
酸素状態を数値化するのに最も簡便な方法は、パルスオキシメーターによるサチュレーション(動脈血酸素飽和度=SpO2)測定です。
パルスオキシメーターを指先につけると、数秒くらいでサチュレーションの値がわかります。
パルスオキシメーターは、病院の診察室にもありますね。
非常に簡便で痛みも伴わないので重宝されますが、酸素を投与している人の場合、その値の解釈には注意が必要なことがあります。
今回は、
- 酸素化とは何なのか
- SpO2とPaO2の相関関係(換算表)
- SpO2とPaO2の落とし穴
などについてまとめました。
- 酸素化とは、吸い込んだ酸素が血液に取り込まれ、全身に届くことです。
- 簡単に測れるのがSpO2(指先のパルスオキシメーター)、より直接的なのがPaO2(動脈血ガス)です。
- 目安として、PaO2 60mmHgのときSpO2は約90%です。SpO2が90%前後を下回ると、酸素投与を検討する目安になります。
- SpO2は100%が上限のため、酸素を投与中は「SpO2 100%」でもPaO2が大きく下がっていることがあります。
- パルスオキシメーターは、一酸化炭素中毒や皮膚の色などで実際の値からずれることがあります。
酸素化とは?
酸素化とは、酸素が体の隅々まで十分に行き届くことをいいます。
人工呼吸器に限らず、鼻カヌラやマスクでも酸素を投与している人に対して、酸素化を行うことは非常に重要です。
酸素化するには、動脈の中の酸素(正確には酸素の分圧)が十分である必要があります。
医療の現場では、酸素化が不良な場合には、酸素濃度を上げて対応したりします。
酸素化をどうやって測定する?
では、どうやって酸素化がうまくいっているか、酸素化が不良なのかを評価するのでしょうか。
それは、サチュレーションつまり、SpO2(動脈血酸素飽和度)を測定することによってです。
非常に簡便に測れるため医療の現場では使われます。

ところで、サチュレーションとも呼ばれるSpO2(動脈血酸素飽和度)とは、血液中のヘモグロビンのうち何%が酸素と結合しているかを表す数値です。
最高が100%で、正常だと100%近いです。
正確にはPaO2を測定しないといけない!
本来は、動脈血に溶けている酸素の圧力であるPaO2と呼ばれる動脈血酸素分圧こそが、血液の中で酸素がどの程度あるかを直接示す数値です。
ところがこの数値は実際に血液を採ってきて測らないといけませんので、簡便に測ることができません。
酸素状態を見る際に、毎回動脈採血していたら大変です。
そこで、
- PaO2と、ある程度相関関係にあるSpO2
を測定することによって代用しているんですね。


呼吸の働きを調べる検査については、スパイロメーターとは?測定できる項目、使い方、原理とわかる病気を解説で解説しています。
SpO2とPaO2の相関関係は?
SpO2とPaO2の関係は、次のようになります。
酸素解離曲線と呼ばれる表ですね。

PaO2が50,60,70,80,90,100のときのSpO2の値はそれぞれ次のようになります。
| SpO2(%) | 約85 | 約90 | 約93 | 約95 | 約97 | 約98 |
| PaO2(mmHg=torr) | 50 | 60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
※酸素解離曲線に基づく目安の値です(Severinghaus 1979)。体温やpHなどの条件、個人差で曲線は左右にずれます。
SpO2が90%あればなんとなく大丈夫な気がするかもしれませんが、そうとは限りません。SpO2 90%前後(PaO2 60mmHg程度)を下回ると、酸素療法を検討する目安になります。実際の適応は病状や基礎疾患によって医師が判断しますので、注意が必要です。
逆に100%ですと安心しますね。
酸素療法をしている人がSpO2 100%なら安心か?
先ほどの表にあったように、PaO2が100(torr=mmHg)以上で、SpO2は100%になります。
SpO2は最大が100%ですが、PaO2は100(torr=mmHg)が最大ではありません。
つまり、動脈血酸素分圧PaO2は100よりもどんどん高くなることができます。
例)患者さんA(説明のための仮の例:リザーバーマスクで酸素投与中)
- SpO2 100%、(血液ガスで測定すると実際は、PaO2 250(torr))
ということもあります。そしてこの患者Aさんが、数時間のうちに、
例)患者さんA(同じ患者さんの数時間後)
- SpO2 100%、(血液ガスで測定すると実際は、PaO2 100(torr))
という状態になることもあるのです。
SpO2の見かけの酸素は同じ100%でも、体の中の酸素分圧は急激に下がっており、状態が一気に悪くなっていることを物語っています。
酸素解離曲線をもう一度チェック
そのPaO2(PO2:横軸)とSpO2(酸素飽和濃度:縦軸)との相関関係を示すのが、先ほども出てきた酸素解離曲線です。

