亜急性脊髄連合変性症とは?症状・原因・MRI所見とビタミンB12治療のポイント

ビタミン摂取することは大事と言いますが、そのビタミン不足で異変の出る病気があることをご存知ですか?

亜急性脊髄連合変性症(亜急性連合性脊髄変性症)は、ビタミンB12が欠乏することにより脊髄などに病変を及ぼすものです。

 

今回は、この亜急性脊髄連合変性症(あきゅうせいせきずいれんごうへんせいしょう)(英語表記で「Subacute combined degeneration of spinal cord」亜急性連合性脊髄変性症ともいう)について

  • 症状
  • 原因
  • 診断
  • 治療法

をまとめました。

先に結論

  • 亜急性脊髄連合変性症は、ビタミンB12が足りなくなり、脊髄(主に後索と側索)に障害が起こる病気です。
  • 手足(特に末梢)のしびれ、ふらつき、歩きにくさなどの神経症状が出ます。貧血(大球性貧血)や舌の痛みを伴うことがありますが、貧血が目立たないまま神経症状が先に出ることもあります。
  • 原因は、胃の切除、萎縮性胃炎、悪性貧血、胃酸を抑える薬の長期服用、極端な菜食などによる吸収不足・摂取不足です。
  • 診断は、血液中のビタミンB12、赤血球の大きさ(MCV)、症状、MRI(頸髄などのT2強調像で後索の高信号)を合わせて行います。
  • 治療はビタミンB12の補充です。手足のしびれや歩きにくさが続くときは、神経内科や内科を早めに受診してください。

亜急性脊髄連合変性症とは?

亜急性脊髄連合変性症は、ビタミンB12が欠乏することで、末梢・中枢神経に変性をきたす進行性の疾患です。

ビタミンB12は、ニューロンの働きを維持する髄鞘の形成や保持に必要不可欠な物質で、欠乏すると髄鞘の損傷を招くことになります。

それにより、脊髄の後索・側索に変性を生じるケースが、亜急性脊髄連合変性症で、上位運動ニューロン障害(側索の障害)が現れます。

doc2-subacute-spinal-cord-combined-degeneration

亜急性脊髄連合変性症だとどんな症状が出る?

造血障害と神経症状が現れますが、代表的な症状は大きく分けて貧血症状・Hunter舌炎・神経症状の3つです。

それぞれどんな症状が出るのか、説明します。

貧血症状

  • 頭痛
  • めまい
  • 眼瞼結膜蒼白
  • 動悸
  • 息切れ
  • 疲労感

この不快症状が一時的なものではなく、続くのも特徴です。

また、貧血の中でも大球性正色素性貧血が起こり、採血で赤血球指数の一つである平均赤血球容積(MCV)が基準値より大きくなることからこの疾患を疑います。ただし、貧血やMCVの上昇がなくても神経症状が出ることがあるため、MCVが正常でもビタミンB12欠乏は否定できません(Lindenbaum ら 1988)。

大球性正色素性貧血とは、赤血球のサイズが通常より大きい状態での貧血のことです。

Hunter舌炎

  • 食事中舌がしみる
  • 舌が痛む
  • 舌乳頭萎縮

接触時に感じる舌の症状があります。

神経症状

  • 認知症
  • 四肢末梢のしびれ
  • 筋力低下
  • 腱反射の異常(亢進や低下)
  • 歩行障害
  • 病的反射
  • 痙性麻痺

運動神経や感覚神経に異変が出て、徐々に症状が悪化します。

 

また、上記以外にも心理面にも異変が出て、イライラや眠気、無感動や錯乱症状なども症状にあります。

症状の始まりは脱力感など、軽い症状として「なんだかおかしいな?」というものが、徐々に様々な症状に広がり悪化していきます。

 

手先のしびれをさする高齢男性のイラスト

貧血があるときのヘモグロビンの見方は、血色素量(ヘモグロビン・Hb)の基準値は?低い・高いときの原因と再検査の目安で解説しています。

亜急性脊髄連合変性症の原因は何?

亜急性脊髄連合変性症は、ビタミンB12の欠乏により末梢・中枢神経に変性をきたす疾患と申しましたが、このビタミンB12欠乏に陥る原因としては、ビタミンB12の摂取不足や吸収障害が挙げられます。

subacute-combined-degeneration-of-spinal-cord1

摂取不足や吸収障害になるのは、以下のような原因があります。
  • 菜食主義
  • 慢性アルコール中毒
  • 胃全摘
  • 悪性貧血
  • blind loop症候群
  • 短腸症候群
  • 広節裂頭条虫症
  • 萎縮性胃炎
  • プロトンポンプ阻害薬など胃酸を抑える薬の長期服用
  • 亜酸化窒素(笑気ガス)の乱用
  • 過度なダイエット

 

このビタミンB12摂取不足によるものは実は稀で、胃全摘手術後、体にたくわえていたビタミンB12を使い切る数年後に起こる場合など、他の疾患や手術が原因となって吸収が低下し、ビタミンB12が欠乏して起こるものが多くを占めます。

胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬、H2ブロッカー)を2年以上使っていた人で、ビタミンB12欠乏の診断が増えたという大規模な調査があります(オッズ比 PPI 1.65、H2ブロッカー 1.25、Lam ら 2013)。ただし、薬は自己判断でやめず、気になるときは処方した医師に相談してください。亜酸化窒素(笑気ガス)を繰り返し吸入して発症した例も報告されています(Lin ら 2011)。

ビタミンB12欠乏の主な原因の表

萎縮性胃炎の背景にあるピロリ菌については、ピロリ菌とは?症状や検査、除菌方法についてで解説しています。

亜急性脊髄連合変性症の診断方法は?

