動脈瘤がある場合、破裂すると、即、命に関わります。
そのため、早急に治療として手術を行う必要があります。
しかし、その手術をすると予後はどうなのでしょうか?
今回は、動脈瘤が破裂した場合の手術について
- 手術方法
- 頻度
- 予後
など、2015脳卒中データバンクを元にご説明したいと思います。
動脈瘤が破裂した場合の手術は?
基本的に、手術は未破裂の場合のものと同様です。
- 直達手術・・・クリッピング術
- 血管内治療・・・コイル塞栓術
が選択されます。
クリッピング術
開頭し、直接動脈瘤をクリップで挟んで止血する手術方法です。
コイル塞栓術
足の付け根や手首の動脈からアプローチし、血管内にマイクロカテーテルを挿入し、動脈瘤にプラチナコイルを詰めて塞栓する手術方法です。
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動脈瘤が破裂した場合の手術別頻度は?
この破裂した動脈瘤に対する手術は、根治治療の頻度として
- 直達手術は→77%
- 血管内治療は→23%
と、直達手術が多く行われている現状です。
ただし、2009年のデータと比べて血管内治療の頻度は増加傾向にあります。
これは、
- 血管内治療の予後が良好であることが複数の論文で示されたこと
- 血管内治療を行うデバイスが発達したこと
- 血管内治療を行う医師の手技が発達・普及したこと
がその要因として挙げられます。
とはいえ、まだまだ直達手術の方が多いのが現状である、ということです。
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動脈瘤が破裂したら手術で予後はどう変わる?
予後の回復を確率で見るとどうなるのでしょうか。
ここでは、退院時のmRS(modified Rankin Scaleの略)が0-2に収まっている人の確率で提示されています。
mRS基準は、患者の予後の指標として用いられるもので0-2とは
- grade 0: 全く症状がない。
- grade 1: 症状はあるが特に問題となる障害はない(通常の日常生活および活動は可能)
- grade 2: 軽度の障害(以前の活動は制限されているが、介助なしで自分のことができる)
に当てはまっている場合です。
つまりくも膜下出血が起こった後で、軽度の障害以内で退院できた人の割合であるということです。
その割合は、
- 直達手術では→67.1%
- 血管内治療では→56.2%
となっています。
直達手術の方が、予後が良好な確率が高かったという結果が出ています。
この結果だけを見ると、直達手術の方が良い・・・と思いがちです。
ただし、高齢者や重症の患者さんが血管内治療に集まる傾向にあるため、一概に予後において、直達手術>血管内治療とは言えないので注意が必要です。
手術を行う年代
直達手術では、2308人中
- 50歳未満・・・487人(22%)
- 50歳代・・・646人(28%)
- 60歳代・・・605人(26%)
- 70歳代・・・497人(19%)
- 80歳以上・・・117人(5%)
血管内治療では、685人中
- 50歳未満・・・121人(18%)
- 50歳代・・・126人(18%)
- 60歳代・・・160人(23%)
- 70歳代・・・150人(22%)
- 80歳以上・・・128人(19%)
これらの結果から、全体的に直達手術を行う人数の方が格段多いものの、血管内治療の方は、高齢者に多く行われているという事が分かります。
直達手術のメリット・デメリット
- 直接病変を確認しながら治療を行えるため、確実性が高い(メリット)
- 血腫の除去もできる(メリット)
- 再破裂の予防にもなる(メリット)
- 侵襲性が高く、重篤者や高齢者には不向き(デメリット)
血管内治療のメリット・デメリット
- 開頭しなくて済むため、重篤者や高齢者でも施行できる事が多い(メリット)
- 脳を損傷させるリスクが少ない(メリット)
- 後遺症も少ない(メリット)
- 血管内治療が行えない場合もある(患者の年齢・重症度・大きさ・位置などによって)(メリット)
- 行える病院が少ない(デメリット)
また、直達手術で行うクリッピング術の方が、血管内治療で行うコイル塞栓術の方が、根治性が高いと言われています。
それには、コイル塞栓術の場合、長期経過中にコイルが圧縮される事があり、一定の頻度で破裂や再破裂をきたす事が報告されているためです。
参考文献:脳卒中データバンク2015P162〜169
参考文献:医学のあゆみ 脳動脈瘤-予防と治療の最前線Vol.236 No.2 P134
参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P140〜151
参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P110〜121
最後に
- 破裂した動脈瘤の手術も未破裂同様、直達手術で行うクリッピング術・血管内治療行うコイル塞栓術がある
- 頻度としては、直達手術の方が多い現状
- 直達手術の方が予後良好例が多い現状なものの、それぞれの手術にはメリット・デメリットがある
患者一人一人の状態や年齢も違うため、一概には言えません。
そのため、担当医の説明をしっかり受ける必要がありますが、一つのデータとして、参考にされてください。