頸動脈プラークの治療法は?内科的治療・内膜剥離術・ステントの違い

プラークとは頚動脈内に限局的に突出した病変のことで、

  • 高血圧症
  • 脂質異常症(高脂血症)
  • 糖尿病
  • 喫煙
  • 加齢

などのリスク要因が増えることで生じます。

このプラークが増加してくると、血液が流れる部分が狭くなっていき、また脳への血流が途絶えたり、プラークから剥がれた血栓などが脳の血管に詰まったりすると脳梗塞を引き起こします。

それではこのプラーク、どのように治療するのでしょうか?

また、治療に際してのメリットやデメリットは?

そこで今回は、

  • 頸動脈プラークの治療法は?メリットやデメリットは?
  • 狭窄率はどれくらいで治療の対象になるの?
  • 何科を受診するの?
  • 頸動脈のプラークの種類は?
  • エコーの輝度によってプラークを診断できるの?

以上について解説していきます。

先に結論

  • 治療は内科的治療(薬と生活習慣の管理)、頸動脈内膜剥離術(CEA)、頸動脈ステント留置術(CAS)の3つが基本です。
  • どれを選ぶかは、症状(脳梗塞や一過性脳虚血発作)の有無・狭窄の程度・プラークの性状・手術のリスクを合わせて専門医が決めます。
  • プラークがあるだけで手術になるわけではなく、多くの方は薬と生活習慣の改善から始まります。
  • 受診先は脳神経外科・神経内科・循環器内科などです。生活習慣・食事の面は頸動脈のプラークを改善するには?控えたい食品は?で解説しています。
治療法 どんな治療か 主な特徴
内科的治療 抗血小板薬、脂質・血圧・血糖の管理、禁煙など すべての段階の土台。手術を選ぶ場合も続ける
CEA(内膜剥離術) 首を切開してプラークを取り除く手術(全身麻酔が一般的) 病変を直接取り除ける。手術の傷や神経まひなどの合併症がある
CAS(ステント留置術) 足の付け根などからカテーテルを入れ、ステントで狭窄を広げる 首を切開しない。治療中に血栓やプラーク片が飛ぶリスクがある

※治療の適応や薬の内容は個人差が大きく、主治医とよく相談して決めます。

頸動脈プラークの治療法は?

頸動脈とは脳に向かう大事な血管であり、この血管の血流が途絶えてしまうと脳梗塞を引き起こします。

頸動脈は頭側に向かって途中で二つに分かれ、それぞれ内頸動脈と外頸動脈と呼ばれますが、このうち、内頸動脈が脳に血液を供給する血管でとなり大変重要な働きをしています。

内頸動脈にプラークが認められる場合、内頸動脈はあまり太くないので血管の中身が塞がってしまうと血液は流れなくなりますから、脳に十分な血液が供給されなくなり脳梗塞などを引き起こす可能性があるのです。

また、プラークの一部が欠け血流に乗って脳の細かな血管に詰まってしまう場合でも、脳梗塞を起こしてしまうことがあります。

検査で異常値が認められた場合は、動脈硬化が進んだ事によるプラークの形成と血管の狭窄が原因となります。

それでは、プラークが認められた場合にはどうすればよいのでしょうか?
すでにプラークや狭窄が見られる場合には、以下の治療法が有効となります。
  • 内科的治療
  • 頸動脈内膜剥離術(CEA)
  • 頸動脈ステント留置術(CAS)

それでは、上記の治療法を詳しく説明していきます。

内科的治療

脳梗塞を起こす主な原因は、頸動脈狭窄部で出来た血栓が血管を詰まらせることですので、血栓が出来ないように抗血小板薬や抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬剤)の点滴や内服治療、管理も行ないます。

アスピリン製剤や、クロピドグレルには、血小板の働きを抑えて血液が固まるのを防ぐ抗血小板作用があり、服用を継続することで脳梗塞、心筋梗塞といった循環器疾患の予防効果が期待できます。

