重症筋無力症とは?夕方に悪化する症状や原因、診断、治療法、予後を解説

 

午後になるにつれ、瞼が重くなり、やる気さえもどんどんなくなっていくということありませんか?

そういう症状が出る疾患の1つに重症筋無力症があります。

ですが、ただの気持ちの問題と思っていた方からすれば、重症筋無力症という聞きなれない病名に戸惑う方も多いと思います。

そこで今回は重症筋無力症(英語表記で「Myasthenia gravis」略語でMG)について

  • 症状
  • 原因
  • 診断
  • 治療法
  • 予後

をご説明したいと思います。


先に結論

  • 重症筋無力症(MG)は、神経から筋肉への信号が伝わりにくくなる自己免疫疾患で、指定難病です。
  • 特徴は、夕方や疲れたときに悪化し、休むと回復する筋力低下です。まぶたが下がる(眼瞼下垂)、物が二重に見える(複視)、飲み込みにくい、手足に力が入らない、などがあります。
  • 診断は、症状の確認、抗アセチルコリン受容体抗体などの血液検査、筋電図、胸腺の画像検査などを組み合わせます。
  • 治療は、抗コリンエステラーゼ薬、ステロイドや免疫抑制薬、胸腺腫があれば手術などから、症状に合わせて選びます。
  • 息苦しさ、飲み込みにくさ、声が出にくいなどが急に強くなったときは、すぐに医療機関を受診してください。

 

夕方になると、まぶたが下がってくる…
重症筋無力症のサインかもしれません。疲れると症状が強くなり、休むとよくなるのが特徴です。神経内科で相談しましょう。

重症筋無力症とは?

神経筋接合部の神経伝達障害が起こる疾患で、アセチルコリン受容体に対する自己抗体が存在するために起こります。

日本の2018年の全国疫学調査では、患者数は約2万9千人(人口10万人あたり23.1人)と報告されています。男女比は1:1.15で女性がやや多く、発症年齢の中央値は59歳、50歳以上で発症した人が約3分の2と、近年は高齢で発症する人が増えています。小児にも起こります(難病情報センター)。

重症筋無力症の症状は?

症状は朝から夕方にかけ変動し、運動や休息によって悪くなったり良くなったりしますが、夕方に症状が増悪します。

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筋力低下が症状の特徴でもあり

  • 顔面筋
  • 眼瞼挙筋
  • 外眼筋
  • 四肢近位筋

などの筋力が低下し、瞼が下がり疲労感や複視などが現れます。

特にこの疾患の特徴ともいえる眼瞼下垂は上眼瞼挙筋の筋力低下が原因で起こります。

筋力低下は眼筋だけでなく、全身型として

  • 顔面麻痺
  • 嚥下障害
  • 咀嚼障害
  • 構音障害
  • 呼吸筋麻痺
  • 体幹筋の低下

なども起こります。

ですが、しばらく休息をとると、筋力が回復するのが特徴です。

夕方にまぶたが重く休む女性

筋力が落ちるほかの病気として、筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは?症状・原因・診断・治療法をわかりやすく解説も参考にしてください。

重症筋無力症の原因は?

  • 自己免疫反応
  • 胸腺の異常
  • (悪化のきっかけとして)感染症・手術・特定薬剤

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重症筋無力症は自己免疫疾患で、神経筋接合部においてアセチルコリン受容体に対して自己抗体により、神経筋伝達障害を起こすのが原因です。

抗アセチルコリン受容体抗体が陽性の人の約75%に胸腺の異常(胸腺過形成や胸腺腫)が合併するとされ、胸腺が病気に関わると考えられています(難病情報センター)。

また、感染症や手術、特定の薬剤が症状悪化のきっかけになることがあります。通常、遺伝する病気ではありません。

重症筋無力症の診断は?

