頸部(頚部:けいぶ)にはたくさんのリンパ節があります。

そのリンパ節は、

  • 感染などの良性病変
  • 癌など悪性病変

など様々な原因で腫れる(腫大する)ことがあります。

その場合、気になるのは

「その頸部のリンパ節の腫れ(腫大)が、悪性の場合はどのような時か?」

ということです。

そこで今回は、頸部リンパ節転移(悪性)を疑うのは

  • どのようなリンパ節なのか?
  • どのような時なのか?
  • そのためにはどのような検査をするのか?

ということについてまとめました。


頸部リンパ節転移を疑うのはどんな時?

頸部のリンパ節の腫れが悪性である癌のリンパ節転移によるものであると判断するには、

  • リンパ節の性状
  • リンパ節以外の要素

をチェックする必要があります。

リンパ節のサイズは?

まず頸部リンパ節の中でも、腫れやすい部位があります。

それが、

  • 顎下リンパ節
  • 上内深頸リンパ節

の2つです。

これらはMRIの画像検査で輪切りにした頸部(下顎骨レベル)で下のような位置関係になります。

顎下腺を挟んで前が顎下リンパ節で、後ろが上内深頸リンパ節が存在する領域となります。

cervical-lympho-swelling-anatomy

ここが腫れやすい理由はリンパの流れの影響で、頸部や口、喉などから最初に流れ着くリンパ節であるからです。

腫れる頻度が高いだけでなく、通常よりも腫れの程度が大きいことがありますので、

特に、上内深頸リンパ節だけは癌(がん)のリンパ節転移を疑う基準が

  • 短径11mm以上  (Radiology 177:379-384,1990)

とされています。

ちなみに、他の頸部リンパ節の基準は短径10mm以上です。

リンパ節の形は?

感染などに伴う反応性のリンパ節腫大は、皮質に存在する胚中心の数や大きさが増えますが、リンパ門は保たれる傾向があります。

また、リンパ節周囲の脂肪濃度の上昇があれば、反応性であるリンパ節炎の可能性がより高くなります。
(特に小児や若い人の場合、川崎病や菊池病の可能性があります。)

一方でリンパ門が消失し、大きな球形となったり、辺縁が不整で被膜の外に浸潤するような形がある場合、腫大したリンパ節は転移の可能性がより高くなります(AJR 200:W17-W25,2013)。

リンパ節内の壊死がある場合は?

リンパ節が腫大する場合に内部に壊死を伴うことがあります。

これは、画像検査では、液貯留を示唆する

  • CTでは低吸収域(黒くなる)
  • MRIではT2強調像で高信号域(白くなる)

となります。

このような壊死を疑う所見を見た場合、炎症の場合と、腫瘍の転移の両方の可能性があります。

  • 炎症→化膿性(細菌性)、結核性、組織球壊死性 などのリンパ節炎
  • 腫瘍→扁平上皮癌 などのリンパ節転移

ですので、この所見があるから良性、悪性と決めることはできません。

扁平上皮癌は頭頸部の癌の中では頻度が多い癌です。

 

リンパ節の性状以外で重要な事は?

リンパ節の腫れ(腫大)がある場合、上に挙げたようなリンパ節の性状を組み合わせることで良悪性の鑑別の精度が上がると報告されています(Eur Radiol 19:626:633,2009)。

一方で、リンパ節の性状以外で重要な事に、

  • 年齢
  • 感染源の有無
  • 既往歴
  • 採血データ

をチェックする事が重要です。

年齢

小児はリンパ節が腫れやすく、同じサイズでも高齢者に比べて反応性の腫大(良性の腫大)の事が多いです。

感染源の有無

感染に反応性して腫大する場合は、良性の腫大といえます。

ですので、リンパ節の腫れ(腫大)がある場合、頭頸部を中心にどこかに感染源がないかをチェックします。

具体的には、

  • 歯性感染症
  • 扁桃炎
  • 咽頭炎
  • 副鼻腔炎

などが挙げられます。

喉の風邪(感染症)といわれる咽頭炎に続いて、頸部のリンパ節が腫れることはよくあることです。

既往歴

癌になり治療を受けたことがあれば、その再発としてリンパ節転移が出てきた可能性があります。

採血データ

CRPプロカルシトニンなどの炎症反応や、白血球数などを参考に感染の可能性が高いかどうかや、腫瘍マーカーをチェックして上昇の有無をチェックすることで、良悪性の鑑別に役立てることができます。

 

頸部リンパ節はどうやって観察する?

頸部リンパ節が腫れている時に、その大きさや性状が重要であることは上に述べた通りです。

ただ、それをどうやって観察するのかといいますと・・・
  • 触診
  • 頸部エコー検査(超音波検査)
  • CT
  • MRI

といった方法があります。触診の場合は内部の性状はわかりませんし、大きさを測ることも困難です。

ですので、エコーやCT、MRIといった画像検査を行うことになります。

画像診断ガイドラインによると、頭頸頸部の癌(扁平上皮癌)のリンパ節転移の評価に、造影CTはMRIとほぼ同等の診断能を持つとされています。

cervical-lympho-swelling-anatomy1

上の画像は、MRIのT2強調像で撮影したものです。リンパ節の存在がわかります。

この例は正常例でリンパ節腫大は認めません。

最後に

頸部のリンパ節の腫れは様々な要素を総合的に考えて、良性なのか悪性なのかを診断します。

最終的には、そのリンパ節を生検してきて組織を見なければ良性悪性と断定することはできません。

小児の場合は、しばしば腫れやすいので年齢を考慮することは重要です。

また、左右対称に腫れた場合はウイルス性のリンパ節炎の可能性が高いとされます。

さらに、急にリンパ節が腫れたという場合も感染症など良性の腫大のことが多いです。

ただし様々な要素を考慮する必要がありますので注意が必要です。頸部のリンパ節の腫れが気になる場合はまずは内科を受診しましょう。




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