
頸部(頚部:けいぶ)にはたくさんのリンパ節があります。
そのリンパ節は、
- 感染などの良性病変
- 癌など悪性病変
など様々な原因で腫れる(腫大する)ことがあります。
その場合、気になるのは
「その頸部のリンパ節の腫れ(腫大)が、悪性の場合はどのような時か?」
ということです。
そこで今回は、頸部リンパ節転移(悪性)を疑うのは
- どのようなリンパ節なのか?
- どのような時なのか?
- そのためにはどのような検査をするのか?
ということについてまとめました。
- 頸部リンパ節の腫れの多くは、かぜや歯・のどの感染などによる良性(反応性)の腫れです。
- 画像検査で転移を疑う大きさの目安は、短径(いちばん短い径)で10mm以上、上内深頸リンパ節だけは11mm以上です(施設や測定法で多少異なります)。
- ただし大きさだけでは決められません。形、内部の壊死、年齢、感染源の有無、既往歴、採血を合わせて考えます。
- 良性か悪性かを最終的に決めるのは組織を調べる検査(生検)です。
- 硬くて動かない、だんだん大きくなる、数週間たっても小さくならないといった場合は、早めに医療機関で相談しましょう。
頸部リンパ節転移を疑うのはどんな時?
頸部のリンパ節の腫れが悪性である癌のリンパ節転移によるものであると判断するには、
- リンパ節の性状
- リンパ節以外の要素
をチェックする必要があります。
リンパ節のサイズは?
それが、
- 顎下リンパ節
- 上内深頸リンパ節
の2つです。
これらはMRIの画像検査で輪切りにした頸部(下顎骨レベル)で下のような位置関係になります。
顎下腺を挟んで前が顎下リンパ節で、後ろが上内深頸リンパ節が存在する領域となります。

ここが腫れやすい理由はリンパの流れの影響で、頸部や口、喉などから最初に流れ着くリンパ節であるからです。
腫れる頻度が高いだけでなく、通常よりも腫れの程度が大きいことがありますので、
特に、上内深頸リンパ節だけは癌(がん)のリンパ節転移を疑う基準が
- 短径11mm以上 (van den Brekel 1990, Radiology 177:379-384)
とされています。
この基準は、頭頸部がんで手術を受けた患者さんのリンパ節を、画像と手術標本で比べた研究にもとづくものです。基準値は施設や測定法で多少異なり、超えたら悪性と決まる、という意味ではありません。
リンパ節の形は?
感染などに伴う反応性のリンパ節腫大は、皮質に存在する胚中心の数や大きさが増えますが、リンパ門は保たれる傾向があります。
また、リンパ節周囲の脂肪濃度の上昇があれば、反応性であるリンパ節炎の可能性がより高くなります。
(特に小児や若い人の場合、川崎病や菊池病の可能性があります。)
一方でリンパ門が消失し、大きな球形となったり、辺縁が不整で被膜の外に浸潤するような形がある場合、腫大したリンパ節は転移の可能性がより高くなると考えられています(Hoang 2013)。
MRIで調べた研究(de Bondt 2009)では、大きさだけで判断するよりも、辺縁の不整や内部の信号の不均一さを組み合わせたほうが転移の検出精度が上がっています。なお、形そのものの価値は研究によって評価が分かれます(van den Brekel 1990では、形は有用な基準ではないとされました)。
リンパ節内の壊死がある場合は?
リンパ節が腫大する場合に内部に壊死を伴うことがあります。
これは、画像検査では、液貯留を示唆する
- CTでは低吸収域(黒くなる)
- MRIではT2強調像で高信号域(白くなる)
となります。
このような壊死を疑う所見を見た場合、炎症の場合と、腫瘍の転移の両方の可能性があります。
- 炎症→化膿性(細菌性)、結核性、組織球壊死性 などのリンパ節炎
- 腫瘍→扁平上皮癌 などのリンパ節転移
ですので、この所見があるから良性、悪性と決めることはできません。
頭頸部がんの患者さんを調べた1990年の研究では、3mm以上の壊死は腫瘍のあるリンパ節でだけ見つかり、転移が確認された頸部郭清(リンパ節を取る手術)の標本の約7割(74%)にみられました(van den Brekel 1990)。壊死は転移を疑う重要な手がかりですが、結核や細菌感染でも似た像になるため、他の所見と合わせて判断します。
リンパ節の性状以外で重要な事は?
リンパ節の腫れ(腫大)がある場合、上に挙げたようなリンパ節の性状を組み合わせることで良悪性の鑑別の精度が上がると報告されています(de Bondt 2009, Eur Radiol 19:626-633)。
一方で、リンパ節の性状以外で重要な事に、
- 年齢
- 感染源の有無
- 既往歴
- 採血データ
をチェックする事が重要です。
年齢
小児はリンパ節が腫れやすく、同じサイズでも高齢者に比べて反応性の腫大(良性の腫大)の事が多いです。
感染源の有無
感染に反応性して腫大する場合は、良性の腫大といえます。
ですので、リンパ節の腫れ(腫大)がある場合、頭頸部を中心にどこかに感染源がないかをチェックします。
具体的には、
- 歯性感染症
- 扁桃炎
- 咽頭炎
- 副鼻腔炎
などが挙げられます。
喉の風邪(感染症)といわれる咽頭炎に続いて、頸部のリンパ節が腫れることはよくあることです。
既往歴
癌になり治療を受けたことがあれば、その再発としてリンパ節転移が出てきた可能性があります。
採血データ
CRPやプロカルシトニンなどの炎症反応や、白血球数などを参考に感染の可能性が高いかどうかや、腫瘍マーカーをチェックして上昇の有無をチェックすることで、良悪性の鑑別に役立てることができます。

