Asymptomatic cerebral infarction Eye-catching image

 

脳梗塞とは脳の血管が詰まる病気ですから、血管が詰まるとその血管が支配している領域は虚血から壊死に陥ります。

その場所が、運動など重要な役割を果たす部位ならば、「麻痺」という形で症状が出てきます。

ところが、脳梗塞があるのに症状がない・無症状であるってことがあるんです!

「症状がないのにどうやって脳梗塞だってわかるの?」

という疑問が聞こえてきそうですが、それはMRIの画像検査をすればわかります。

  • MRIで、古い梗塞の後が、残っている
  • しかし症状がない

このような脳梗塞を無症候性脳梗塞(むしょうこうせいのうこうそく)と言います。

今回は、脳ドックでも見つかることが多い、この無症候性脳梗塞について

  • 症状
  • 原因
  • 診断
  • 治療

など、気になることについて説明します。


無症候性脳梗塞とは?

無症候=症状がないという意味です。

ですので、無症候性脳梗塞とは、「症状がない脳梗塞」ということになります。

cerebral infarction

脳卒中の既往がないにも関わらず、人間ドックなどの脳のMRIやCTで、偶然発見されることが多いものです。

この無症候性脳梗塞は、多くは15mm以下の小さなタイプの小さな脳梗塞で、ラクナ梗塞とも呼ばれます。

医師
しかし、もちろん全てのラクナ梗塞が無症候性というわけではありません。

ラクナ梗塞について詳しくはこちら→ 【保存版】ラクナ梗塞とは?症状、画像診断、治療をわかりやすく!

無症候性脳梗塞の原因は?

  • 高血圧
  • 加齢
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 喫煙

患者のほとんどに高血圧があり、その高血圧による細動脈硬化(細い動脈に起こる動脈硬化)を基盤に発症しますが、上記のそのほかのものも無症候性脳梗塞の危険因子となります。

これらの危険因子は、脳梗塞や脳出血とも同じものです。

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無症候性脳梗塞の診断は?

上に述べたように脳のMRIの検査をすると古い梗塞があるかどうかはわかります。

MRIの中でも、主に、

  • T1強調像
  • T2強調像
  • FLAIR像

という撮影方法で撮影した画像から総合的に脳梗塞であるかどうかを判断します。

新しい急性期の脳梗塞の有無については、

  • 拡散強調像(DWI)

という撮影でわかることが多いです。

  • 「これまで全く症状はない」
  • 「しかし古い脳梗塞があると言われた」

この状態が、無症候性脳梗塞です。

症例 60歳代 女性 無症状、過去に脳梗塞と診断されたことはない。

asymptomatic cerebral infarction mri findings

MRIのFLAIR像で白い縁取りをもつ黒い点を認めます。

またこの部位はT1強調像の冠状断像では、黒い抜けとして認めています。

陳旧性ラクナ梗塞を疑う所見です。

ただし、この方は症状はなく、また過去に脳梗塞と診断されたことも、脳梗塞を疑うような症状が出たこともありません。

したがって、無症候性脳梗塞と診断されました。

無症候性脳梗塞の治療は?

症状がない場合は、基本的に治療は必要ありません。

アスピリン®️という血液をサラサラにする抗血小板薬の適応は、あくまで症状がある脳梗塞に対して行われますので、症状がない脳梗塞には、よほどリスクが高い人でないと治療は必要がないと言われています。

また症状といっても、頭痛やめまいなど、その脳梗塞が関係ないと思われるような症状の場合も、同じように治療は必要ないと考えられています。

しかし、何もしなくていいのか?

といえば・・・そうではなく、今の状態(原因となる問題がある)では、再び脳梗塞を起こす可能性もあるということです。

つまり危険因子を取り除くために、その人がもつリスクに応じたそれぞれの治療を行う必要があるということです。

もしも次に脳梗塞が起こった場合、それが無症候性脳梗塞とは限りませんからね。

関連記事)

古い脳梗塞は実は脳梗塞ではない可能性もある。

実は古い脳梗塞の場合、実は脳梗塞でないこともあるんです。

医師
少し、意味がわかりませんよね?

難しい話になりますが、詳しくお話しします。

高血圧や加齢により、脳の白質と呼ばれるところには、「慢性虚血性変化」と呼ばれる変化が出てきます。

この変化を「脳梗塞」と診断している医師も中にはいると言われています。

詳しくはこちら→脳MRIの慢性虚血性変化とは?イラストと画像でわかりやすく解説!

また脳の基底核などには、血管周囲腔と呼ばれる生理的な空洞ができることもあるのですが、これもまた「脳梗塞」と診断している可能性があるということです。

  • 慢性虚血性変化(深部白質変性)
  • 血管周囲腔

は脳梗塞ではありません。

つまり・・・脳梗塞ではないのに、脳梗塞と診断されているケースもあるということです。

しかし実際、とくに小さな脳梗塞の場合は診断の難しいケースがあるのも事実です。

上に述べた慢性虚血性変化が目立つ人の場合、その中に小さな脳梗塞が紛れている可能性もあるからです。

ところが、明らかに脳梗塞がないのに慢性虚血性変化が少しでもあれば=脳梗塞とされるケースもあり、それは問題です。

脳の血管に狭窄があると言われた!治療が必要?

MRA

脳ドックなどを受けると、脳のMRIの検査とセットで上のような、脳の血管の撮影であるMRAを受けることが多いです。

ここで狭窄が見つかった場合、治療が必要なのでしょうか?

この場合も、症状がなければ、アスピリン®︎などの抗血小板薬は必要ないと言われています。

あくまで、症状がある場合に、抗血小板薬による治療を開始するのが基本です。

ただし、狭窄が高度である場合は、症状がなくても抗血小板薬の治療が行われることはあります。

参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P65・74〜83
参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P126〜128

最後に

脳梗塞があっても症状がないこともある、という無症候性脳梗塞についてまとめました。

「脳梗塞なのに症状がないってどういうこと?」という疑問は晴れたと思います。

無症候性脳梗塞が見つかった場合、必ずしも治療は必要ではありませんが、過去に脳梗塞が起こったという事実があるわけですので、危険因子があれば生活習慣の改善を含め、その治療は必要になります。

それと同時に、慢性虚血性変化と言われる大脳の白質の変化に紛れて、脳梗塞の診断は時に難しいこともあるということは覚えておいてください。

ただし、明らかに脳梗塞ではないものを、脳梗塞と診断されることもあるので、注意は必要です。

 




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