hCGとは、ヒト絨毛ゴナドトロピンといい、human chorionic gonadotropinを略したものになります。
腫瘍マーカーや妊娠補助検査として行われるものですが、基準値はどのくらいなのでしょう?
今回は、hCGについて
- 基準値
- 異常な場合
- 注意点
を解説したいと思います。
hCGとは?
妊娠関連検査や悪性腫瘍を診断するための補助的検査、治療の経過観察として行われるものです。
読み方はそのままエイチシージーと読みます。
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(ゴナドトロピンは、性腺刺激ホルモンの総称)のことで、これは、絨毛組織より分泌される糖蛋白のことです。
hCGは、α・βの2つのサブユニットからなり、αサブユニットは、下垂体由来の糖蛋白ホルモンと構造的に高い相同性を持ちます。
しかし一方でβサブユニットは、hCGに特異的で、hCG-βサブユニットは異常妊娠や絨毛癌などの診断に有用です。
通常、健康な人では認められないものですが、胎盤機能(絨毛組織)に反応するため、妊娠時には上昇するので注意が必要です。
逆にこれが陽性になることを利用して妊娠迅速検査を行います。
hCGの基準値は?
測定方法によって基準値が異なりますので、分けて説明します。
- IRMA(ビーズ固相法)によるhCG-βの基準値・・・0.1ng/mL以下
- CLEIA(電気化学発光免疫測定法)によるhCGの基準値・・・2.7mlU/nL
- EIA(酵素免疫測定法)によるhCGの基準値・・・0.7mlU/mL
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hCGが高値の場合どんな癌の可能性がある?
hCGが高値となる場合に考えられるのは、
- 精巣腫瘍
- 絨毛性腫瘍:胞状奇胎・侵入奇胎・絨毛癌
- 性腺外胚細胞腫瘍:縦隔原発・後腹膜原発・松果体腫瘍
- その他の非絨毛性悪性腫瘍:肺癌・胃癌・膵臓癌・膀胱癌
- 多胎妊娠
- 先天性染色体異常(ダウン症)
などです。
癌だけでなく、妊娠異常などでも高値となります。
逆に低値となる場合に考えられるのは、
- 流産
- 早産
- 胎児死亡
などです。
精巣腫瘍
男性精巣腫瘍の中でも、セミノーマの一部および非セミノーマで上昇します。
国際的に用いられる予後分類(IGCC分類)では、腫瘍マーカーの値が重視されます。
絨毛性腫瘍
正常妊娠でも陽性となりますが、奇胎妊娠の場合は、同時期の正常妊娠と比較しても、高値を示すとされます。
そして、奇胎摘出後は、血中および尿中のhCGを測定して、経過観察を行います。
その他の非絨毛性悪性腫瘍
血中のhCGは、肺癌・胃癌・膵臓癌・膀胱癌といった絨毛組織とは関係のない癌でも陽性となることがあります。
ただし、上記の精巣腫瘍や絨毛性腫瘍と比較して低い値で、基準値を超える程度であることが多いとされます。
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hCG取り扱いの注意点は?
実はこのhCGの測定キットは、たくさんの特性を持ったものが開発されており、キットによって他のキットと同じ数値を示さないことがあり注意をする必要があります。
市販されているキットは、
- HI(赤血球凝集阻止反応)
- LAIR(ラテックス凝集阻止反応)
- HA(赤血球凝集反応)
- LA(ラテックス凝集反応)
- EIA(酵素免疫測定法)
などがあります。
参考文献:今日の臨床検査 2011ー2012 P441・442・494・495
参考文献:よくわかる検査数値の基本としくみP190・191
参考文献:臨床検査のABC P369
最後に
- hCGは、妊娠関連検査や悪性腫瘍を診断するための補助的検査、治療の経過観察として行われる
- CLEIA(電気化学発光免疫測定法)では、2.7mlU/nLが基準値
- EIA(酵素免疫測定法)では、0.7mlU/mLが基準値
- hCGの測定キットは様々あり、基準値もそれぞれ異なる
精巣腫瘍や絨毛性腫瘍で陽性となるhCGについて取り上げ、まとめました。
正常妊娠でも陽性となりますが、ダウン症で高値を示すことから、出生前診断(出生前胎児スクリーニング)の血清学的マーカーの1つとしても用いられます。