頸部リンパ節はどうやって観察する?
頸部リンパ節が腫れている時に、その大きさや性状が重要であることは上に述べた通りです。
- 触診
- 頸部エコー検査(超音波検査)
- CT
- MRI
といった方法があります。触診の場合は内部の性状はわかりませんし、大きさを測ることも困難です。
ですので、エコーやCT、MRIといった画像検査を行うことになります。
頭頸部の癌(扁平上皮癌)のリンパ節転移の評価には、造影CTとMRIがよく使われ、状況に応じて使い分けられます。エコーは首のリンパ節を手軽に観察でき、必要に応じて針で細胞を採る検査(穿刺吸引細胞診)にも使われます。

上の画像は、MRIのT2強調像で撮影したものです。リンパ節の存在がわかります。
この例は正常例でリンパ節腫大は認めません。

首の腫れの原因が甲状腺のこともあります。くわしくは、甲状腺の腫れの原因は?セルフチェックの方法と何科を受診するか・検査の流れで解説しています。
首を観察するエコー検査については、甲状腺エコー検査(超音波検査)とは?わかる病気と正常値、検査の流れで解説しています。
こんなときは受診を:受診の目安
次のような場合は、様子を見すぎずに医療機関(まずは内科か耳鼻咽喉科)で相談しましょう。
| 良性(反応性)を考えやすい | 悪性などを含め詳しい検査が必要なことが多い |
| かぜ、のどの痛み、歯の痛みのあとに腫れた | はっきりした感染源がないのに腫れている |
| 押すと痛みがあり、柔らかく動く | 硬く、周囲と癒着して動きにくい |
| 感染が治ると小さくなる | 数週間たっても小さくならない、またはだんだん大きくなる |
| 左右が同じように腫れている | 片側だけが目立つ、以前にがんの治療を受けた |
この表はあくまで目安で、痛みの有無だけで良性・悪性は決められません。発熱が続く、体重が減る、寝汗がひどいなどがある場合も早めに受診してください。
よくある疑問
Q. 痛くない腫れは悪性ですか?
痛みがないからといって悪性とは限りません。逆に、痛みがあるから安全とも言い切れません。大きさ、硬さ、経過を含めて判断します。
Q. 何科に行けばよいですか?
まずは内科か耳鼻咽喉科で相談できます。必要に応じてエコー、CT、MRI、生検のできる施設を紹介してもらえます。
Q. 画像検査で「反応性」と言われたら安心ですか?
反応性と判断された場合は、経過をみながら小さくなるかを確認するのが一般的です。小さくならない、むしろ大きくなる場合は、再度検査をすることがあります。
最後に
頸部のリンパ節の腫れは様々な要素を総合的に考えて、良性なのか悪性なのかを診断します。
最終的には、そのリンパ節を生検してきて組織を見なければ良性悪性と断定することはできません。
小児の場合は、しばしば腫れやすいので年齢を考慮することは重要です。
また、左右が同じように腫れている場合は、ウイルスなどの感染による良性のリンパ節炎のことが多いとされますが、それだけで判断はできません。
また、急にリンパ節が腫れて痛みがある場合も、感染症など良性の腫大のことが多いです。
ただし様々な要素を考慮する必要がありますので注意が必要です。頸部のリンパ節の腫れが気になる場合はまずは内科を受診しましょう。
参考文献
- van den Brekel MW, et al. Cervical lymph node metastasis: assessment of radiologic criteria. Radiology 1990. PubMed
- de Bondt RB, et al. Morphological MRI criteria improve the detection of lymph node metastases in head and neck squamous cell carcinoma. Eur Radiol 2009. PubMed
- Hoang JK, et al. Evaluation of cervical lymph nodes in head and neck cancer with CT and MRI: tips, traps, and a systematic approach. AJR 2013. PubMed





