プラークとは頚動脈内に限局的に突出した病変のことで、
- 高血圧症
- 高脂血症
- 糖尿病
- 喫煙
- 加齢
などのリスク要因が増えることで生じます。
このプラークが増加してくると、血液が流れる部分が狭くなっていき、また脳への血流が途絶えてしまうと脳梗塞を引き起こします。
それではこのプラーク、どのように治療するのでしょうか?
また、治療に際してのメリットやデメリットは?
そこで今回は、
- 頸動脈プラークの治療法は?メリットやデメリットは?
- 狭窄率はどれくらいで治療の対象になるの?
- 何科を受診するの?
- 頸動脈のプラークの種類は?
- エコーの輝度によってプラークを診断できるの?
以上について解説していきます。
頸動脈プラークの治療法は?
頸動脈とは脳に向かう大事な血管であり、この血管の血流が途絶えてしまうと脳梗塞を引き起こします。
頸動脈は頭側に向かって途中で二つに分かれ、それぞれ内頸動脈と外頸動脈と呼ばれますが、このうち、内頸動脈が脳に血液を供給する血管でとなり大変重要な働きをしています。
内頸動脈にプラークが認められる場合、内頸動脈はあまり太くないので血管の中身が塞がってしまうと血液は流れなくなりますから、脳に十分な血液が供給されなくなり脳梗塞などを引き起こす可能性があるのです。
また、プラークの一部が欠け血流に乗って脳の細かな血管に詰まってしまう場合でも、脳梗塞を起こしてしまうことがあります。
検査で異常値が認められた場合は、動脈硬化が進んだ事によるプラークの形成と血管の狭窄が原因となります。
- 内科的治療
- 頸動脈内膜剥離術(CEA)
- 頸動脈ステント留置術(CAS)
それでは、上記の治療法を詳しく説明していきます。
内科的治療
脳梗塞を起こす主な原因は、頸動脈狭窄部で出来た血栓が血管を詰まらせることですので、血栓が出来ないように抗血小板薬や抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬剤)の点滴や内服治療、管理も行ないます。
アスピリン製剤や、クロピドグレルには、血小板の働きを抑えて血液が固まるのを防ぐ抗血小板作用があり、服用を継続することで脳梗塞、心筋梗塞といった循環器疾患の予防効果が期待できます。
頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)
全身麻酔をかけた後に頸部の皮膚を切開し、頸動脈に到達します。動脈を切開して、手術用顕微鏡で確認しながら、動脈を狭くしている原因であるプラークを除去する手術です。
内頚動脈をクリップで留めて血流を完全に遮断し、血管を開いてすべてのプラークを除去します。
手術に要する時間は、約2~3時間ほどです。
メリット
- 病変を確実に除去できるため、頸動脈狭窄症に対するもっとも標準的で確実な治療法。
- 手術前後の投薬管理の負担が少なく(抗血小板剤を術前に1剤)、術後はそのまま継続、あるいは病変が片側なら中止も可能。
- 保険点数=29250点と低く経済的・精神的負担が少ない。
デメリット
- 総頚動脈が内頚動脈と外頸動脈のふたつに分岐している部分のすぐ近くには舌の神経があるため、その神経に触れてしまうと、一時的に麻痺が生じたり、舌が曲がってしまうなどの合併症が起こる危険性がある。
- 全身麻酔が可能でなければ手術は適用ならない。
- 反対側の頸動脈高度狭窄、病変部が著しく高位、高齢者、心疾患合併症、頸動脈血栓内膜剥離術後再狭窄、放射線治療後、大動脈炎症候群、はこの手術を行なう場合の高危険群と考えられる。
- 再狭窄が10 %程起こる例が報告されており、経過観察が必となる。
- 前頸部に創部痕を残すが、傷跡は時間と共に目立たなくなって行く。
頸動脈ステント留置術(CAS)
局所麻酔下に、足の付け根の血管(大腿動脈)からカテーテルを誘導して、血管の中から狭窄部位をカテーテルの先についた風船で広げ再び狭窄しないようにする治療です。
頚動脈の狭窄部分ステントと呼ばれる金属性の網状の筒を留置して、血管を拡張させ、プラークを壁に押しつけ安定させる方法で、こうすることで、良好な血行を確保することが可能となります。
治療時間は通常2時間ほどです。
メリット
- 内膜剥離術と比較して体の負担が少なく、高齢者や色々な合併症を持った患者でも行なえる。
- 術後の安静期間や入院期間も短い。
デメリット
- 例えアンジオガードフィルターを使用していても血管拡張時にコレステロールの破片や血栓が脳内に流れていって脳梗塞を生じる危険性があり、 この場合、半身麻痺や言語障害などの後遺症を残すこともある。
- 発生率は低いが、血管拡張後に脳内への血流量が多くなりすぎて、脳出血を起こすこともある。
- 抗血小板薬の内服を継続しなくてはならず、特に術後数ヶ月は多く飲まなければならないため出血リスクが高まる。
- 保険点数=33150点となり、頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)に比べて高くなる。
狭窄率はどれくらいで治療の対象になるの?
