
胆石症になると激痛を伴い、プロレスラーでもその痛みには耐えられないと訴えるほど。
うちの母も数年前に、胆石症になり、急性胆嚢炎と診断され、胆嚢摘出手術を行いました。
最初の予定では、内視鏡手術の為、日帰り手術も可能だけど、念の為3泊4日の入院をすることに・・・。
ですが、母の場合、「4日で退院なんてとんでもない!」というほど術後の経過が順調ではなく1週間たっても起き上がれないほどだったのです。
今回は胆嚢摘出後に注意が必要な、胆嚢摘出後症候群(英語表記で「Cholecystectomy after syndrome」)について
- 症状
- 原因
- 治療
を分かりやすくご説明したいと思います。
先に結論
- 胆嚢摘出後症候群は、胆嚢を取った後に腹痛・吐き気・下痢・黄疸・発熱などが続く、または新しく出てくる状態の総称です。診断や治療の統一された基準はまだ整っていません(Nam ら 2025)。
- 手術前にあった上腹部の痛みが術後も続く人は最大で約3割、術後に新しく出る人も最大で約1割強と報告されています(Lamberts ら 2013)。報告によって幅があります。
- 原因は、胆管の結石の取り残し・胆管の狭窄・Oddi括約筋の異常・胆汁酸による下痢など。胆管以外の病気が隠れていることもあります。
- 発熱・黄疸・強い上腹部痛があるときは、早めに手術を受けた病院を受診しましょう。下痢は治療で軽くなることがあります。
胆嚢摘出後症候群とは?
胆嚢摘出したら、もう治った!問題はない!と思われると思いますが・・・
中には胆嚢摘出後に起こる胆嚢摘出後症候群というものがあります。

胆石や胆嚢炎などになり、胆嚢を摘出手術した後に起こる、まるで胆嚢が残っていて胆石症のような症状が出現するものです。
胆嚢摘出後症候群の症状は?
- 上腹部の痛み
- 発熱
- 黄疸
- 吐き気
- 下痢
- おなかの張り・ガスが多い
まるで胆石の発作のような痛みやモヤモヤとした不快感や吐き気、黄疸や発熱、下痢などの症状が出る場合があり、これを胆嚢摘出後症候群と呼びます。
胆石が見つかったときの対応は、健康診断で胆石と言われたら?症状がない胆石は様子見でいい?手術の目安と受診のサインで解説しています。
胆嚢摘出後症候群の原因は?
どうしてそんなことになるんですか?
原因についてご説明します。
- 胆管狭窄
- 遺残結石
- 胆嚢管遺残症
- Oddi括約筋の狭窄または異常運動
- 胆汁酸による下痢

胆管狭窄
上腹部痛や黄疸の原因として考えられ、胆管が狭くなってしまうことで起こります。
遺残結石
手術で全ての胆石を取りきれず、胆石が残ってしまったことが原因です。
それにより、胆石症の症状が続いたり、また月日が経って出てくるものがあります。
胆嚢管遺残症
胆嚢管全部を切除できずに遺残することがあります。
中には胆石が残っていたり、腫瘍があったりすると胆汁の流動運動が悪くなり、胆道内圧が上昇し症状が出現します。
Oddi括約筋の狭窄または異常運動
十二指腸乳頭の周りにある括約筋が狭くなったり、異常な運動を起こすことで起こるものです。
胆汁酸による下痢
胆汁酸は体の中のコレステロール代謝から産みだされるものであり、肝臓は胆汁として胆汁酸やコレステロールを体の外に排出します。
胆嚢がなくなると、胆汁をためて食事に合わせて出す働きがなくなり、胆汁が絶えず腸に流れ込むようになります。その結果、胆汁酸が大腸に届きやすくなって水分の吸収が妨げられ、下痢(胆汁酸性下痢)になる人がいます。手術後の下痢のすべてが胆汁酸によるわけではありませんが、診断されれば治療できる可能性があります(Farrugia ら 2021)。

