動脈が詰まり、脳梗塞を起こしてしまします。
動脈硬化によりプラークが形成されて、それが原因で起こる脳梗塞は主にアテローム血栓性脳梗塞と言います。
症例 70歳代女性 左半身麻痺の出現で受診
脳のMRI検査の拡散強調像(DWI)です。
右の前頭葉〜頭頂葉に脳梗塞(分水嶺梗塞)を認めています。
頚部エコー検査では、右の内頚動脈起始部に著明な狭窄を認めていました。
プラーク形成による頚動脈狭窄により、脳梗塞が生じたと診断されました。
プラークの種類は?
プラークには種類があり、
- 破綻して脳の血管を詰めて脳梗塞を起こしやすい不安定型のプラーク
- 起こしにくい安定型のプラーク
があります。当然問題となるのは不安定型のプラークです。
頚動脈エコーでプラークの厚さ、種類を評価できる!
検査というと、
「MRIといった大きな装置で撮影してもらう方が、体の隅々までわかるのでは?」
と思ってしまいがちですが、この頚動脈エコーも非常に優れた検査です。
まず、非常に簡便です。
エコーのプローブをクビに当てるだけで血管の中を見れますからね。
さらにCTのように被曝もなければ、MRIのように体の中に金属があろうが検査には関係ありません。
頚動脈エコーではプラークの大きさだけではなく、不安定型のプラークなのか安定型のプラークなのかまで見ることができます。
そんなすぐれた頚動脈エコーについてさらに詳しく知りたい方はこちら
頚動脈エコーでプラークはどう見える?IMTとは?
頚動脈をエコーで見ると、上のように内膜、中膜、外膜の3層をみることができます。
それぞれ内側より高エコー、低エコー、高エコーの白→黒→白の順に観察することができます。
しかし実際は、内膜と中膜は判別が難しいことが多く、内膜中膜複合体(intima-media complex:IMT)として描出されます。
一般的にプラークの大きさは、この内膜中膜複合体厚(IMT)の最大の大きさを測定することにより評価されます。
これは遠位側(far wall)の厚みを見るもので、今後起こるであろう脳梗塞といった血管イベントと強く相関すると言われています。
プラークの正常値は?狭窄率は?
この内膜中膜複合体厚(IMT)厚みの正常値は1.1mmまでです。
これを超えるとその部位をプラークと呼びます。
プラークの異常値、狭窄率は、
- IMT≧1.1mm (正常<1.1mm)
- 狭窄率≧70%
です。
これを超えると、脳梗塞・心血管イベント危険性が増大すると言われています。
ただし現在、プラークの評価対象として考えられているのは、IMT≧1.5mmのものです。
プラークの性状、不安定プラークの評価は?
さらに、同じプラークでも低エコーのプラークや潰瘍を形成しているプラークは脳梗塞や心血管イベントの危険性が高いと言われています。
- 低エコー(低輝度)プラーク=血栓、粥腫
- 等エコー(等輝度)プラーク=線維組織
- 高エコー(高輝度)プラーク=石灰化
を意味します。
この血栓、粥腫が破綻しやすい不安定プラークなんですね!
またプラークの表面性状には、平坦、不整、潰瘍の3つの分類があり、定義上2mm以上の深さがあるものを潰瘍と呼ばれます。この潰瘍も破綻しやすい不安定プラークなんです!
脳梗塞のリスクが高いと言われるプラークは?
上に述べた不安定プラークに加えて、以下のようなプラークは脳梗塞のリスクが高いと言われています。
- 可動性プラーク
- 短期間で急にサイズが大きくなったり、形が変わったプラーク
- 低輝度プラーク
- 線維被膜が薄いプラーク
- 潰瘍病変
可動性プラークとは、動脈の拍動とともに動くプラークです。
この可動性が起こる理由として、プラークの破綻やプラーク内出血を起こしていることが推定されます。
エコー検査では、画像だけでなく動画を撮影することもできますので、この動きを捉えることができます。
頚動脈エコーの注意点は?
ここまで読んでみて、
「IMTが1.1mm以上なら異常なのか〜。え?1.1mm??そんなに小さいの?」
と思われた方もおられるはず。
さらにこの内膜中膜複合体厚(IMT)は、加齢とともに年々わずかに厚くなっていきます。
また糖尿病患者では優位に厚いと言われています。
極め付けは、その日の体調(体内の血液量)により変動することがあるのです。
つまり、数字だけを見ていると体調の良し悪しで、病気になったり、病気じゃなくなったりする可能性もあるということです。
たったの、0.1mmの測定の誤差が治療法を変えることもありますので、
- 検査を受ける人が脱水など極端な状態ではない。
- 同じ施設、同じエコーの機械、同じ人
で検査をするのが望ましいとされます。
別の人が検査したり、別の機械を用いるだけで0.1mm程度の誤差はしばしばあるからです。
参考文献)臨床画像vol.32,No.4,2016 P388-396
最後に
今回は、
- 頚動脈エコー検査ではプラークの有無や頚動脈の狭窄の程度を知ることができる。
- 頚動脈エコーではプラークの性状やIMTを用いて厚みを評価することができる。
- 頚動脈エコーの検査結果は、受ける人の状態、検査をする人や機器によっても異なることがある。
ということを中心にまとめました。
脳ドックでMRIの次のオプション的な立場の頚動脈エコーですが、クビにプローブを当てるだけで、体の動脈硬化の程度や脳血管障害のリスクを推定できる非常に優れた検査です。
簡便で、安価で、侵襲性もない、本当に良い事づくめなのが、頚動脈エコーです。
参考になれば幸いです。