人間ドックでも検査の中に入っている腫瘍マーカーの一つであるPSAが高値を示す場合、どのような可能性があるのでしょうか?
PSAは前立腺がんの腫瘍マーカーとして知られていますが、高ければ前立腺がんなのでしょうか?
また、そもそもPSAとは何なのかについてまとめました。
PSAとは?
PSAとは、Prostate Specific Antigen(前立腺特異抗原)の略で、主として前立腺から精液中に分泌されるタンパク質の一種であり、前立腺がんのみならず正常および肥大症も含めた前立腺組織で分泌されます。
前立腺がんではPSAタンパクが血液中に漏れ出すことがPSA高値を示し、他の臓器の異常では数値は変動しません。
前立腺に特異的な抗原といわれ、前立腺がんでも数値に反応が出やすいことから、前立腺がんの診断及び経過観察における最も有用性の高い腫瘍マーカーとして使われます。
PSAの正常値は?いくらから高値?
- 基準値以内 4.0ng/ml
- 軽度上昇 4.1 ~10.0ng/ml(グレーゾーン)
- 中等度上昇 10.1~20.0ng/ml
- 高度上昇 20.1ng/ml
一般にPSA値が上昇するほど前立腺がんの検出率は高くなり、前立腺肥大症との鑑別が特に問題となるグレーゾーン(PSA値4.1~10.0ng/ml)での前立腺がんの検出率は10-30%とされます。
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PSAが高値をきたす病気は?
- 前立腺がん、前立腺肥大症
- 急性(慢性)前立腺炎
- 尿閉、射精
- 直腸視診、直腸超音波、経尿道的操作(導尿など)
また先ほど説明したように、高度上昇している場合は、前立腺がんの可能性が高いといえます。
PSAの取り扱い注意点は?
前立腺肥大症に対して用いられる薬である酢酸クロルマジノンに代表されるプロゲステロン製剤(ステロイド系抗アンドロゲン薬)は、PSA値を低下させ、前立腺がんの存在をマスクする可能性があるとされます。
つまり、この薬を使っている人は、本当はPSAが高くて前立腺がんがあっても、それが隠れてしまう可能性があるということです。
この薬剤を投与する場合にはPSA測定、直腸指診などにより前立腺がんの合併を否定する必要があります。
最後に
前立腺がんの初期では、自覚症状がほとんどなく、何らかの症状が出た頃には病気も進行しており根治が困難となってしまいます。
しかし、PSA検査の普及により、病気を早期に発見することが出来るようになり高い確率で根治する事が可能となってきています。
また、ご家族(父または兄弟)に前立腺がんの方がいる場合は、若年でも発症する可能性がありますので、40歳を過ぎたら一度検査を受けるようにされて下さい。
なお、前立腺がんの診断は、PSA値、直腸指診(DER)、経直腸超音波(TRUS)などを総合判断しTRUSガイド下前立腺針生検を行い、これによる組織診断で確定診断を行ないます。腫瘍マーカーのみで診断されることはありません。