Oxygenation Eye-catching image

酸素状態を数値化するのに最も簡便な方法は、パルスオキシメーターによるサチュレーション(動脈血酸素飽和度=SpO2)測定です。

パルスオキシメーターを指先につけると、数秒くらいでサチュレーションの値がわかります。

パルスオキシメーターは、病院の診察室にもありますね。

非常に簡便で痛みも伴わないので重宝されますが、酸素を投与している人の場合、その値の解釈には注意が必要なことがあります。

今回は、

  • 酸素化とは何なのか
  • SpO2とPaO2の相関関係(換算表)
  • SpO2とPaO2の落とし穴

などについてまとめました。


酸素化とは?

酸素化とは、酸素が体の隅々まで十分に行き届くことをいいます。

人工呼吸器に限らず、鼻カヌラやマスクでも酸素を投与している人に対して、酸素化を行うことは非常に重要です。

酸素化するには、動脈の中の酸素(正確には酸素の分圧)が十分である必要があります。

医療の現場では、酸素化が不良な場合には、酸素濃度を上げて対応したりします。

酸素化をどうやって測定する?

では、どうやって酸素化がうまくいっているか、酸素化が不良なのかを評価するのでしょうか。

それは、サチュレーションつまり、SpO2(動脈血酸素飽和度)を測定することによってです。

指につけて測るやつですね?
その通りです。
非常に簡便に測れるため医療の現場では使われます。

Pulse Oximeter figure

ところで、サチュレーションとも呼ばれるSpO2(動脈血酸素飽和度)とは、血液中のヘモグロビンのうち何%が酸素と結合しているかを表す数値です。

最高が100%で、正常だと100%近いです。

正確にはPaO2を測定しないといけない!

本来は、動脈の中の酸素の割合であるPaO2と呼ばれる動脈血酸素分圧こそが、血液の中で、どの程度酸素が占めているかを示す数値です。

ところがこの数値は実際に血液を採ってきて測らないといけませんので、簡便に測ることができません。

酸素状態を見る際に、毎回動脈採血していたら大変です。

そこで、

  • PaO2と、ある程度相関関係にあるSpO2

を測定することによって代用しているんですね。

relationship SpO2 and PaO2

そういうことなんですね。
どのような相関関係なのかを理解しておく必要があります。

SpO2とPaO2の相関関係は?

SpO2とPaO2の関係は、次のようになります。

酸素解離曲線と呼ばれる表ですね。

Oxygen dissociation curve

PaO2が50,60,70,80,90,100のときのSpO2の値はそれぞれ次のようになります。

SpO2(%) 83 90 93 95 97 98
PaO2(mmHg=torr) 50 60 70 80 90 100

 

SpO2が90%あっても、PaO2は60しかないんですね。
その通りです。

SpO2 90%と90%あればなんとなく大丈夫な気がするかもしれませんが、決してそんなことはなく、90%以下ならば酸素療法の適応となりますので注意が必要です。

なるほど、SpO2が90以下は要注意ですね。
逆に100%ですと安心しますね。
実は、そうではないケースがあります。

酸素療法をしている人がSpO2 100%なら安心か?

先ほどの表にあったように、PaO2が100(torr=mmHg)以上で、SpO2は100%になります。

SpO2は最大が100%ですが、PaO2は100(torr=mmHg)が最大ではありません。

つまり、動脈血酸素分圧PaO2は100よりもどんどん高くなることができます。

具体例を見てみましょう。

例)患者さんA(リザーバーマスクで酸素10l/分投与中)

  • SpO2  100%、(血液ガスで測定すると実際は、PaO2  250(torr))

 

ということもあります。そしてこの患者Aさんが、数時間のうちに、

 

例)患者さんA(リザーバーマスクで酸素10l/分投与中)

  • SpO2  100%、(血液ガスで測定すると実際は、PaO2  100(torr))

 

という状態になることもあるのです。

SpO2の見かけの酸素は同じ100%でも、体の中の酸素分圧は急激に下がっており、状態が一気に悪くなっていることを物語っています。

SpO2 100%だからといって、いつでも安心というわけではないんですね。

酸素解離曲線をもう一度チェック

そのPaO2(PO2:横軸)とSpO2(酸素飽和濃度:縦軸)との相関関係を示すのが、先ほども出てきた酸素解離曲線です。

Oxygen dissociation curve

この特徴は、縦軸の酸素飽和度は単位が%ですから100%が最大です。

つまり、横軸のPaO2が100を超えてどんどん大きくなっても、縦軸の酸素飽和度は100を超えることはありません。

なので、SpO2(酸素飽和度)は100であっても、実は酸素化が急激に悪くなっていることは、SpO2のみ測定していてはわからないということになってしまいます。

SpO2もPaO2もあてにならない?

なるほどです。
でもかといって、PaO2をしょっちゅう測るわけにもいかないですよね。

その通りです。
PaO2を測るには動脈血を採血しなければなりませんので、そんなしょっちゅう測れません。

SpO2(酸素飽和度)が100%の中で、PaO2は100以上ということはわかりますが、200かもしれませんし、300かもしれません。酸素化が悪くなっているのに気づかないことがありえます。

また、同じPaO2の値であっても、

  • 酸素投与していない人がPaO2 100
  • 10l/分のリザーバーマスクをしている人のPaO2 100

は同じPaO2 100であっても全く意味が違いますよね。

ですので、SpO2もPaO2も非常に有用な数値ではありますが、真の酸素化を意味しているわけではないということです。

悪く言えばあてにならないともいえるわけです。

 真の酸素化を知りたければ、PF比というものを計算する必要があります。

これについては、別の記事で取り上げます。

まとめ

  • SpO2とPaO2の相関関係について
  • SpO2 100%でも安心できないことがある。
  • PaO2はしょっちゅう測れない。
  • そのPaO2も投与酸素量によって意味が違う。
  • SpO2もPaO2も単体では真の酸素化を見ることはできない。

参考になれば幸いです(^O^)




関連