胆嚢癌は、極めて悪性度が高いがんとして知られています。
症状が出にくい癌なため、発見が遅れがちですが、根治のためには早期治療が重要になります。
そこで今回は、胆嚢癌(英語表記で「Gallbladder cancer」)について
- 症状
- 原因
- 検査
- 手術
などについて図(イラスト)や実際のエコー、CT、MRIの画像を交えながら、ご説明します。
胆嚢癌とは?
底部・頸部・胆嚢管がある、胆嚢に原発する癌を胆嚢癌といいます。
50歳以降に好発し、特に60〜70歳代が胆嚢癌の2/3を占めます。
男女比では、1対2〜3と、やや女性に多い傾向があります。
胆嚢癌にはどんな症状がある?
ほとんど初期症状がありません。
胆嚢癌のサイズが大きくなったり、周囲へ浸潤してくると以下の様な症状をきたすことがあります。
- 胃の右側上部の痛み(腹側、背中側)
- 食欲不振による体重減少
- 全身的な倦怠感や発熱症状
- 黄疸症状
これらの症状は必ずしも胆嚢癌に特徴的とは言えず、他の病気でも起こることがあるものですが、いずれにせよ、これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
[adsense]
胆嚢癌の原因は?リスクは?
- 10mm以上の胆嚢ポリープ
- 広基性の形態
- 50歳以上
- 胆石を合併している
- 孤立性である
- 症状がある
- 超音波検査でポリープが肝臓と等エコー輝度
- 急速にサイズが大きくなっている
(AM J Surg 188:186-190,2004)
下の図のように茎がある有茎性のポリープよりも、胆嚢の壁に広く接する広基性ポリープの方ががんのリスクが高いのです。
その他、膵管胆管合流異常も胆嚢がんのリスクといわれています。
胆嚢ポリープがあること自体は胆嚢癌のリスクではない?
胆嚢ポリープが悪性化して胆嚢癌になるのは稀(3-8%)であるということを覚えておく必要があります。
そして、そのほとんどは上に挙げたようなリスクに当てはまるものです。
ただし上記リスクに当てはまる胆嚢ポリープは極めて少なく、多くは良性のポリープであり、1-2年間フォローして変化がなければ以後のフォロー(経過観察)さえも必要のないものといえるのです。
ですので、胆嚢ポリープがあるからといって過度の心配をする必要はありません。
問題はそのサイズや形態であるということです。
関連記事)
胆嚢がんの検査は?腫瘍マーカーは?血液検査は?
胆嚢癌の検査には以下の検査があります。
エコー検査
人間ドックや健康診断による腹部超音波検査のことです。
この検査が普及してきたことにより、胆嚢ポリープや胆石を発見できる率が高まっています。
胆嚢ポリープは男性の6.3%、女性の3.5%に認められると報告されています(Am J Gastroenterol 87:630-633,1992)。
症例 40歳代女性
5mm大の有茎性の小結節を認めています。
典型的な胆嚢ポリープを疑う所見です。
胆嚢についてはCTやMRIよりもまずは被曝がなく、かつコストもかからないエコーが推奨されます。
胆嚢のCT検査は?
特にCTは胆嚢の病気の描出に弱く、ポリープや胆嚢結石もエコーではわかるのにCTでは描出できないことがしばしばあります。
ですので、CTで胆嚢に異常なしと言われても、実際はポリープや結石があることはしばしばあります。
どんな検査にも得意不得意があります。
胆嚢についてはCTは苦手だということです。
ただし、胆嚢がんが進行している場合やサイズが大きな場合、周りへの波及の状態をチェックしたい時には、CTは非常に有用な検査といえます。
胆嚢ポリープや結石、小さな癌の検出は苦手だということです。
症例 50歳代男性
胆嚢体部〜頸部に胆嚢壁に接する3cm大の造影効果を認める腫瘤性病変があります。
サイズがこれくらい大きくなると腫瘤としてCTでも同定は容易です。
手術の結果胆嚢癌と診断されました。
症例 70歳代 女性
胆嚢に1cm大の結節あり。
造影CTやMRIでは胆嚢壁に割と広く接しており、有茎性よりは広基性ポリープに分類されます。
サイズも1cm大と大きめで、手術がされました。
手術の結果、胆嚢癌でした。
胆嚢のMRI検査は?