あわせて、動脈硬化そのものを進めない治療として、コレステロールを下げる薬(スタチンなど)、血圧・血糖の管理、禁煙を行います。抗血小板薬は出血しやすくなる副作用もあるため、自己判断で中止せず、歯科治療や手術の前には主治医に伝えてください。

 頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)

全身麻酔(施設によっては局所麻酔)で頸部の皮膚を切開し、頸動脈に到達します。動脈を切開して、手術用顕微鏡で確認しながら、動脈を狭くしている原因であるプラークを除去する手術です。

内頚動脈の血流を一時的に遮断し、血管を開いてプラークを取り除きます。手術に要する時間は施設や病変の状態によって異なります。

メリット
  • 病変を確実に除去できるため、頸動脈狭窄症に対するもっとも標準的で確実な治療法。
  • ステントと比べて、術前後に併用する抗血小板薬が少なくて済むことが多い(施設の方針による)。
デメリット
  • 総頚動脈が内頚動脈と外頸動脈のふたつに分岐している部分のすぐ近くには舌の神経があるため、その神経に触れてしまうと、一時的に麻痺が生じたり、舌が曲がってしまうなどの合併症が起こる危険性がある。
  • 全身麻酔が可能でなければ手術は適用ならない。
  • 反対側の頸動脈高度狭窄、病変部が著しく高位、高齢者、心疾患合併症、頸動脈血栓内膜剥離術後再狭窄、放射線治療後、大動脈炎症候群、はこの手術を行なう場合の高危険群と考えられる。
  • 手術後に再び狭窄(再狭窄)が起こることがあり、術後も定期的な経過観察が必要。
  • 前頸部に創部痕を残すが、傷跡は時間と共に目立たなくなって行く。

 

 頸動脈ステント留置術(CAS)

局所麻酔下に、足の付け根の血管(大腿動脈)からカテーテルを誘導して、血管の中から狭窄部位をカテーテルの先についた風船で広げ再び狭窄しないようにする治療です。

頚動脈の狭窄部分ステントと呼ばれる金属性の網状の筒を留置して、血管を拡張させ、プラークを壁に押しつけ安定させる方法で、こうすることで、良好な血行を確保することが可能となります。

治療時間は施設や病変の状態によって異なります。

メリット
  • 内膜剥離術と比較して体の負担が少なく、高齢者や色々な合併症を持った患者でも行なえる。
  • 術後の安静期間や入院期間も短い。
デメリット
  • フィルター(脳保護デバイス)を使用していても、血管を広げるときにコレステロールの破片や血栓が脳内に流れて脳梗塞を生じる危険性があり、 この場合、半身麻痺や言語障害などの後遺症を残すこともある。
  • 発生率は低いが、血管拡張後に脳内への血流量が多くなりすぎて、脳出血を起こすこともある。
  • 術前後は複数の抗血小板薬を併用することが多く、その間は出血のリスクが高まる。

 

CEAとCASはどちらが安全?

症状のある方とない方を合わせて2,502人を比べたアメリカの大規模試験(CREST)では、治療直後から4年後までの脳卒中・心筋梗塞・死亡を合わせた割合は、ステント7.2%、内膜剥離術6.8%で有意な差はありませんでした(Brottら 2010)。ただし治療直後の期間に限ると、脳卒中はステントで多く(4.1% 対 2.3%)、心筋梗塞は内膜剥離術で多い(1.1% 対 2.3%)という違いがありました。どちらが向くかは、年齢や心臓の病気、病変の位置などで変わります。

頸動脈エコーの費用については、頸動脈エコーの費用は?保険は使える?自費になる場合と脳ドックの費用の目安で解説しています。

狭窄率はどれくらいで治療の対象になるの?

