くも膜下出血(動脈瘤が破裂することによる)、脳梗塞、脳出血を合わせて脳卒中と言いますが、前者2つの治療に血管内治療が行われることがあります。従来の手術療法と異なり、低侵襲である点が最大のメリットですが、デメリットはないのでしょうか?

また血管内治療はどのような病気に用いられ、具体的にどのように治療されるのでしょうか?

今回は脳血管内治療についてまとめました。


脳血管内治療とは?

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脳血管もしくはその近傍の血管までカテーテルを進め、血管の内側から治療をするのが、脳血管内治療です。心臓カテーテル治療は有名だと思いますが、その脳血管版だということです。

具体的には、

  • 内頸動脈の起始部に親カテーテルを留置する。
  • 親カテーテルの中を子カテーテル(マイクロカテーテル)を通して、頭蓋内血管にアプローチする。

という風に、太いカテーテルの中を細いカテーテルを用いて、病変部までアプローチします。

どんな病気に脳血管内治療を行う?適応は?

どのような病気にこの治療を行いますか?
医師
主には以下の病気に行われます。
脳血管内治療の適応疾患

 

脳動脈瘤とは?

  • 中年女性に好発
  • サイズが大きいほど破れやすい。
  • 形が短期間に変化するものは破れやすい。
  • 年間出血率は、サイズ・場所にもよるが全体では約1%。

という特徴があります。

脳動脈瘤の治療は?

治療には大きく2種類あります。

  • 開頭動脈瘤クリッピング:従来の根治術。
  • 脳動脈瘤コイル塞栓術(血管内治療):近年普及している。
開頭手術

開頭手術は、頭蓋骨をドリルで穴を開け外し、手で脳を分けて、血管を手前から辿り動脈瘤に到達した後、根元をクリップするという方法です。

コイル塞栓術

一方で、血管内治療である、コイル塞栓術は、血管内からカテーテルを脳動脈瘤内に進めて、内側から動脈瘤壁に密着するサイズのコイルを挿入しカゴを作り、その中にコイルを詰めるという方法です。

外からクリップするか、内からコイルを詰めるか、全く違うアプローチですね。開頭しなくていいなら血管内治療の方が良いような気もします。
医師
ところが、それぞれの治療に向き不向きもあります。例えば、すべての動脈瘤に対して、この血管内治療が可能なわけではありません。

広頚(くびれが少ない)の動脈瘤は血管内治療(コイル塞栓術)が難しいと言われています。

これについては、バルーンカテーテルと言って血管内に風船を膨らませて動脈瘤の根元を抑えた状態で、コイルを挿入してコイルの逸脱を防ぐという方法がとられることがあります。またステントで動脈瘤の根元を抑えることによりコイルの逸脱を防ぐこともあります。

一筋縄ではいかないこともあるってことですね。
医師
そうですね。それぞれの治療の長所を生かした治療の棲み分けが重要となります。

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頸動脈狭窄症とは?

頸の血管の動脈硬化が起こった部位の壁(プラーク)が厚くなり、血液が流れる部分が細くなった状態を頸動脈狭窄症と言います。

頸動脈狭窄症の治療は?

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治療はまずは内科的に薬による治療が試みられます。それでも改善しない場合に、

  • 外科的治療(頸動脈内膜剥離術):頸動脈を切り開いて動脈硬化の部分を取り除く。
  • 血管内治療(頸動脈ステント留置術):血管内からステントを留置する。

と言った治療を行います。外科的治療は全身麻酔をした上で行う一方で、血管内治療は起きた状態で行うことができますが、後者の場合は、異物を血管内に入れることになりますので、アスピリンなどの抗血小板薬の内服が必要になったりと、どちらも一長一短なところがあると言われています。

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脳血管内治療の副作用・デメリットは?

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副作用にはどのようなものがありますか?
医師
主に以下のものがあります。

脳梗塞

脳は様々な機能を担っていますので、場所によっては大きな神経麻痺などをきたすことがあります。

カテーテル操作でできたごく小さな血栓や、頸動脈の動脈硬化による小さなプラークが飛んでしまうだけで、重篤な脳梗塞を起こすことがあります。

脳外を栄養する外頸動脈の枝であっても、血管の閉塞をきたすことにより、

  • 視力障害
  • 顔面神経麻痺
  • 嚥下障害

などを引き起こすことがあります。

脳血管穿孔・破裂

脳動脈瘤のカテーテルによる血管内治療の途中で、破れてしまったりするとくも膜下出血を引き起こし、致死的な状態になることがあります。

最後に

血管内からアプローチすることで病気を治すがの血管内治療です。

  • 開頭
  • 全身麻酔

と言ったことを行わなくても覚醒下で行うことができる点で、従来の治療よりもより侵襲が少なく簡便に行うことができます。その一方で、血管内治療には向かないケースもあり、またまだまだ新しい治療法であるという点からも思わぬ合併症が起こったりするリスクもゼロではありません。

メリットもあればデメリットもあるということです。ケースバイケースで、治療法が選択されるのが現状です。




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