肝膿瘍とは?原因・症状・CT所見・治療と受診の目安をCT画像で解説

肝臓に膿(うみ)が溜まる病気を肝膿瘍と(読み方は「かんのうよう」、英語ではhepatic abscess)といいます。

  • 本来膿が溜まらない肝臓にどのような原因で膿が溜まるのか?
  • 症状にはどのようなものがあるのか?
  • どのように診断して、治療はどうするのか?
  • 看護はどういったことを気をつければ良いのか?

など気になるところです。

今回は、そんな肝膿瘍についてイラストと実際のCT画像を用いて、まとめました。

先に結論

  • 肝膿瘍は、肝臓に膿がたまる病気で、発熱と右上腹部痛が代表的な症状です。放置すると重症化します。
  • 原因は、細菌によるものが大半で、胆道の感染(胆管炎など)や腸の炎症から広がることが多いです。アメーバによる肝膿瘍もあります。
  • 診断は、血液検査と、エコー・造影CTで行い、膿瘍の内容を調べて原因菌を確かめます。
  • 治療は抗菌薬が基本で、大きい膿瘍などでは針やチューブでのドレナージを行います。アメーバ性は専用の薬を使います。
  • 糖尿病やステロイド使用など、免疫が落ちている人は特にリスクが高くなります。

肝膿瘍の原因は?

liver abscess figure1

まず、膿が細菌により作られるのか、細菌以外により作られるのかに分けられますが、日本では細菌感染が原因のことが大半です。アメーバ性は、流行地や特定の感染経路の人で目立ちます。

細菌以外(非細菌性)のものでは、赤痢アメーバや真菌が原因となります。

細菌性(化膿性)肝膿瘍とは?

大腸菌をはじめとするグラム陰性桿菌が多く、近年はアジアを中心に肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)によるものの増加も報告されています。

感染経路は、胆道系(胆石、胆管炎など)が最も多いとされます。

つまり、胆道を逆行性に細菌が這い上がってくるイメージですね。

liver abscess figure3

非細菌性肝膿瘍とは?

細菌以外ですので、真菌、原虫などが原因になりますが、最も有名なのは、赤痢アメーバによるアメーバ性肝膿瘍です。

このアメーバ性肝膿瘍は

  • 経口感染(汚染された水・食べ物)のほか、性的接触(男性同士を含む)で感染する性感染症としての国内例も報告されています
  • 海外渡航歴や、HIV感染などがある人にも多い
  • 経門脈性に感染することが多い

という特徴があります。

liver abscess4

原因となる胆石や胆道の位置については、【CT画像あり】胆嚢の場所を図と共に解説!胆石などで痛みが出るのはどこ?で図を使って解説しています。

肝膿瘍の特徴は?

肝臓のどちらにできやすいとかありますか?
右葉に多いとされます。

liver abscess figure2

また、一部(報告では約2割)では多発します。

liver abscess figure4

どんな人が肝膿瘍のリスク?

免疫抑制状態の人は、健常人よりも肝膿瘍のリスクが高くなります。

免疫抑制状態とは、

  • 糖尿病
  • ステロイドを使っている人
  • 化学療法(抗がん剤)を使っている人

などが該当します。

局所のリスクしては、胆管に狭窄があったり、肝腫瘍に対する動脈塞栓後の人に多いとされます。

感染経路は?

先ほど申し上げた

  • 経胆道性
  • 経門脈性

が多いですが、経動脈性に感染することもあります。

経胆道性の肝膿瘍の特徴は?

上に述べたように、最も細菌性に多く、胆管炎に続発するのが特徴です。

経門脈性の肝膿瘍の特徴は?

こちらも上に述べたように、アメーバ性が有名です。

経口感染後、大腸から経門脈性に肝膿瘍形成するのがアメーバの特徴です。

アメーバ以外にも、門脈領域の炎症性疾患が門脈に乗ってきて、膿瘍を作ります。

炎症性疾患とは、

  • 虫垂炎
  • 憩室炎
  • 直腸肛門周囲膿瘍

などが含まれます。

また炎症以外では、大腸癌に合併することがあるので注意が必要です。

肝膿瘍がある場合、原因の検索が重要となります。

 

肝膿瘍の症状は?

肝膿瘍の症状には、

  • 発熱
  • 上腹部痛
  • 肝腫大
  • 食欲不振
  • 全身倦怠感

などの症状があります。

肝膿瘍に特徴的な症状というのはないのですね。
そうですね。
採血結果や画像診断が非常に重要となります。

発熱で入院している男性と看護師

肝膿瘍の画像診断は?

まず用いられるべきは、超音波検査(エコー)です。

その次にCT、MRIとさらに精密検査がなされていきます。

造影CTやMRIでは、辺縁がリング状に造影される単房性あるいは多房性の液体貯留が典型的です。

さらに詳しく見てみると次のような特徴があります。

  • 一部で多発する
  • 細菌性、アメーバともに右葉に多い
  • 単純CTで、低吸収域の周囲に淡い低吸収を認める。境界は不明瞭なことが多い
  • 造影でリング状に辺縁に造影効果を認める
  • このリングの外側に反応性浮腫を認め、double target signと呼ばれる(見られる頻度は報告により幅があります)

造影剤を用いたダイナミック検査で動脈相(早期相)と平衡相で異なった造影パターンを示します。

典型的な症例を提示します。
症例 50歳代 男性

hepatic abscess CT findings2

肝臓右葉の肝区域S6/7に液貯留を認めています。

動脈相においてはこのように膿瘍腔(低吸収=黒)の周りに膿瘍の壁(高吸収=白)、反応性浮腫(低吸収=黒)、区域性濃染(高吸収=白)の造影パターンを示します。

hepatic abscess CT findings3

平衡相では膿瘍壁と反応性浮腫がまだらな低吸収となります。

典型的な肝膿瘍の所見です。
症例 30歳代 男性 発熱、腹痛

hepatic abscess CT findings1

こちらも先ほどのの症例と同じような造影パターンを示します。

先ほどよりもやや分葉状構造を示しています。

肝膿瘍を疑う所見です。

肝臓の位置をCT画像で確かめたい方は、肝臓の場所はどこ?右上腹部の位置を図とCT画像で解説をご覧ください。

肝膿瘍の治療は?