上記の治療法を決める上で重要なのは、狭窄率で、症状の有無と狭窄率および手術の危険性により決まります。

血管造影での狭窄率から30-49%を軽度、50%~69%を中等度、70%以上を高度とするものが一般的です。ただし、狭窄率の測り方(血管造影・エコー・CTなど)や、国・学会のガイドライン(欧州血管外科学会2023など)によって基準の数字は少しずつ異なります。以下はあくまで考え方の目安です。

無症状で狭窄度が60 %未満、もしくは症状有りで狭窄度が50 %未満の場合

→手術的治療は推奨されず、動脈硬化の治療を行い、抗血小板剤を内服することになる。

無症状で狭窄度が60 %以上、もしくは症状有りで狭窄度が50 %以上の場合

→まずは動脈硬化の治療を行い、抗血小板剤を内服し、その後に手術的治療が検討される。

症状があり、狭窄度が50 %以上だが、手術の危険性が高い場合

→まずは動脈硬化の治療を行い、抗血小板剤を内服し、その後に頸動脈ステント留置術がすすめられる。

無症状で狭窄度が80 %以上だが、手術の危険性が高い場合

→まずは動脈硬化の治療を行い、抗血小板剤を内服し、その後に頸動脈ステント留置術がすすめられる。

 

頚部頚動脈狭窄の治療は、狭窄率の少ないものに関しては禁煙や生活習慣の改善が第一ですが、狭窄率がある程度以上になると一定の割合で脳梗塞を生じるため治療適応となります。

症状があるときは急いで受診を

片方の手足に力が入らない、ろれつが回らない、言葉が出にくい、片目が急に見えにくくなる、といった症状が出て数分〜数十分で消えた場合も、一過性脳虚血発作(TIA)という脳梗塞の前触れの可能性があります。症状が消えても、すぐに救急受診してください。

狭窄率と治療の考え方の表

頸動脈にプラークが見つかった場合、何科を受診するの?

健康診断で頸動脈にプラークが見つかりました・・・何科を受診すればよいのでしょうか?
脳血管内科や神経内科、循環器科などが良いでしょう。

動脈硬化は血管の病気ですから循環器内科や心臓血管外科といった診療科で扱っている病気です。

これらの医療機関以外でも基本的な検査を行っているクリニックなどもあり限定されていませんので、事前にチェックする事をおすすめします。

頸動脈狭窄症で脳梗塞を起こしたり、頸動脈狭窄症と診断された場合は、脳卒中が専門の神経内科医や脳神経外科医に相談して下さい。

 

首の頸動脈と脳への血流の図

脳梗塞の症状については、小さい脳梗塞ではどんな症状がある?診断や治療はどうする?で解説しています。

頸動脈プラークの種類は?

プラークには2つの種類があります。
  • 脳梗塞を起こす危険の高い=「不安定」プラーク
  • 危険の低い=「安定」プラーク

狭窄の程度が同じでも、プラーク内に脂質成分や出血が多い「不安定」プラークは、脳梗塞を発症する危険が高いので、積極的な治療が必要です。

頸動脈プラークの存在診断は頸部エコー検査で十分とされていますが、質的診断,特に不安定プラークかどうかの評価に超音波,CT,MRIのいずれが最適かということについては,いまだ十分に検証されていません。

 

エコーの輝度によってプラークを診断できるの?

エコー輝度は、以下の3郡に分かれます。
  • 低輝度(echolucent, hypoechoic)
  • 等輝度(echogenic, isoechoic)
  • 高輝度(calcified, hyperechoic)

低輝度はB-mode のみで見えにくいもの、等輝度は筋肉や内中膜の輝度に近いもの、高輝度は骨の輝度に近いものとされていますが、実際に検査する者により評価が異なることも多いために注意が必要となります。

エコー輝度と病理組織との関連は、以下と対応しているとされています。

  • 低輝度→血栓や粥腫
  • 等輝度→繊維性組織
  • 高輝度→石灰化

頸部エコー検査における不安定プラークとは?

