脳内出血の1つである皮質下出血を引き起こす原因には複数ありますが、高齢者に多い原因の1つにアミロイドアンギオパチーがあります。
アミロイドアンギオパチーは、年齢とともに増加する傾向があり、特にアルツハイマー型認知症に合併する確率が高いとされています。
今回は、このアミロイドアンギオパチー(英語表記で「cerebral amyloid angiopathy」)について・・・
- 症状
- 診断
- 画像所見
- 治療法は
などを説明したいと思います。
アミロイドアンギオパチーとは?
アミロイドとは、不溶性の特異な蛋白質で、アンギオパチーとは「血管障害」のことですので、アミロイドアンギオパチーとは
- 脳表の小動脈や中動脈にアミロイド蛋白が沈着する
- その結果、血管の壁が厚くなり、血液の通り道は狭くなる
- そして、血管の壁が脆くなる
つまり・・・
- アミロイドが溜まることによる血管障害
ということになります。
この病気は60歳以上から徐々に増え高齢者ほど頻度が多くなります。
また、このアミロイドアンギオパチーは認知症として有名なアルツハイマー型認知症を効率に合併します。
アミロイドアンギオパチーで起こりうることは?脳出血?
血管障害が起こり、血管壁が脆くなれば、血管の破綻により
- 脳の皮質下出血
- 髄膜血管の破綻によってくも膜下出血
- 白質脳症
- 硬膜下血腫
を引き起こすことがあります。
特に高齢者での皮質下出血(脳出血)や高位円蓋部などの局所的なくも膜下出血が起こった場合には、背景にこのアミロイドアンギオパチーがあるのではないかと疑う必要があります。
アミロイドアンギオパチーの症状は?
初期の場合、無症状なことが多いです。
しかし、進行するにつれ
- 一過性の神経障害
- 認知機能低下
が出現します。
そして脳出血を起こしてしまう前には認知症症状が出てることが多いとされています。
特に先ほど述べたように高率にアルツハイマー型認知症を合併しています。
脳出血が起こると出血が起こった部位の脳の機能が障害され、その部位に相当する症状が出ます。
また、この脳出血は再発を繰り返すのも特徴の1つです。
アミロイドアンギオパチーの診断は?
臨床的に以下の項目をチェックし、確定診断には病理診断を行います。
臨床的チェック項目
- アルツハイマー認知症がある
- 年齢が55歳以上
- 他に出血の原因がない
- 皮質や皮質下に見られる多発性脳出血が小脳に見られる
アミロイドアンギオパチーの画像所見は?
画像所見では、脳内出血(皮質下出血)が起これば頭部CT検査で診断することができます。
しかし、急性期の皮質下出血が起こっていない状態では頭部CTでは特に所見は見られないのが通常です。
古い微小出血はCTではわからないことが多いためです。
この場合、頭部MRIでの精密検査が必要となります。
しかし、そのMRI検査であっても通常のMRIでは特徴的な所見が認められないことが多くあります。
MRIの中でも、T2*強調像や磁化率強調像(SWI)といった撮像法で微小出血の分布を評価することで診断の一助とすることが可能となります。
症例:60代男性 MRIのT2*強調像で撮影
黒い点が微小出血を意味します。
この場合、高血圧性の微小出血に特徴的な被殻や視床などに微小出血がなく、皮質からの皮質下白質に多数の微小出血を認めており、アミロイドアンギオパチーの特徴とされます。
高血圧性に特徴的な出血の部位についてはこちら。
こういった高血圧性出血に特徴的な部位には出血を認めていないのに、皮質下に微小出血を認めるのがこの病気の特徴で、高血圧性を除外する画像所見と言えます。
アミロイドアンギオパチーの治療法は?
現在様々な治療が行われてはいます。
認知症に対してはアリセプトや漢方薬の肝抑散 など・・・ですが、進行を遅らせる程度の効果しかなく、根本的な治療の確立はされていない現状です。
- 参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P103
- 参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P319
最後に
- 小・中動脈にアミロイド蛋白が沈着し、血管壁の脆弱化が起こる疾患
- 高齢者に多い
- 皮質化出血の原因となる
- アルツハイマー認知症に合併する
- 確定診断には病理診断
- 根本的な治療は確立されていない
アミロイドアンギオパチーとは高齢者の脳内出血やくも膜下出血の原因として非常に重要な疾患です。
高齢者で高血圧がないのに脳内出血(特に皮質下出血)を起こしたり、動脈瘤がないのにくも膜下出血を起こしたり、という場合には特にこの疾患を疑うことが重要です。