医師
検査方法はいくつかあります。
  • 自覚症状の問診、視診
  • エドロホニウムテスト
  • アイパック試験
  • 眼瞼易疲労性検査
  • 抗アセチルコリン受容体抗体検査
  • 甲状腺機能検査
  • 単一線維筋電図
  • 反復刺激試験
  • 胸腺や胸腺腫検査

まずは、症状から重症筋無力症を疑います。

そのうえで、検査を行うことになります。

ですが日内変動するため、1度検査をして陰性となっても、症状が続く場合には再度検査をすることもあります。

エドロホニウムテスト

エドロホニウムテストといって、塩酸エドロホニウムを静脈に注射し眼や全身の症状が改善するかテストする方法もあります。

アイパック試験

眼を冷却して症状が改善するかテストするアイパック試験も方法の1つです。

眼瞼易疲労性検査

上方を眼だけを動かし1分間程決まった時間見続けることによって、瞼が下がる症状が出るかどうか誘発する検査です。

血液検査

抗アセチルコリン受容体抗体は患者さんの約85%で陽性で、陽性なら診断の大きな根拠になります。抗MuSK抗体が陽性の人も数%おり、どちらも陰性の人も10%未満います(難病情報センター)。そのため、抗体が陰性でも、他の検査や症状から診断されることがあります。

その他、甲状腺機能亢進症などが合併することもあるため確認します。

単一線維筋電図

前頭筋・眼輪筋・総指伸筋に電極を置き、A・Bの波型を観察します。

反復刺激試験

鼻筋・僧帽筋・手内在筋などに電極を置き、反復刺激を与え得られる波型を観察します。

画像診断

胸腺に異常が出ることも多いため、X線、CT、MRI、PET-CTなどで異常がないか確認します。

重症筋無力症の主な検査の表

合併することがある甲状腺の病気については、甲状腺の病気の種類は?バセドウ病・橋本病・甲状腺腫瘍の特徴と症状を解説で解説しています。

重症筋無力症の治療法は?

治療法はいくつかあり、症状や年齢、合併症などの有無によって判断されます。

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胸腺腫のがあれば胸腺腫摘除術がおこなわれます。

また、全身型か眼筋型かによっても治療法は異なります。

医師
それぞれ、治療薬をご説明します。

眼筋型の場合

  • ナファゾリン点眼
  • ステロイド内服
  • ステロイドパルス
  • 免疫抑制薬

全身型

  • ステロイド内服
  • 免疫抑制薬
  • 免疫グロブリン
  • 血液浄化療法
  • ステロイドパルス

眼筋型や全身型の一部に、抗コリンエステラーゼ薬が使われます。

症状をやわらげる治療として、抗コリンエステラーゼ薬や血液浄化療法が、免疫に働きかける治療として、拡大胸腺摘除術・ステロイド・免疫抑制薬が選択されます。薬の種類や量は、症状や合併症に応じて主治医が決めます。

ですが、急激な筋力低下や呼吸困難といった症状を認める場合には、早急に処置が必要で

  • 気管内挿管
  • 人工呼吸管理
  • 抗コリンエステラーゼ薬の中止
  • 誘因の除去

が必要となります。

重症筋無力症の予後は?

昔は致死率の高い病気とされていましたが、現在では呼吸管理も可能となり、治療を続けながら仕事や日常生活を送れる人が増えています。難病情報センターによると、約半数の人は日常生活や仕事に支障なく過ごせ、治療が不要になる人は約6%、治療で十分に改善しにくい難治例が10〜20%程度とされています。

参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P318〜321
参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P343〜346
参考文献:新・病態生理できった内科学 7 神経疾患 P279〜284
参考文献:難病情報センター「重症筋無力症」 原本

よくある疑問

Q. 疲れやすいだけとの違いは?
A. 重症筋無力症では、同じ動作を続けるとまぶたが下がる、物が二重に見える、噛む・飲み込む力が落ちるなど、特定の筋肉の力が落ち、休むと回復するのが特徴です。単なる疲れでは説明しにくい症状が続く場合は受診しましょう。

Q. 何科を受診すればよいですか。
A. 神経内科(脳神経内科)です。まぶたの症状が中心なら眼科から紹介されることもあります。

Q. 抗体検査が陰性だと重症筋無力症ではありませんか。
A. いいえ。抗体が陰性の人も一定数おり、筋電図や症状の経過などで診断されることがあります。

最後に

  • 症状が日内変動し、夕方悪化する
  • 筋力低下が主な症状で、眼筋型と全身型とがある
  • 自己免疫疾患で、通常は遺伝しない
  • 症状確認、血液検査、画像診断などが有効
  • 症状に合わせた治療を行う
  • 抗コリンエステラーゼ薬、免疫を調整する治療などを症状に合わせて選ぶ

 

一度検査をし、異常がないと言われたものの症状が続く場合は、日内変動するものですので、再度検査をしてみることをおすすめします。

その際、症状が出やすい夕方に行ったり、症状を誘発するテストが良いでしょう。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。