特発性食道破裂(Boerhaave症候群)とは?嘔吐後の胸痛の症状と治療法

 

特発性食道破裂(とくはつせいしょくどうはれつ)・・・その漢字からもわかるように、食道が破裂するもので、別名「Boerhaave症候群」といわれる疾患です。

でも、食道が破裂するなんて・・・「どんな時になるの?」

など、気になりますよね。

どうしてこんなことが起こるのか知っていると、症状が出た時に「これは危険」といち早く気付くことができます。

そこで今回は特発性食道破裂について・・・

  • 症状
  • 原因
  • 診断
  • 治療法

などを解説したいと思います。

はげしく吐いたあと、胸が急に痛くなった…

まれですが、食道が破れる特発性食道破裂かもしれません。命にかかわるので、すぐに救急を受診してくださいね。
先に結論(特発性食道破裂とは・症状・受診)

  • 特発性食道破裂(Boerhaave症候群)は、激しい嘔吐などで食道の内圧が急に上がり、食道の壁が全層にわたって裂ける病気です。まれですが命にかかわります。
  • 典型的には「嘔吐のあとに突然の胸の痛み」が起こります。胸痛、背中の痛み、息苦しさ、皮膚の下の空気(皮下気腫)が目安です(Turner 2023)。
  • 食道が裂けた部分から食べ物や細菌が縦隔(胸の中央)に広がり、縦隔炎などを起こすため、時間との勝負です。
  • 嘔吐後の激しい胸痛や背部痛、息苦しさがあれば、様子を見ずに救急受診(119番)してください。
  • 診断はCTが中心で、治療は手術が最も多く行われますが、内視鏡を使った治療も選ばれます(Mela 2026)。

特発性食道破裂とは?

その名の通り、食道が破裂してしまう疾患です。

特発性食道破裂は、Boerhaave syndrome、 Boerhaave症候群(読み方は、ブールハーフェ)とも呼ばれます。

Boerhaave

食道下部の左側壁は、周囲組織の支持を欠いているため、下部食道の左側に好発しますが、中部食道の右側に起こることもあります。症例報告のまとめでは、下部(遠位)食道の病変が83.5%でした(Mela 2026)。

食道破裂が起こると、食道壁全層が裂けるため、その部分から食べ物や細菌が縦隔膜に広がることで、あっという間に縦隔炎や胸膜炎を引き起こしまうため時間との勝負です。

特発性食道破裂の症状とは?

特発性食道破裂には以下の症状がみられることがあります。

Boerhaave

  • 胸部痛
  • 背部痛
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 吐血
  • 呼吸困難

中でもとにかく胸部に激しい痛みを伴うのが特徴です。症例報告をまとめた研究(694人)では、嘔吐が79.5%、胸痛が60.7%にみられました(Mela 2026)。嘔吐・胸痛・皮下気腫の組み合わせは「Mackler(マックラー)の3徴」と呼ばれますが、3つがそろわない人も多く、診断が遅れる原因になります(Turner 2023)。

これらの症状が出て、息苦しさを感じ、呼吸困難となることも・・・。

時間が経過しても治らないと焦りが出てくると思いますが、こういう症状が出た時にはすぐに医療機関へ行く必要があるんです。

マロリー・ワイス症候群は、嘔吐で食道胃接合部付近の粘膜が裂ける病気で、壁の全層が裂ける特発性食道破裂とは区別されます(Turner 2023)。

関連記事)食道胃接合部付近に裂創を生じるのがこちら→マロリーワイス症候群の症状や治療法のまとめ!画像でご説明

吐血があるときの原因と受診の目安は、吐血の原因はストレス?考えられる病気と受診の目安・何科に行くべきかで解説しています。

特発性食道破裂が起こる原因は?

元々、疾患があったわけではない食道が、ある原因がきっかけで突発的に内側から圧がかかり(急激な食道内圧上昇)、破裂してしまうという怖い疾患です。

  • 嘔吐
  • 排便
  • 陣痛
  • 咳
  • 腹部打撲
  • 多量飲酒

嘔吐をはじめ、食道の中の圧力が急に上がる動作が引き金になります(Turner 2023)。一気に圧がかかり、それに耐えられなくなり破裂してしまうというわけです。

 

また、排便や出産時の陣痛や激しい咳、胸部打撲等で同様に圧がかかり破裂してしまうということもあります。

直接の原因ではありませんが、多量飲酒後の嘔吐に関連して起こることがあります。排便時や分娩時のいきみ、咳でも起こります。

食道と胃の位置を示す人体図

特発性食道破裂の診断は?