細菌が原因の肝膿瘍には抗菌薬が、アメーバ性にはメトロニダゾール(フラジール®︎)が投与されます。

サイズが大きかったり、抗菌薬だけでは改善しにくいものには、エコー下にドレナージ術が施行されます(大きさの目安は医療機関の判断によります)。細菌性の肝膿瘍では、抗菌薬と経皮的ドレナージの組み合わせが治療の基本とされています(Roediger 2020)。アメーバ性ではドレナージが必要になるのは一部です。

また肝臓外に破裂した場合には外科的手術が行われることもあります。

drainage of hepatic abscess

メトロニダゾール内服中の注意点は?

治療薬として使われるメトロニダゾール服用中は、飲酒を避けるよう指示されます。アルコールとの併用で、顔のほてり、吐き気、動悸などの「ジスルフィラム様反応」が出る可能性があるためです。ただし、その頻度や重さには不明な点もあるとされています(Fjeld 2014、Mergenhagen 2020)。患者さんに理由を説明し、指示された期間は飲酒を控えてもらうことが大切です。

肝膿瘍のドレナージ術の合併症は?

肝臓内の膿瘍に針を刺して、ドレナージチューブを留置します。

次のような合併症が起こることがあります。
  • 隣接する臓器損傷(大血管損傷、消化管穿孔など)
  • 膿汁の腹腔内への漏出、それによる腹膜炎
  • 菌血症
  • 気胸
  • 出血

肝膿瘍のドレナージ術の看護のポイントは?

PTCDにおけるポイントとほぼ同様です。

術後の注意点として、肝膿瘍の場合は、出てくる液体が膿汁ですので、固形成分や泥状成分を含みます。

そのため胆汁を外に出すPTCDに比べて、詰まりやすくチューブの毎日のこまめな洗浄が重要となります。

チューブ留置中は、廃液量、性状を記録し、急に量が少なくなったり多くなったりした場合は速やかな報告が重要です。

肝膿瘍の治療期間は?

  • 細菌性では平均49日
  • 非細菌性であるアメーバ性では平均58日

を要したと報告されています(日本の限られた施設の報告で、入院期間や治療期間は個人差が大きいです)。(肝臓49巻3号101-107,2008)

肝膿瘍の死亡率は?

肝膿瘍の原因が細菌性の場合、敗血症性ショック、DIC などにより死亡した症例が14%と報告されています(同じ報告の数字で、時代・施設・患者さんの背景で異なります)。海外のまとめでも、細菌性の死亡率は約15%に達するとされ、患者さんの全身状態や原因の治療が影響します(Lardière-Deguelte 2015)。(肝臓49巻3号101-107,2008)

肝膿瘍の治療ガイドラインは?

肝膿瘍だけを専門に扱った国内の診療ガイドラインは、今回の調査では確認できませんでした。国際的には、腹腔内感染症の指針や総説(Lardière-Deguelte 2015、Roediger 2020)が参考にされています。治療方針は、担当医が原因や全身状態をみて決めます。

細菌性とアメーバ性の肝膿瘍の比較表

参考文献:パッと引けてしっかり使える 消化器看護ポケット事典[第2版]  P144

受診の目安

  • 発熱が続き、右の上腹部や背中に痛みがある
  • 悪寒・震えを伴う高熱、意識がぼんやりする、血圧が下がってふらつく(救急受診)
  • 胆石・胆管炎、糖尿病、免疫抑制薬などの持病があり、発熱が続く

よくある疑問

Q. 肝膿瘍は人にうつりますか?

細菌性は、人から人へうつる病気ではありません。アメーバ性は原因の寄生虫が便などを介して広がるため、手洗いなどの衛生面が重要です。気になる場合は医師に相談してください。

Q. 肝臓の血液検査でわかりますか?

AST・ALTなどの肝機能や炎症反応(CRPなど)が上がることがありますが、肝膿瘍に特異的な数値はありません。エコーやCTで確認します。

Q. 治療後に再発しますか?

原因となった病気(胆道の病気、腸の炎症など)が残っていると再発することがあります。原因の治療と、治療後の画像の確認が大切です。

発熱や腹痛が続くときは、早めに医療機関を受診してください。

参考文献(追加分)

  • Lardière-Deguelte S, et al. J Visc Surg 2015(肝膿瘍の診断と治療) PubMed
  • Roediger R, Lisker-Melman M. Gastroenterol Clin North Am 2020(細菌性・アメーバ性肝膿瘍) PubMed
  • Kawashima A, et al. Glob Health Med 2023(性感染症としてのアメーバ症) PubMed
  • Fjeld H. Tidsskr Nor Laegeforen 2014(メトロニダゾールとアルコール) PubMed
  • Mergenhagen KA, et al. Antimicrob Agents Chemother 2020(アルコールと抗菌薬の相互作用の根拠) PubMed

最後に

最後に

肝臓に膿がたまる病気である、肝膿瘍についてまとめました。

肝膿瘍に特徴的な症状などがないため、腹痛や症状から、この疾患を疑うこと、画像診断がこの病気の診断には欠かせません。

また、糖尿病などの免疫抑制状態ではないか、海外渡航歴や性的接触の機会はないかなどを、医師に伝えることも大切です。