「尿沈渣で赤血球に陽性が出て不安・・・。どんな病気が考えられるのでしょうか。」
今回はそんな疑問にお答えするべく、尿沈渣に含まれる赤血球についてまとめました。
尿沈渣では尿を遠心分離機にかけて、細胞を顕微鏡で見て診断するのですが、これを行うと尿の詳しい成分が解るようになるのです。
尿に含まれる赤血球でどのようなことが解るのでしょうか?
今回は尿沈渣における赤血球について
- 尿沈渣での赤血球の基準値
- 赤血球の基準値が高い場合はどうなる?
- 赤血球が多い場合に考えられる病気
これらについて徹底的にまとめました。
尿沈渣で赤血球が多い!基準値は?
赤血球の正常値というのは、どれくらいなんでしょうか。
ちなみに赤血球の基準値は、
- 1視野5個以内が正常値の範囲
- 1視野5個以上になると異常
ということになります。
1視野というのは、顕微鏡で400倍に拡大して見える範囲ということです。
この単位をHPF(high power field)といいます。
検査結果では「赤血球:5個/HPF」という感じになり、400倍に拡大した視野の中で赤血球が5つあるという意味です。
では次に、赤血球が基準値より高い場合について見ていきましょう。
赤血球が基準値よりも高い場合は?
先ほど述べたように、1視野5個以上になると異常となります。
となると、次のような声を耳にします。
「尿沈渣で赤血球が5-9で、基準値より高いので心配です。」
検査結果で赤血球5-9個であっても、トイレで強く拭きすぎただけでも赤血球がでる場合もありますし、そのように一過性の場合もあるため異常なしと言われることもあります。
また赤血球が10-19でも同様に一過性のものである可能性があります。
尿沈渣の再検査は?
尿沈渣で赤血球が多い場合は、2〜3ヶ月ごとに検査をし、経過観察をしていきます。
その上で、また基準値を上回るようであれば疾患を疑います。
その場合は、赤血球の形態などの観察をし、何が原因かを探っていきます。
では次に、尿沈渣の赤血球が多い場合に考えられる病気についてみていきましょう。
赤血球が多い場合に考えられる原因や病気は?
- 腎臓の疾患がある場合
- 泌尿器の疾患がある場合
- 月経が終わって間もない、または始まりかけていた
などの原因が考えられます。
- 腎臓に疾患がある場合
- 泌尿器系の疾患がある場合
- 腎・尿路以外の疾患
部位別に分けてまとめてみました。
それぞれについて可能性のある病気についてみていきましょう。
腎臓の疾患がある場合
腎臓の疾患がある場合は以下の病気の可能性があります。
- 糸球体腎炎
- 急速進行性腎炎
- IgA腎症
- 紫斑病性腎炎
- 膜性増殖性糸球体腎炎
- 遺伝性腎炎
- 良性反復性血尿
- 溶血尿毒症症候群
- 間質性腎炎
- 腎盂腎炎
- ループス腎炎
- Goodpasture症候群
- 強皮症
- Wegner肉芽腫
- 結節性動脈周囲炎
- 悪性腎硬化症
- 薬物性腎障害
次に、泌尿器系の疾患についてみていきましょう。
泌尿器系の疾患がある場合
- 腎・尿路結石
- 膀胱炎
- 尿道炎
- 前立腺炎
- 前立腺肥大症
- 前立腺癌
- 尿路憩室
- 泌尿器科外傷
- 泌尿器系腫瘍
- 尿路異物
- ナッツクラッカー(Nutcracker)現象
- 腎膿疱性疾患
- 遊走腎
- 腎梗塞
- 水腎症
- 腎・膀胱結核
- 突発性腎出血
- 動脈瘤
- 静脈瘤
- 動静脈瘤
この他腎臓や尿路以外の疾患でも、赤血球で陽性が出る場合があります。
次で見てみましょう。
腎・尿路外疾患
腎臓や尿路以外の疾患は以下になります。
- 血友病
- 白血病
- 敗血症
- 紫斑病
- 直腸・大腸腫瘍
病名を見ていると怖くなってしまいますが、上記でも述べたように、赤血球が多い場合でも疾患が原因ではないこともありますので、まずは再検査をして結果を待ちましょう。
参考文献
- 尿沈渣ガイドブック 東海大学出版会 p130-134
- 最新 尿検査 その知識と病態の考え方 第2版 p82-83
まとめ
- 尿沈渣での赤血球の正常範囲は1視野5個以内である
- 赤血球が多かった場合は再検査や経過観察となる
- 月経などでも赤血球が出る場合もある
- 赤血球増加から考えられる疾患は主に腎臓・泌尿器系の疾患である
- 腎臓・泌尿器系以外の疾患の場合もある
今回は尿沈渣についてのお話しでした。
尿は、自分の体の状態を知る大切な手がかりです。
尿で食生活から疾患まで、すべてわかります。
赤血球で異常が出ても、一過性の場合も多いので、再検査で様子をみましょう。