
脳内出血の1つである皮質下出血を引き起こす原因には複数ありますが、高齢者に多い原因の1つにアミロイドアンギオパチーがあります。
アミロイドアンギオパチーは、年齢とともに増加する傾向があり、特にアルツハイマー型認知症に合併する確率が高いとされています。
今回は、このアミロイドアンギオパチー(英語表記で「cerebral amyloid angiopathy」)について・・・
- 症状
- 診断
- 画像所見
- 治療法は
などを説明したいと思います。
先に結論:アミロイドアンギオパチーとは
- 脳の血管の壁にアミロイドというたんぱく質がたまり、血管がもろくなる病気(脳アミロイド血管症、CAA)です
- 高齢者に多く、大脳の皮質下出血や、くも膜下出血(脳の表面の一部)の原因になります
- 初期は無症状のことが多く、進むと一過性の神経症状・認知機能低下・脳出血が起こります
- 診断はMRI(T2*強調像・SWI)で微小出血を見ることが重要で、確定診断は病理診断です
- この病気そのものを治す治療は確立されておらず、出血や症状に応じた対応が中心です。症状があれば脳神経内科・脳神経外科へ
アミロイドアンギオパチーとは?
アミロイドとは、不溶性の特異な蛋白質で、アンギオパチーとは「血管障害」のことですので、アミロイドアンギオパチーとは
- 脳表の小動脈や中動脈にアミロイド蛋白が沈着する
- その結果、血管の壁が厚くなり、血液の通り道は狭くなる
- そして、血管の壁が脆くなる
つまり・・・
- アミロイドが溜まることによる血管障害
ということになります。
この病気は年齢とともに増え、高齢者ほど頻度が多くなります。
また、このアミロイドアンギオパチーは認知症として有名なアルツハイマー型認知症を合併することが多いとされています。

アミロイドアンギオパチーで起こりうることは?脳出血?

血管障害が起こり、血管壁が脆くなれば、血管の破綻により
- 脳の皮質下出血
- 髄膜血管の破綻によってくも膜下出血
- 白質脳症
- 硬膜下血腫
を引き起こすことがあります。
特に高齢者での皮質下出血(脳出血)や高位円蓋部などの局所的なくも膜下出血が起こった場合には、背景にこのアミロイドアンギオパチーがあるのではないかと疑う必要があります。
アミロイドアンギオパチーの症状は?
初期の場合、無症状なことが多いです。
しかし、進行するにつれ
- 一過性の神経障害
- 認知機能低下
が出現します。
脳出血を起こす前から認知機能の低下がみられることもあります。
先ほど述べたように、アルツハイマー型認知症を合併していることもあります。
脳出血が起こると出血が起こった部位の脳の機能が障害され、その部位に相当する症状が出ます。
また、この脳出血は再発を繰り返すのも特徴の1つです。

認知症の原因となる別の病気については、脳血管性認知症とは?症状・原因・診断・治療法と受診の目安をわかりやすく解説でまとめています。
認知症のときにMRIや脳血流SPECTでわかることは、認知症の画像診断は?MRIと脳血流SPECTでわかることは?で紹介しています。
アミロイドアンギオパチーの診断は?

生きている間は、症状・年齢・MRI所見から診断を進め、確定診断には病理診断が必要です。臨床の診断には、世界で使われている「ボストン基準」があり、2022年に改訂版(version 2.0)が発表されました(Charidimou 2022)。この基準は、50歳以上で、脳出血・認知機能の低下・一過性の神経症状のいずれかがある人を対象に、MRIの所見を組み合わせて診断の確からしさを評価します。
臨床的チェック項目(目安)
- 年齢が50歳以上
- 脳出血、認知機能の低下、一過性の神経症状のいずれかがある
- MRIで大脳の皮質・皮質下に、多発する出血や微小出血などの所見がある
- 高血圧による出血など、ほかの原因が考えにくい
実際の診断は、脳神経内科・脳神経外科などの専門医が総合的に行います。
アミロイドアンギオパチーの画像所見は?
画像所見では、脳内出血(皮質下出血)が起これば頭部CT検査で出血の場所や大きさを確認できます。ただしCTでわかるのは出血であり、アミロイドアンギオパチーそのものをCTで診断するわけではありません。
しかし、急性期の皮質下出血が起こっていない状態では頭部CTでは特に所見は見られないのが通常です。
古い微小出血はCTではわからないことが多いためです。
この場合、頭部MRIでの精密検査が必要となります。
しかし、そのMRI検査であっても通常のMRIでは特徴的な所見が認められないことが多くあります。
MRIの中でも、T2*強調像や磁化率強調像(SWI)といった撮像法で微小出血の分布を評価することで診断の一助とすることが可能となります。
症例:60代男性 MRIのT2*強調像で撮影

黒い点が微小出血を意味します。
この場合、高血圧性の微小出血に特徴的な被殻や視床などに微小出血がなく、皮質からの皮質下白質に多数の微小出血を認めており、アミロイドアンギオパチーの特徴とされます。
高血圧性に特徴的な出血の部位についてはこちら。
こういった高血圧性出血に特徴的な部位には出血を認めていないのに、皮質下に微小出血を認めるのがこの病気の特徴で、高血圧性を除外する画像所見と言えます。
症状がない小さな古い出血の見つけ方は、症状が出ない小さな脳出血はどうやって診断するの?でくわしく解説しています。
アミロイドアンギオパチーの治療法は?
現在、アミロイドアンギオパチーそのものを治す治療は確立されておらず、根本的な治療はない現状です。出血が起きたときはその治療を行い、認知症の症状に対してはアリセプトなどの薬や漢方薬の抑肝散などが使われることがありますが、進行を遅らせる程度の効果とされています。
再出血を避けるための血圧の管理や、血をサラサラにする薬(抗血栓薬)を使うかどうかは、脳神経内科・脳神経外科で個別に検討します。自己判断で薬を中止せず、主治医に相談してください。
- 参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P103
- 参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P319
アミロイドアンギオパチーのよくある疑問
Q. 何科を受診すればよい?
脳神経内科や脳神経外科、脳卒中を診ている医療機関が目安です。突然の麻痺・しびれ・言葉の出にくさ・強い頭痛などが出た場合は、すぐに救急を受診してください。
Q. 認知症との関係は?
アミロイドアンギオパチーはアルツハイマー型認知症に合併することが多いとされますが、アミロイドアンギオパチーがあると認知症になる、あるいはその逆、と決まっているわけではありません。気になる症状や結果があれば、医療機関へご相談ください。
最後に
- 小・中動脈にアミロイド蛋白が沈着し、血管壁の脆弱化が起こる疾患
- 高齢者に多い
- 皮質下出血の原因となる
- アルツハイマー認知症に合併する
- MRI(T2*強調像・SWI)で微小出血を調べる。確定診断には病理診断
- 根本的な治療は確立されていない
アミロイドアンギオパチーは高齢者の脳内出血やくも膜下出血の原因として重要な疾患の1つです。
高齢者で、高血圧性の出血が多い場所ではなく皮質下に出血を起こしたり、動脈瘤がないのに脳表のくも膜下出血を起こしたりした場合には、この疾患を疑うことが重要です。
参考文献:Charidimou A, et al. The Boston criteria version 2.0 for cerebral amyloid angiopathy. Lancet Neurol 2022. PubMed