血液中のビタミンB12の濃度を、まず調べることになります(基準範囲は施設や測定法で多少異なります)。

血中の値が境界域のときは、組織内で実際に足りていないかを確かめるため、メチルマロン酸やホモシステインなどを追加で測ることがあります(Stabler 2013)。胃カメラ(萎縮性胃炎の確認)や、悪性貧血を調べる抗体検査が行われることもあります。

またその他、症状・MRI画像所見から診断に至りますが、他の病気との鑑別をするためには、特徴的な症状を実際に確認します。

特徴的な症状としましては、上記でご説明した症状がありますが、中でも四肢末梢のしびれや貧血症状が他の病気との鑑別ポイントとなります。

MRIでは、頸髄や胸髄のT2強調像で、後索(あるいは後索と側索)に左右対称の高信号がみられるのが最も一貫した所見とされています(Briani ら 2013)。

症例:70代男性 頚椎MRI検査

doc1

(出典:2009年放射線科診断専門医試験問題11番)

胃癌手術後に両手の痺れが現れ来院。

T2WIにてC2-5レベルの脊髄に、縦方向に伸びる異常な高信号が認められます。

症例:70代男性 頚椎MRI検査

doc1

ビタミンB12低下を認め、末梢神経障害による感覚障害、萎縮性性胃炎がある。

C6-7レベルを中心に脊髄後索にT2WIにて淡い高信号を認め、症状から診断しても亜急性脊髄連合変性症と言える。

亜急性脊髄連合変性症の治療方法は?

早期に治療を始めるほど回復しやすくなりますが、治療開始が遅れれば回復しにくくなります。

ビタミンB12欠乏が確認できたら、早めに補充を始めることが大切です(Briani ら 2013)。

とにかく、治療は早めに!

ビタミンB12欠乏が原因なため、ビタミンB12の補充が効果的です。胃の切除などで吸収が低下している場合は、注射で補充することが多く、神経症状が強いときも注射が選ばれます。一方で、口から大量に飲む方法でも血中のビタミンB12が保てたとする研究もあり(Wang ら 2018)、方法は原因や症状に応じて医師が決めます。

なお、貧血があるからと葉酸だけを先に投与すると、貧血は良くなっても神経症状が悪化することがあるため避けるとされています。薬の量や回数は医師の指示に従ってください。

参考文献:
病気がみえる vol.7:脳・神経 P300・301
全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P208

最後に

亜急性脊髄連合変性症のポイントをまとめます。
  • 貧血症状・Hunter舌炎・神経症状が起こる
  • 原因はビタミンB12欠乏
  • ビタミンB12欠乏原因は、胃全摘や悪性貧血や疾患による吸収障害や摂取不足がある
  • 血中ビタミンB12濃度や症状、MRIなどから診断
  • ビタミンB12投与を早急に行えば、回復も早くなる

 

この亜急性脊髄連合変性症は大変珍しい病気ですが、辛い症状を伴います。

とにかく早期に原因を突き止め、ビタミンB12を補充すれば、回復が期待できます。

ですが、治療が遅れればそれだけ症状も進行し、回復しにくくなるので注意が必要です。手足のしびれや歩きにくさが続くときは、早めに医療機関を受診してください。

よくある疑問

Q. 健診でMCVが高い(大球性貧血)と言われました。すぐに神経の病気ですか?

MCVが高い原因はビタミンB12や葉酸の不足のほか、お酒、肝臓や甲状腺の病気、薬など様々です。手足のしびれなどがなければ、まず内科や血液内科で原因を調べます。結果に不安があるときは医療機関で相談してください。

Q. 菜食中心の食事ですが、ビタミンB12は足りていますか?

ビタミンB12は主に動物性の食品に含まれるため、厳格な菜食では不足しやすくなります。しびれやだるさが続くときは、自己判断でサプリを使う前に、血液検査で確認してください。

Q. 治療で元に戻りますか?

早期に治療した場合は改善が期待できますが、神経の障害が進んでからだと症状が残ることもあります。治療の経過は定期的に診てもらいましょう。

参考文献

  • Briani C, et al. Cobalamin deficiency: clinical picture and radiological findings. Nutrients 2013. PubMed
  • Stabler SP. Clinical practice. Vitamin B12 deficiency. N Engl J Med 2013. PubMed
  • Lindenbaum J, et al. Neuropsychiatric disorders caused by cobalamin deficiency in the absence of anemia or macrocytosis. N Engl J Med 1988. PubMed
  • Lam JR, et al. Proton pump inhibitor and histamine 2 receptor antagonist use and vitamin B12 deficiency. JAMA 2013. PubMed
  • Lin RJ, et al. Subacute combined degeneration caused by nitrous oxide intoxication: case reports. Acta Neurol Taiwan 2011. PubMed
  • Wang H, et al. Oral vitamin B12 versus intramuscular vitamin B12 for vitamin B12 deficiency. Cochrane Database Syst Rev 2018. PubMed