
吐血や下血があると、「何じゃこりゃ!」と慌てて恐怖を感じることが多くあるかと思いますが、嘔吐後の吐血では、消化器の疾患であるマロリー ワイス 症候群の可能性もあります。
しかし、聞きなれないこの病名、今回はマロリー ワイス 症候群(英語表記でMallory-Weiss)について
- 症状
- 原因
- 治療法
を分かりやすくご説明致します。
先に結論
- マロリーワイス症候群は、くり返す嘔吐のあとに、食道と胃のつなぎ目(食道胃接合部)の粘膜が裂けて出血する病気です(Yin 2012)。
- 典型的な症状は、激しい嘔吐のあとの吐血です。みぞおちの痛み、立ちくらみがみられることもあります。
- 原因で多いのは飲み過ぎ(過度のアルコール摂取)や悪阻(つわり)ですが、嘔吐をくり返す状況ならどれも原因になります。
- 診断は内視鏡検査(胃カメラ)で裂け目を確認します。多くは自然に止血しますが、出血が続く場合は内視鏡で止血します。
- 吐血が多い、黒い便が出る、ふらつく、強い胸や背中の痛みがあるときは、救急で受診してください。
マロリー ワイス 症候群とは?
反復する悪心や激しい嘔吐の結果、食道胃接合部付近に粘膜下層までの裂創が生じるために、粘膜下の血管が破れて吐血する病態をマロリーワイス症候群と言います。

どのような症状が現れる?
- 嘔吐
- 悪心
- 心窩部痛(しんかぶつう)
- 吐血
- 下血
激しい嘔吐や、悪心を繰り返すことにより、急激に腹圧が上昇し、食道胃接合部の近くの粘膜に裂創が生じ、そこから出血が起こるために、鮮血の混じった吐血や稀に下血といった症状が現れます。
胸痛や腹痛は基本起こりませんが、心窩部痛といってみぞおちあたりが痛むことがあります。また、立ちくらみや目眩といった症状が現れることもあります。
激しい胸痛を伴う場合は、特発性食道破裂(英語名でBoerhaave症候群)の可能性があります。
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マロリーワイス症候群の原因は?
- 過度のアルコール摂取
- 妊娠中の悪阻
- 食中毒
- 乗り物酔い
- 過食
- 摂食障害
- 抗がん剤(による嘔吐)
- 内視鏡検査
代表的なのは、過度のアルコール摂取や悪阻などが原因となりますが、その他にも上記のような激しい嘔吐を誘発することが原因となります。
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どのような検査で診断される?
- 内視鏡検査
- 血液検査
内視鏡検査(胃カメラ)を行い、食道胃接合部付近の粘膜に縦走する裂創(傷の位置や深さ、大きさや出血)を確認出来ます。また、血液検査を行うと、吐血(下血)のために貧血を認めます。
妊娠中の場合は、内視鏡検査で使う鎮静剤などの影響を考える必要があるため、検査をするかどうかは産科医・消化器医と相談して決めます。症状から疑って経過をみることもあります。
妊娠中の内視鏡検査について詳しくはこちらをご覧下さい。→胃カメラの鎮静剤に副作用はある?妊娠中や授乳中の使用は?
症例:23歳男性
多量の飲酒後、胃液を嘔吐後、吐血を伴い受診。
(出典:医師国家試験106I68より)
食道内視鏡により裂創、出血を認めており、マロリーワイス症候群と診断されました。

マロリーワイス症候群の治療法は?
多くは保存的治療で、自然に止血して治ります。保存的治療では、
- 絶食
- 補液
- 酸分泌抑制薬
- 止血薬
- 粘膜保護薬
などで、自然治癒を待ちます。また、傷の治りを助けるために、胃酸の分泌を抑える薬を使うことがあります。
- H2ブロッカー(ヒスタミン受容体拮抗剤)
- PPI(プロトポンプ阻害薬)
妊娠中の場合、胎児に影響が出る可能性も考慮し、基本的には脱水症状予防の点滴などで安静にし、様子をみることが多いとされます。薬の使い方は産科医と相談して決めます。
また、摂食障害が原因の場合は、マロリーワイス症候群の治療を行っても、摂食障害が治っていなければ、再び繰り返すことになります。つまり、同時に摂食障害の治療も必要になります。
治療後の食事の注意
また、回復した後も、胃への負担を減らすために、次のような一般的な食事の工夫が勧められます(特別な科学的根拠があるわけではありません)。
- 消化の悪いものは控える
- 熱いものを控える
- 辛いものを控える
- 酸っぱいものを控える
- 脂っこいものを控える
- アルコール摂取を控える
- 食べ過ぎを控える(腹八分目)
- 食後すぐに横にならない
症状が落ち着くまでは、のど越しのよい消化のよいものから少しずつ始め、飲酒は控えましょう。
内視鏡的止血術
- クリッピング
- アルゴンプラズマ凝固法(英語表記で「Argon plasma coagulation」略語で「APC」)
- 止血鉗子
- 薬剤の局所注入(高張Na・エピネフリンなど)
小型のクリップによって、血管や周辺粘膜を結束し止血するクリッピングを行ったり、血管を電気焼灼するアルゴンプラズマ凝固法を行います。また、鉗子により止血したり、止血効果のある薬剤を注入したりします。

よくある疑問
Q. マロリーワイス症候群は何科を受診すればいいですか?
吐血があるときは救急外来、落ち着いている場合は消化器内科を受診します。内視鏡検査(胃カメラ)で診断します。
Q. お酒を飲んで吐いたら、血が混じっていました。どうすればいいですか?
少量で止まる場合もありますが、量が多い、くり返す、黒い便が出る、ふらつくなどがあれば救急で受診してください。吐いたものに血が混じる原因は、ほかにも胃潰瘍や食道静脈瘤などがあります。
Q. 再発することはありますか?
嘔吐をくり返す状況(飲み過ぎ、摂食障害など)が続くと、再び起こることがあります。原因となる習慣や病気への対応が大切です。
最後に
- 反復する悪心や激しい嘔吐により、食道胃接合部付近に粘膜下層までの裂創が生じ、粘膜下の血管が破れて吐血する病態
- 激しい嘔吐の後の吐血が特徴的で、強い胸痛や腹痛は基本的に起こらない
- 過度のアルコール摂取や悪阻など、激しい嘔吐を繰り返したことが原因
- 内視鏡検査で裂創を確認・血液検査で貧血を確認
- ほとんどは保存療法で自然治癒する
- 出血を認める場合、内視鏡的止血術を行う
症状を放置せず、早期に医療機関を受診し、内視鏡検査を行いましょう。というのも、痛みを伴う場合は、特発性食道破裂の可能性もあります。そうなると、早期の治療が回復への鍵ともなりますので、 少しでも早く医療機関を受診しましょう。
参考文献:Yin A, et al. Mallory-Weiss syndrome: clinical and endoscopic characteristics. Eur J Intern Med 2012 PubMed