胆嚢摘出後症候群の治療法とは?
まず、胆嚢摘出後症候群にならないための確立した予防法はありません。
術後すぐ出る場合や、術後時間が経過して、数年後に出る場合もあります。
中には、他の臓器に疾患がある可能性もあるため、手術をした病院を受診する必要があります。
- 細菌感染に対し抗生剤を服用
- 狭くなったものを広げる処置(手術)
- 残った胆石を取り除く
- 胆汁の流れを良くする薬の服用
- 胆管の機能を改善する薬の服用
- 胆汁酸による下痢には、胆汁酸を吸着する薬が主に使われます(Walters ら 2024)
また、薬によって残った胆石を溶かす胆石溶解療法として、ウルソ錠などが処方されることもあります。
適切な治療を受けることで症状を軽減することが出来ますので、胆嚢を取ったんだから色々不具合は出るもんなんだろうと甘く考えず、きちんと受診しましょう。

参考文献)ハリソン内科学 第2版 (原著第16版) P623
参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P360〜365
参考文献:内科診断学 第2版 P552
胆嚢摘出したら終わりと思ってたんですが、このような症状が出る場合もあると分かり、大変参考になりました。
最後に
- 胆嚢を摘出した後に起こる胆嚢摘出後症候群には、確立した予防法がない
- 上腹部の痛み、発熱、黄疸、吐き気、下痢などの症状がある
- 遺残結石、胆嚢管遺残症、Oddi括約筋の狭窄または異常運動、胆汁酸による下痢などが原因
- 手術をした病院を早目に受診
- 症状に応じた治療で症状を軽減できる(下痢は胆汁酸が原因のこともあり、治療できる場合がある)
実は、うちの母がまさにこの症状が現れました。
同じ胆嚢摘出した他の患者さんは4日で退院していく中、母だけ1週間経っても起き上がることも出来ず・・・
発熱・黄疸・上腹部痛などの症状が現れ、肝機能障害を起こし、入院は長引き、1年後に急性胃炎となり再び入院しました。
また、術後に過敏性腸症候群のような症状が出ることもあり、術後は普段から食生活にも気を付けるとよいでしょう。
糖分・脂質・刺激物の摂り過ぎには注意しましょう。食事の内容と症状の関係をメモして、受診のときに医師に伝えると役立ちます。
術後に過敏性腸症候群のような症状が出たときの薬については、過敏性腸症候群の薬とは?処方薬・漢方薬・市販薬の選び方と警告症状で紹介しています。
症状別の受診の目安
| 症状 | 考えられる主な原因 | 受診の目安 |
|---|---|---|
| 発熱・黄疸・右上腹部の強い痛み | 遺残結石、胆管狭窄、胆管の炎症など | 早めに受診(手術した病院が望ましい) |
| 食後などに繰り返す上腹部痛 | Oddi括約筋の異常、胆嚢管遺残など | 症状が続くなら受診して検査 |
| 下痢が続く | 胆汁酸による下痢など | 受診して原因を調べる(治療できることがある) |
※目安です。症状が強いときや不安なときは、医療機関へ相談してください。
胆嚢摘出後症候群のよくある疑問
Q. 何科を受診すればよいですか?
A. まずは手術を受けた病院の外科や消化器内科への相談が望ましいです。手術の内容や術後の経過を把握しているためです。
Q. 術後の下痢は時間がたてば治りますか?
A. 自然に落ち着く人もいますが、長く続く場合は胆汁酸による下痢などが隠れていることがあります。我慢せず医師に相談してください。
Q. 胆嚢を取ると、食事で気をつけることはありますか?
A. 糖分・脂質・刺激物の摂りすぎに気をつけ、症状が出る食べ物を記録しておきましょう。個別の食事指導は主治医や管理栄養士に確認してください。
参考文献
- Nam C, et al. Clinical perspectives on post-cholecystectomy syndrome: a narrative review. Ann Med 2025. PubMed
- Lamberts MP, et al. Persistent and de novo symptoms after cholecystectomy: a systematic review of cholecystectomy effectiveness. Surg Endosc 2013. PubMed
- Farrugia A, et al. Rates of Bile Acid Diarrhoea After Cholecystectomy: A Multicentre Audit. World J Surg 2021. PubMed
- Schofer JM. Biliary causes of postcholecystectomy syndrome. J Emerg Med 2010. PubMed
- Walters JRF, et al. Managing bile acid diarrhea: aspects of contention. Expert Rev Gastroenterol Hepatol 2024. PubMed