頸部エコー検査における不安定プラークとは、

  • 低輝度プラーク
  • 潰瘍を形成(2mmを超える陥凹)しているプラーク
  • 可動性を有するプラーク

であり、脳梗塞発症の高リスク状態とされます。

症例 70歳代女性 脳梗塞発症

右の総頚動脈に低輝度のプラーク形成を認めています。

プラーク内には2,2mm(>2mm)の潰瘍を認めており、不安定プラークと診断できます。

 

なお、プラーク内部のエコー性状の診断は臨床的にも重要ですが、小さなプラーク(プラーク厚が2mm未満で潰瘍形成を伴わないプラーク)はエコー輝度による分類が困難な場合が多くいため、プラークのエコー輝度による分類は必要ないと考えられています。

また、大きなプラークは通常不均一なことが多く、これらの病変が入り交じった複合病変であることが多いとされます。

輝度の評価は現在定性的な評価であるため検者による誤差が大きく、定量的な評価も試みられています。

よくある疑問

Q. プラークが見つかったら、すぐ手術ですか?

A. いいえ。多くの場合は、まず薬と生活習慣の管理(内科的治療)から始まります。手術やステントを検討するのは、脳梗塞などの症状がある場合や、狭窄が強い場合などです。

Q. 薬でプラークは消えますか?

A. 薬や生活習慣の改善で、プラークの進行を抑えたり、プラークを安定させたりすることが目標になります。すっかりなくなるとは限りません。コレステロールの管理などは主治医の指示に従ってください。

Q. 無症状でも治療が必要ですか?

A. 狭窄が軽ければ、薬と生活習慣の管理で経過をみることが中心です。狭窄が強い場合は、無症状でも手術やステントを検討することがあります。定期的にエコーなどで経過をみます。

Q. 食事や運動で気をつけることは?

A. 禁煙、塩分や脂質のとり方、運動などが重要です。具体的には頸動脈のプラークを改善するには?控えたい食品は?をご覧ください。気になる症状や検査結果があれば、医療機関を受診してください。

まとめ

今回のポイントのまとめ!
  • プラークや狭窄が見られる場合の治療方法には、内科的治療・頸動脈内膜剥離術・頸動脈ステント留置術がある。
  • 頸動脈内膜剥離術とは、動脈を切開して、手術用顕微鏡で確認しながら、動脈を狭くしている原因であるプラークを除去する手術である。
  • 頸動脈ステント留置術とは、局所麻酔下に、足の付け根の血管(大腿動脈)からカテーテルを誘導して、血管の中から狭窄部位をカテーテルの先についた風船で広げ再び狭窄しないようにする治療である。
  • 治療法を決める上で重要なのは、狭窄率で、症状の有無と狭窄率および手術の危険性により決まる。
  • 頸動脈にプラークが見つかった場合は、脳血管内科や神経内科、循環器科などを受診するとよい。
  • プラークには、脳梗塞を起こす危険の高い=「不安定」と危険の低い=「安定」プラークの2種類がある。
  • エコー輝度は、低輝度(echolucent, hypoechoic)等輝度(echogenic, isoechoic)高輝度(calcified, hyperechoic)の3郡に分かれる。

 

脳卒中は日本人の主な死亡原因の一つで、介護が必要になる原因にもなる、多くの方が罹りうる病気です。この病気は、くも膜下出血や脳内出血のように血管からの出血による場合もあれば、脳梗塞に代表されるように脳の血管が詰まる場合もあります。

頸動脈エコー検査などで、症状がないのに頸動脈の狭窄が見つかる方もいますので、リスク要因のある方は検査を受けることをおすすめします。


参考文献(追加):
Brott TG, et al. Stenting versus endarterectomy for treatment of carotid-artery stenosis. N Engl J Med 2010. PubMed
Naylor R, et al. European Society for Vascular Surgery (ESVS) 2023 Clinical Practice Guidelines on the Management of Atherosclerotic Carotid and Vertebral Artery Disease. Eur J Vasc Endovasc Surg 2023. PubMed