Treatment of lymphangioma Eye-catching image

 

リンパ管腫というと厚生労働省の指定難病の1つです。

小児期に発見されるものが80%、中には成人してから発見される場合もあります。

リンパ管のある身体のどこにでもできる可能性があり、いきなり身体にしこりを発見した場合、びっくりし、不安になる方も多いと思います。

実は私も30年以上前の小児期にリンパ管腫と診断され、当時入院し手術をおこないましたが、その後何度も再発しています。

今回は、リンパ管腫(英語表記で「Lymphangioma」)について

  • 検査
  • 何科
  • 治療法
  • 再発

私の体験談と合わせて、ご説明したいと思います。


リンパ管腫の検査は?

リンパ管腫は、表皮が正常で、柔らかい皮下の腫瘤として出生直後〜2歳以下の年齢で大部分は気付かれるものです。

75%が頸部、20%が腋窩(脇の下)に生じるとされています。

診断には、まずは視触診によって、腫瘤の性状を確認します。

症例:2歳女児

出生児より頰部の腫れがあり、腫れが目立つようになり受診。

Lymphangioma

(出典:医師国家試験過去問101A7)

症例:生後1日新生児

右頸部に柔らかい膨隆を認める。

Lymphangioma 1

(出典:医師国家試験過去問100F7)

発生部位によってはすぐにリンパ管腫を疑われる場合もありますが、腫瘍は他の怖い病気の可能性もあるので、以下のような方法で診断を確定します。

  • 画像診断
  • 病理検査

リンパ管腫の画像診断

超音波やCT、MRIなどによって実際に腫瘍の大きさや形、場所を画像で診断します。

超音波検査

超音波では、薄い壁に覆われた低輝度の腫瘤として認められます。
そして腫瘤の内部には多数の隔壁を認めています。

CT、MRI検査

CTでは場所の特定が、MRIではさらに詳しくリンパ管腫の形状・周囲の血管や臓器と癒着の有無など、細かく見ることができます。

これらの画像検査では、リンパ管腫は薄い壁を有する多房性の嚢胞性腫瘤として認められます。

MRI検査では、多数の隔壁を持つT1強調像で低信号、T2強調像で高信号として認められるのが一般的です。

嚢胞性腫瘤の中で出血することがあり、その場合は体位を変換することで液体が移動し、液面形成がみられるのも特徴です。
出血を伴う場合は、T1強調像、T2強調彫像の信号パターンは様々になります。

また、造影剤を用いたCT、MRI検査では、この嚢胞性腫瘤の壁(隔壁)のみに造影効果を認めるのが特徴です。

これらの画像検査は、診断だけでなく、治療方法を確定したり、症状の経過を観察するのにも用いられます。

医師
下の画像はMRIで撮影された、脾臓にできたリンパ管腫です。

mri

T2強調像で高信号(白い)を示す多房性の信号を脾臓内部に認めています。

リンパ管腫の病理検査

診断では、他の悪性腫瘍との鑑別が重要です。

しかし、腫瘍のはっきりとした原因が分からなかったり、診断がつきにくい場合には、針生検して組織を確認したり、手術して摘出した部位を細胞組織検査にまわし、診断を確定することもあります。

関連記事)リンパ管腫ってどんな症状?子供に出やすいってホント?

リンパ管腫は何科を受診すればいい?

発生部位によって、受診する科も異なります。

  • 小児の場合は、小児科
  • 首や喉などに出来、息苦しかったりという症状がある場合は、耳鼻咽喉科消化器外科
  • 見た目の問題が気になる場合は、形成外科皮膚科

を受診するのが一般的です。

ちなみに、私は小児の頃は小児外科成人した現在は皮膚科にかかっております。

リンパ管腫の治療法は?

約6%で自然退縮します。

そうでない場合、基本は手術によるリンパ管腫の摘出が完治のためには効果的とされています。

しかし、部位や浸潤によっては、手術が不可能なこともあり、その場合は硬化療法が選択されます。

医師
それぞれについてご説明します。

外科的手術

基本の治療は外科的手術によってリンパ管腫を摘出します。

完全切除できれば、完治する可能性が高い治療法です。

ですが、海綿状リンパ管腫の場合や浸潤している場合など、取りきれない可能性もあります。

硬化療法

病変部に注射するもので、薬剤を注射することによって、腫瘍を小さくする効果がありますが、効果がでない場合もあります。

また腫瘍内のリンパ液を抜いた後に、薬剤を注入すると効果があがるといわれています。

日本国内では、硬化剤としてピシバニールを使うのが主流ですが、他にはプレオマイシン・無水エタノール・高濃度糖水など様々な薬剤が使われてきました。

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再発する場合もある?

外科的手術で完全に取り除けば再発はないとは言われています。

しかし、浸潤していて全部取り除けなかったり、腫瘍が大きすぎる場合、海綿状リンパ管腫の場合は、再発の可能性も高くなります。

7~8割の患者さんは再発せず完治したという報告がありますが、残りの2割前後の再発も認められます。

再発の多くは術後1年以内のものが大半ですが、中には数年後に再発する場合もあります。

また、再発した場合の腫瘍が手術が必要なくらいまで肥大することは稀です。

私の場合のリンパ管腫

  1. 1歳前に、母がお風呂上りに左右の太ももの大きさが違うと異変に気付き、触ってしこりを確認
  2. 小児科を受診し、大学病院の小児科に回される
  3. 足の付け根(太ももの内側)の腫瘍だったため、はっきりとした診断がつかず
  4. 手術で摘出、病理検査、リンパ管腫と確定
  5. すぐに再発→海綿状リンパ管腫であり、硬化療法を用いて治療
  6. その後何度か再発と治療を繰り返し、小学校入学時には症状が安定→そのまま保存療法へ
  7. 20歳の頃、切開部分がミミズ腫れケロイド状になり、時たま傷跡の問題だろうと、出血するも放置
  8. 30歳の頃、出血回数が多くなり、小児期の病院を受診
  9. 30年前のカルテが残っていたため、皮膚科外来にて、表面に出た病変切除手術
  10. 32歳の頃、妊娠後期に再発
  11. 出産後、腫れや痛みが消失
  12. 35歳、再び腫れや痛みの再発

 

このように、海面状リンパ管腫のため、全てを取りきるのは不可能とされ、再発を繰り返しています。

  • ホルモンバランスの変化
  • 疲れの蓄積
  • 免疫低下
  • 細菌感染

などが原因で、症状の出現と症状消失を繰り返しています。

最近の治療法としては、血液検査で炎症反応を確認し、抗菌薬の服用で症状の消失を待つのみで、完治のための手術は不可能なため、今後も対処療法としての治療が主となるといわれています。

参考文献:頭頚部の画像診断 P402-403

最後に

  • 画像診断や病理検査でリンパ管腫と診断
  • 症状、腫瘍のある部位によって受診する科を選ぶ
  • 治療法として、外科的手術、硬化療法、保存療法がある
  • 2割前後再発の可能性もある
  • ほとんどは術後1年以内に再発

 

こんなにも再発を繰り返す私の場合は稀なようですが、私の体験が少しでもお役に立てればと思い、今回お話しました。

重要なのは、見た目の問題だけでなく、腫瘍による影響・浸潤がないかということです。

腫瘍の出現部位や浸潤によって、症状が進行すると命に関わることもありますので、異変に気付いた場合は、早期に受診しましょう。




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