赤ちゃんから高齢者まで行える、体に負担のない検査として、尿検査があります。

この尿検査で分かる項目はたくさんありますが、その中でも尿アルブミン(尿Alb)をご存知でしょうか?

今回は、この尿アルブミン(英語表記で「urine albumin」)について

  • 基準値
  • 検査方法
  • 異常な場合

などを説明したいと思います。


尿アルブミン(尿Alb)とは?

血清に含まれる蛋白質は、たくさんありますが、その中でも主となるのが

  • アルブミン
  • グロブリン

で、人の血中には、約40,000mg/Lのアルブミンが存在します。

しかし、尿中には10〜20mg/L程度で、ごく微量しか排泄されません。

通常行われる尿蛋白試験紙では検出できないほどの微量のアルブミンは、マイクロアルブミン(英語表記で「microalbumin」)とも呼ばれています。

アルブミンが低下するのはどんなとき?

アルブミンは肝臓で作られますが、

  • 肝障害・・・(アルブミンの生産が減少)
  • 腎障害・・・(アルブミンが流れ出す)

などがあると、アルブミンとグロブリン比が低下してしまいます。

albumin

尿アルブミンは糖尿病腎症の指標として有用

尿アルブミンの変動は複雑なため、解明されてないことも多くありますが、糖尿病の腎症(糖尿病の合併症で、知らない間に腎症は進み、進行すると人工透析が必要になる)の指標として特に有用とされています。

尿アルブミンの基準値は?

尿アルブミンの測定は、尿の量による変動があるため、尿クレアチニン(Cr)lgあたりに変換した相対濃度として表現されます。

この尿中アルブミンの基準値を測る検査として、随時尿24時間尿とがあり

  • 随時尿→10mg/g・Cr以下
  • 24時間尿→2〜20mg/day

が基準値とされています。

また、旭川医科大学において、成人150名を対象とした検査で、

  • 平均6.3mg/L(1.25〜36.1mg/L)
  • 平均5.1mg/gCr(1.32〜19.3mg/gCr)

が基準値とされた結果があります。

尿アルブミンの検査方法は?

定性法定量法とがあります。

それぞれ分けて、説明します。

定性法

pH指示薬の誤差減少を利用した色素法で、色素を変換することによってアルブミンに対する感度を約10倍までに増強します。

しかし、濃縮の程度により左右されるため、クレアチニンを同時に測定して補正する方法が一般的です。

定量法

アルブミン検査としては、この定量検査がごく少ない量でも検出できるため有用です。

抗原体反応によって形成される免疫複合体濁度を測定する方法で、尿とラテックス液とをよく混ぜ合わせ、尿中にあるアルブミンがラテックスとつながることによって凝集する仕組みで、アルブミンの量が多ければ、凝集量が増え濁度が増加します。

そこに光を照射し、散乱光・透過光などを検知器で測定することになります。

尿アルブミンが異常な場合に考えられる病気は?

糖尿病の腎症の経過観察の他にも、

  • 糸球体腎炎
  • ネフローゼ症候群
  • ループス腎炎
  • 腎硬化症
  • 肝硬変
  • 慢性肝炎
  • 肝臓がん
  • 蛋白質漏出性胃腸炎
  • 多発性骨髄腫
  • 悪性腫瘍

などで陽性になることがあります。

特に腎臓の慢性の病気(慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease))を早期に発見できるという点で注目されています。

第二期糖尿病腎症の診断に用いられる

糖尿病患者で尿蛋白が(−)あるいは陽性(1+)で、

  • 尿中アルブミン値が30〜299mg/gCr(3回測定中2回以上)

となると、第二期糖尿病腎症と診断されます。(日本糖尿病学会 腎臓学会合同委員会による糖尿病腎症の早期診断基準2005より)

参考文献:今日の臨床検査 2011ー2012 P205・206
参考文献:最新 尿検査 その知識と病態の考え方 第2版P50〜53
参考文献:最新 検査のすべてP110
参考文献:新版 検査と数値を知る事典P150
参考文献:よくわかる検査数値の基本としくみP118・119

最後に

尿アルブミンについてまとめました。

  • アルブミンは蛋白質の一種
  • 腎臓の病気をより早い段階で発見するための検査
  • 随時尿→10mg/g・Cr以下・24時間尿→2〜20mg/dayが基準値となる
  • 糖尿病の腎症の指標として特に有用
  • 定量検査が一般的

 

腎臓は2つあるため、多少の機能低下障害が起こっても、自覚症状がないため、気づいた時には病気が進行していることも多くあります。

そのため、この尿アルブミン検査は、患者に負担を与えることなく手軽に行える検査として、異常の早期発見にもなり有用というわけです。




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