この特徴は、縦軸の酸素飽和度は単位が%ですから100%が最大です。
つまり、横軸のPaO2が100を超えてどんどん大きくなっても、縦軸の酸素飽和度は100を超えることはありません。
なので、SpO2(酸素飽和度)は100であっても、実は酸素化が急激に悪くなっていることは、SpO2のみ測定していてはわからないということになってしまいます。
SpO2もPaO2もあてにならない?
でもかといって、PaO2をしょっちゅう測るわけにもいかないですよね。
PaO2を測るには動脈血を採血しなければなりませんので、そんなしょっちゅう測れません。
SpO2(酸素飽和度)が100%の中で、PaO2は100以上ということはわかりますが、200かもしれませんし、300かもしれません。酸素化が悪くなっているのに気づかないことがありえます。
また、同じPaO2の値であっても、
- 酸素投与していない人がPaO2 100
- 10l/分のリザーバーマスクをしている人のPaO2 100
は同じPaO2 100であっても全く意味が違いますよね。
ですので、SpO2もPaO2も非常に有用な数値ではありますが、真の酸素化を意味しているわけではないということです。
悪く言えばあてにならないともいえるわけです。
真の酸素化を知りたければ、PF比というものを計算する必要があります。
PF比は、PaO2を吸入している酸素の濃度(FiO2)で割った値です。同じPaO2でも、どれだけ酸素を吸わせてその値なのかを考慮できます。急性呼吸促迫症候群(ARDS)の重症度分類にもPaO2/FiO2が使われています(ARDS Definition Task Force 2012)。
息苦しさや低酸素の原因になる病気については、急性肺血栓塞栓症(肺塞栓症)とは?症状・Wellsスコア・造影CTによる診断と治療で解説しています。
パルスオキシメーターの値がずれるのはどんなとき?
SpO2は便利ですが、次のような場面では実際の酸素化とずれることがあります。
- 一酸化炭素中毒:一酸化炭素と結合したヘモグロビンが、酸素と結合したものとして読まれ、SpO2が見かけ上高くなります(Hampson 1998)。
- 皮膚の色:肌の色が濃い人では、SpO2が実際より高く表示されることがあると報告されています(Jamali 2022)。
- 手足の冷え・血流の低下、体の動き:指先の血流が弱い、あるいは測定中に動くと、値が不安定になることがあります。
表示された値だけで判断せず、息苦しさや顔色・唇の色などの症状もあわせて見ることが大切です。

酸素化に関するよくある疑問
Q. SpO2とSaO2は何が違いますか?
SaO2は動脈血を採って測る酸素飽和度、SpO2はパルスオキシメーターで皮膚の上から推定した値です。どちらも「ヘモグロビンの何%が酸素と結合しているか」を表します。
Q. SpO2が100%に近ければ、酸素は足りていますか?
健康な人では100%近くになります。ただし、酸素を投与している場合は100%でも実際の酸素分圧がわからないため、医療現場ではPaO2やPF比もあわせて評価します。
Q. 息苦しいときはどうすればよいですか?
息苦しさ、唇や顔色の変化、普段より明らかに低い測定値が続くときは、医療機関を受診してください。強い息苦しさや意識がぼんやりするときは、救急受診を考えましょう。
まとめ
- SpO2とPaO2の相関関係について
- SpO2 100%でも安心できないことがある。
- パルスオキシメーターは、一酸化炭素中毒や皮膚の色などで実際の値からずれることがある。
- PaO2はしょっちゅう測れない。
- そのPaO2も投与酸素量によって意味が違う。
- SpO2もPaO2も単体では真の酸素化を見ることはできない。
参考になれば幸いです(^O^)
参考文献:
Severinghaus JW. Simple, accurate equations for human blood O2 dissociation computations. J Appl Physiol 1979(PubMed)
ARDS Definition Task Force. Acute respiratory distress syndrome: the Berlin Definition. JAMA 2012(PubMed)
Hampson NB. Pulse oximetry in severe carbon monoxide poisoning. Chest 1998(PubMed)
Jamali H, et al. Racial Disparity in Oxygen Saturation Measurements by Pulse Oximetry: Evidence and Implications. Ann Am Thorac Soc 2022(PubMed)





