腫瘍マーカーの中で、乳がんのために行うものとして、CA15-3やBCA225があります。
このCA15-3やBCA225とはどのようなものか、
- 基準値
- 異常な場合
- 注意点
について解説しました。
参考にされてください。
CA15-3・BCA225とは?
CA15-3とは?
読み方はそのまま、シーエー15−3となります。
乳がん再発の早期発見に有用とされ、術前値が陰性でも術後再発して陽性になることもあります。
治療効果判定と、治療後の臨床経過のモニタリングに有用とされています。
治療奏効例でも、治療初期に値が一過性に上昇することがありますので、治療無効と判定しないように注意する必要があります。
原発性乳がんの病期Ⅰ・Ⅱにおける陽性率は低く、スクリーニングや早期発見のための検査としての意義は低いですが、陽性の場合は進行乳がんを疑います。
CEA(がん胎児性抗原)に比べ臓器特異性が高く、再発例での陽性率も高く、CEAと組み合わせると、より診断率を向上させることが出来ます。
より詳しく
CA15-3はヒト乳脂肪球膜の糖タンパクに対するモノクローナル抗体115D8と、乳がん肝転移細胞を抗原として作製されたモノクローナル抗体DF3によって認識される乳がん関連ムチン抗原です。
BCA225
読み方はそのまま、ビーシーエー225となります。
他の悪性疾患や乳腺良性疾患での陽性率は低く、乳がんに対して特異性が比較的高いとされます。
原発性乳がんでの陽性率はCA15-3とほぼ同様で、スクリーニングや早期発見の検査としては意義が低いとされますが、乳がん手術後のモニタリングや治療効果の判定に有用とされています。
より詳しく
BCA225は、ヒト乳がん細胞株T47Dの培養上清を免疫原として作製された、2種のモノクローナル抗体CU18とCU46が認識するタンパクで、CA15-3の認識する抗原に類似したムチン型の糖タンパクです。
CA15-3・BCA225の基準値は?
- CA15-3の正常値は27U/ml以下
- BCA225の正常値は160U/ml以下
が正常値とされています。
つまり、これよりも少なければ問題ありませんが、上昇が見られる場合は、異常が考えられます。
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CA15-3・BCA225が異常をきたす病気は?
乳がんの腫瘍マーカーとして有用ですが、それ以外にもCA15-3やBCA225が上昇すると、以下のような病気が考えられます。
CA15-3
- 乳がん
- 卵巣がん
- 子宮体がん
- 子宮頸がん
- 乳腺炎
- 子宮筋腫
- 子宮内膜症
- 卵巣のう胞
- 膵がん
- 腎がん
- 胃がん
- 大腸がん
- 肝がん
- 肝硬変
などがあります。
原発乳がんでCA15-3が増加している場合は、進行乳がんを疑い、さらなる詳しい検査をします。
陽性率は局所やリンパ節では低く、肺・肝・骨転移などでは高いので遠隔転移を疑って検査されます。
手術などの治療後の乳がんで、異常値を示した場合には再発を疑います。
乳がん以外の悪性腫瘍では、卵巣がん・子宮体がん・子宮頸がん・膵がん・腎がん・胃がん・大腸がん・肝がんで陽性となり、これらの陽性例は進行がんで遠隔転移症例に多いとされます。
健康な女性や乳腺良性疾患では陽性率が低く、子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣腫瘍・肝硬変に少数の陽性例がみられます。
BCA225
- 乳がん
- 卵巣がん
- 乳腺炎
- 子宮体がん
- 子宮筋腫
- 肝臓がん
- 肺がん
- 大腸がん
- 胃がん
まず、進行・再発乳がんを疑います。
陽性率は低いものの、肝臓がん・子宮体がん・卵巣がん・肺がん・大腸がん・胃がんなどの悪性腫瘍、子宮筋腫、妊娠33週以降で陽性例を認めます。
CA15-3・BCA225の注意点は?
CA15-3では、以下のような取り扱いの注意点があります。
- 検体は午前中の空腹時に抗凝固剤を含まない試験管で採取されます
- 2時間以内に4℃の低温遠心器で血清分離し、測定時まで-20℃に凍結保存します
また、どちらも妊娠後期に異常値を示すことがあるため、病気と妊娠によるものとの鑑別が重要です。
BCA225はCA15-3と弱い相関を認めますが、CEAとの相関は認められません。
参考文献:今日の臨床検査 2011ー2012 P484・485
参考文献:新 検査のすべてがわかる本P115・116
最後に
乳がんでは腫瘍マーカーの数値を調べることにより、手術後の取り残しの有無、抗がん剤や放射線治療の効果、再発の兆候などの大体の目安として判断する事が可能となります。
しかし、腫瘍マーカーが高い数値を示した際も、がんの疑いがあるに過ぎませんので確定するには画像検査などを平行して行う必要があります。
また他の腫瘍マーカーと同様に基本的に早期のがんを見つけにいくための、スクリーニング検査としては適していませんので、他の検査との併用が重要です。