上記の治療法を決める上で重要なのは、狭窄率で、症状の有無と狭窄率および手術の危険性により決まります。
血管造影での狭窄率から30-49%を軽度、50%~69%を中等度、70%以上を高度とするものが一般的です。
無症状で狭窄度が60 %未満、もしくは症状有りで狭窄度が50 %未満の場合
→手術的治療は奨励されず、動脈硬化の治療を行い、抗血小板剤を内服することになる。
無症状で狭窄度が60 %以上、もしくは症状有りで狭窄度が50 %以上の場合
→まずは動脈硬化の治療を行い、抗血小板剤を内服し、その後に手術的治療がすすめられる。
症状があり、狭窄度が50 %以上だが、手術の危険性が高い場合
→まずは動脈硬化の治療を行い、抗血小板剤を内服し、その後に頸動脈ステント留置術がすすめられる。
無症状で狭窄度が80 %以上だが、手術の危険性が高い場合
→まずは動脈硬化の治療を行い、抗血小板剤を内服し、その後に頸動脈ステント留置術がすすめられる。
頚部頚動脈狭窄の治療は、狭窄率の少ないものに関しては禁煙や生活習慣の改善が第一ですが、狭窄率がある程度以上になると一定の割合で脳梗塞を生じるため治療適応となります。
頸動脈にプラークが見つかった場合、何科を受診するの?
動脈硬化は血管の病気ですから循環器内科や心臓血管外科といった診療科で扱っている病気です。
これらの医療機関以外でも基本的な検査を行っているクリニックなどもあり限定されていませんので、事前にチェックする事をおすすめします。
頸動脈狭窄症で脳梗塞を起こしたり、頸動脈狭窄症と診断された場合は、脳卒中が専門の神経内科医や脳神経外科医に相談して下さい。
頸動脈プラークの種類は?
- 脳梗塞を起こす危険の高い=「不安定」プラーク
- 危険の低い=「安定」プラーク
狭窄の程度が同じでも、プラーク内に脂質成分や出血が多い「不安定」プラークは、脳梗塞を発症する危険が高いので、積極的な治療が必要です。
頸動脈プラークの存在診断は頸部エコー検査で十分とされていますが、質的診断,特に不安定プラークかどうかの評価に超音波,CT,MRIのいずれが最適かということについては,いまだ十分に検証されていません。
エコーの輝度によってプラークを診断できるの?
- 低輝度(echolucent, hypoechoic)
- 等輝度(echogenic, isoechoic)
- 高輝度(calcified, hyperechoic)
低輝度はB-mode のみで見えにくいもの、等輝度は筋肉や内中膜の輝度に近いもの、高輝度は骨の輝度に近いものとされていますが、実際に検査する者により評価が異なることも多いために注意が必要となります。
エコー輝度と病理組織との関連は、以下と対応しているとされています。
- 低輝度→血栓や粥腫
- 等輝度→繊維性組織
- 高輝度→石灰化
頸部エコー検査における不安定プラークとは?
頸部エコー検査における不安定プラークとは、
- 低輝度プラーク
- 潰瘍を形成(2mmを超える陥凹)しているプラーク
- 可動性を有するプラーク
であり、脳梗塞発症の高リスク状態とされます。
症例 70歳代女性 脳梗塞発症
右の総頚動脈に低輝度のプラーク形成を認めています。
プラーク内には2,2mm(>2mm)の潰瘍を認めており、不安定プラークと診断できます。
なお、プラーク内部のエコー性状の診断は臨床的にも重要ですが、小さなプラーク(プラーク厚が2mm未満で潰瘍形成を伴わないプラーク)はエコー輝度による分類が困難な場合が多くいため、プラークのエコー輝度による分類は必要ないと考えられています。
また、大きなプラークは通常不均一なことが多く、これらの病変が入り交じった複合病変であることが多いとされます。
輝度の評価は現在定性的な評価であるため検者による誤差が大きく、定量的な評価も試みられています。
まとめ
- プラークや狭窄が見られる場合の治療方法には、内科的治療・頸動脈内膜剥離術・頸動脈ステント留置術がある。
- 頸動脈内膜剥離術とは、動脈を切開して、手術用顕微鏡で確認しながら、動脈を狭くしている原因であるプラークを除去する手術である。
- 頸動脈ステント留置術とは、局所麻酔下に、足の付け根の血管(大腿動脈)からカテーテルを誘導して、血管の中から狭窄部位をカテーテルの先についた風船で広げ再び狭窄しないようにする治療である。
- 治療法を決める上で重要なのは、狭窄率で、症状の有無と狭窄率および手術の危険性により決まる。
- 頸動脈にプラークが見つかった場合は、脳血管内科や神経内科、循環器科などを受診するとよい。
- プラークには、脳梗塞を起こす危険の高い=「不安定」と危険の低い=「安定」プラークの2種類がある。
- エコー輝度は、低輝度(echolucent, hypoechoic)等輝度(echogenic, isoechoic)高輝度(calcified, hyperechoic)の3郡に分かれる。
脳卒中は日本人の死亡原因のトップ3に入っており、多くの方が罹りうる病気です。この病気は、くも膜下出血や脳内出血のように血管からの出血による場合もあれば、脳梗塞に代表されるように脳の血管が詰まる場合もあります。
近年、頸動脈エコー検査などで、症状がないのに、頸動脈の狭窄や脳動脈瘤が発見される患者さんが増えていますので、リスク要因のある方は積極的に検査を受けることをおすすめします。