MRIでは、MRCP検査で胆嚢や胆道系の検査に強いと言われています。
胆嚢ポリープの良悪性には、
造影剤を用いたダイナミックMRIで、
- 早期から染まり、染まりが抜ける(early enhancement with subsequent washout)→良性
- 早期から染まり、その後も染まりが続く(early enhancement with prolonged enhancement)→悪性
の可能性が示唆されています。
また拡散強調像で、悪性は高信号を示し、ADCで信号低下を示す傾向があることも報告されています。(Acta Radiol 52:236-240,2011)
もちろん、ここでいう良性とはポリープのことであり、悪性とは胆嚢癌のことです。
血液検査
胆嚢がんの初期であれば、残念ながら血液検査でがんだとわかる異常な結果は出ません。
しかし、がん細胞が胆道を圧迫するようになると、腫瘍マーカーの数値も高まってくるのです。
例えば、CA19-9については、基準値が37U/ml以下です。
これが、
- 37U/ml~100U/ml未満で注意を要する段階、
- 100U/ml以上でがんの可能性
があります。
また、がん胎児性抗原についてわかるCEAについては、基準値が5ng/ml以下です。この数値より高い値が示されると要注意で、基準値の2倍を超えるとがんの可能性が高くなります。
尚、肝胆道系酵素上昇を示す、ALPやγ-GTPの数値変化も無視できません。
ALPの値は、がんによる影響等で胆道に異変が起こっている場合に数値が上昇するからです。
また、γ-GTPの値も、がん等による影響で胆管に異変が生じている場合に数値が上昇するのです。
[adsense]
胆嚢癌の治療は手術が必須?
根治のためには、手術が唯一の方法です。
ですが、中には手術ができない場合もあります。
胆嚢癌のステージ分類
- Ⅰ期・・・胆嚢壁の粘膜や筋層にとどまった状態・リンパ節転移もない
- Ⅱ期・・・胆嚢の周囲に一部広がりがある・近くのリンパ節の転移や肝臓、胆管への広がりも疑われる
- Ⅲ期・・・胆嚢壁の外に露出した状態・リンパ節への転移や肝臓、胆管側への広がりも認める
- Ⅳ期・・・胆嚢以外の周囲の臓器に広がった状態・リンパ節への転移や肝臓、胆管側への広がりも高度・腹膜への転移も疑う
早期の場合(Ⅰ期)は、手術で胆嚢摘出すれば、根治が望めます。
Ⅱ期以上の場合は、胆嚢以外の影響のある臓器も切除する必要があります。
ですが、中には切除不能例(Ⅳ期)もあり、その場合は化学療法をおこないます。
切除不能な胆道癌
- 肝臓、肺への血行性転移がある。
- 腹膜播種がある。
- 遠隔リンパ節転移(傍大動脈リンパ節転移)がある。
※局所進展の範囲については切除が不能かどうかについてはコンセンサスがありません。
参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P393〜398
参考文献:内科診断学 第2版 P897・898
参考文献:消化器疾患ビジュアルブック P226〜232
参考文献:新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P264・265
参考文献:パッと引けてしっかり使える 消化器看護ポケット事典[第2版] P150・151
最後に
- 胆嚢にできる癌を胆嚢癌という
- 初期には症状がない
- 胆石症を合併することが多い
- エコー・血液検査・画像検査をおこなう
- 手術が原則
- 手術不能例では、化学療法
胆嚢癌の症状や原因、検査などについてまとめました。
胆嚢癌は極めて悪性度が高い癌ですので、初期の段階で見つけることが重要となります。
ところが初期の段階では症状はないことが多いのが厄介なところです。
定期的な健康診断や人間ドックにより、腹部エコー検査にて胆嚢をチェックしてもらうのが良いと考えられます。
しかし、胆嚢ポリープが胆嚢癌に進行することは稀であり、胆嚢ポリープがあるからといって過度の心配をする必要はないということも重要です。