嘔吐後の激しい胸痛や腹痛などから疑い、胸部X線・CT検査・血液検査・食道造影などを行い診断します。症例報告のまとめでは、診断にはCTが最も多く使われていました(55.5%)(Mela 2026)。

胸部X線

縦隔胸膜が穿破したならば、気胸が確認されます。

縦隔炎による縦隔拡大・縦隔気腫・頸部皮下気腫などがX線でわかりますし、胸腔内に食べた物の残りや胸水が貯留しているのも確認できます。

また、中には縦隔気腫や皮下気腫などの合併も見られます。

医師
しかし、X線ではわかりにくい場合、さらに詳しく診るためCTを用います。

CT検査

上記の所見の他に、縦隔膿瘍などが認められます。

血液検査

白血球の増加が認められ、赤沈亢進などの炎症が確認できます。

食道造影

診断がつかない場合、経口水溶性造影剤を食道内に流し、どこに問題があるのか、穿孔部位を探します。

この検査によって漏れ出しているものがなければ破裂はないと分かりますし、漏れ出していることが確認できれば破裂が確定できます。

特発性食道破裂の診断に使う検査の表

突然の激しい腹痛の原因とCT診断については、消化管穿孔とは?突然の激しい腹痛の原因・CT診断・治療を画像で解説で解説しています。

特発性食道破裂の治療法とは?

医師
破裂部位の縫合・ドレナージ・食道切除・洗浄、内視鏡を使った治療などがあります。

症例報告のまとめでは、最初の治療として手術(破裂部位の縫合閉鎖とドレナージなど)が最も多く(62.8%)選ばれていました(Mela 2026)。

しかし、破裂部位の損傷が激しいと縫合が難しいこともあります。その場合は、食道切除術などが行われます。一方、全身状態や発症からの時間によっては、内視鏡による治療や、手術をしない治療が選ばれることもあります。欧州の専門医を対象にした調査でも、治療方針は施設や症例によって分かれ、一律に定めた診療指針は現時点でないと報告されています(Hauge 2026)。

また、胸腔内や縦隔の洗浄(食べ物や最近が漏れ出していることがあるため)も必要です。

発症から時間が経っている場合は、胸の中(胸膜腔・縦隔)にたまった膿を出すドレナージと、抗菌薬による治療が中心になることがあります。

 

早期発見、早期治療が重要です。

死亡率の高い病気で、症例報告のまとめでは入院中の死亡が18.2%でした(Mela 2026)。ただし、症例報告が中心で、報告されやすい症例に偏る可能性があります。

元々何か疾患があったわけではないので、確実な予防方法はありません。ただし、飲酒後の激しい嘔吐は避けたいところです。処置までの時間が早いほど、予後は良いとされています。

特発性食道破裂のよくある疑問

Q. 嘔吐したあとの胸の痛みは、どのくらいで受診すべきですか?
A. 強い胸痛や背部痛、息苦しさ、発熱があれば、すぐに救急を受診してください。時間が経つほど縦隔炎などが進みます。

Q. 何科にかかればよいですか?
A. 夜間・休日を問わず、救急外来(119番)です。消化器外科や胸部外科のある病院が対応します。

Q. お酒を飲んで吐いたあとの胸痛は、マロリー・ワイス症候群ですか?
A. マロリー・ワイス症候群との区別は自分ではできません。痛みが強い、背中に広がる、息苦しいなどの場合は、特発性食道破裂の可能性もあるため受診してください。

Q. どれくらいの人が亡くなりますか?
A. 報告により差がありますが、症例報告のまとめでは入院中の死亡が18.2%でした(Mela 2026)。早く診断して治療することが重要です。

参考文献:
病気がみえる vol.1:消化器 P53
新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P62
パッと引けてしっかり使える 消化器看護ポケット事典[第2版]  P68

最後に

特発性食道破裂(Boerhaave症候群)についてまとめました。

  • 激しい胸部痛・背部痛・吐き気・嘔吐・吐血・呼吸困難といった症状に突然襲われる
  • 急激な食道内圧上昇が原因
  • 排便や陣痛、咳や胸部打撲なども原因となり、多量飲酒後に起こることが多い
  • すぐさま詳しい検査が必要
  • 診断はCTが中心で、治療は手術が最も多いが、内視鏡治療などが選ばれることもある

 

と行った点がポイントです。

急激な食道内圧上昇の原因となるようなことの後の、急激な胸痛の場合、この疾患の可能性があります。

 

気になる症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。

参考文献:Mela E et al. Diagnostic Approach and Therapeutic Management of Spontaneous Esophageal Perforation (Boerhaave’s Syndrome): systematic review. J Clin Med 2026 PubMed
参考文献:Hauge T et al. The current management of Boerhaave syndrome – a European multicenter case-vignette study. Dis Esophagus 2026 PubMed
参考文献:Turner AR et al. Boerhaave Syndrome. StatPearls 2023 PubMed