食生活の欧米化に伴い、日本での大腸がんによる死亡者数は年々増えてきます。
特に若い男性が突然大腸癌の進行癌で見つかることも増えてきており、早期発見が非常に重要です。
大腸がん検診の最も簡易な検査が1992年より開始された便潜血検査(読み方は「べんせんけつけんさ」)です。
まず、絶対に覚えておいていただきたいのですが、便潜血検査で引っかかった場合(便潜血反応が陽性と出た場合)、必ず精密検査を受けるようにしてください。
せっかくの検査で引っかかったのに、放置しておくと、大腸がんが進行する可能性があり、検査を受けた意味がなくなります。
今回はこの
- 便潜血検査で仮に陽性だった場合、どれくらいの確率で癌が見つかるのか、
- またその後どのように検査を進めていくべきなのか
についてまとめてみました。
便潜血検査で便潜血反応が陽性ならどれくらいの確率で大腸がんが見つかる?
平成22年の消化器がん検診全国集計によりますと、便潜血検査で便潜血反応が陽性であった場合、精密検査をすると大腸がんが見つかる確率は3.6%と報告されています。(平成22年度消化器がん検診全国集計Ⅱ、大腸がん検診全国集計、2012)
がんが見つかる人のうち約70%は早期がん(50%はstage0 またはⅠの早期)で、症状が出てから発見される進行がんよりも早期の段階で発見されることが多いのです。
この結果を見ても、便潜血検査で陽性であった場合、精密検査を受けることがいかに大事かということがわかりますね。
がん以外で便潜血検査で陽性になることがある?原因は?
がん以外では、腺腫と呼ばれるがんの前の病気(前がん病変)が29%で発見されます。
そのほか、
- 炎症性腸疾患
- 大腸憩室
- 内痔核(いわゆる「ぢ」の一つ)
が原因となり、発見されることがあります。(平成22年度消化器がん検診全国集計Ⅱ、大腸がん検診全国集計、2012)
便潜血が痔が原因で陽性となる確率は?
特に、内痔核(いわゆる「ぢ」の一つ)がある人は23%の確率、つまり4人に1人近くの人でこの便潜血検査で陽性になるといわれています。(日本大腸肛門病学会誌,50:605-609,1997)
便潜血検査陽性で、精密検査でも何も見つからないことはある?
便潜血検査をして陽性だった人が、その後精密検査(大腸内視鏡検査=大腸カメラ)をしても、何も見つからない確率は、39%と実に4割近くに及びます。
一つは、何も病気がなくても生理的に便にヘモグロビンが混じることがあり、それによる偽陽性(病気がないのに検査で陽性と出てしまうこと)が考えられます。
そのほか、下部消化管と呼ばれる大腸からではなく、
- 胃などの上部消化管からの出血の可能性
- 大腸カメラで大腸がんを見落としてしまう可能性
が考えられます。
見落としはあってはならないものですが、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)は胃カメラ(上部消化管内視鏡)に比べても、非常に高い技術が必要です。
さらに、人によっては大腸の構造が複雑であり、どうしても見落としを0にすることはできず、腫瘍性病変の見逃しは5-15%に及ぶという報告もあります。(臨床消化器内科,11:675-680,1996)
関連記事)大腸がんの検査方法は?何歳から?
精密検査(大腸内視鏡検査)で異常なしと言われたあとはどうしたらいい?
精密検査を受けたけども、何も見つからなかった場合、必ず翌年も、便潜血検査を受けてください。
前述したように、見逃しは絶対に0にはできません。
どんな内視鏡の名医であってもです。
そもそも大腸がんがあれば必ず便潜血検査で引っかかるの?
進行がんでさえ、1-2割は陰性と出てしまいます。
つまり、全く完璧な検査ではないんですね。
ただし、いかなる検査にも完璧は存在せず、この検査により、大腸がんの発見率が上がっているのは疑いのようない事実です。
現状、大腸がんのスクリニーング検査としては最も簡便で優れている検査と言えます。
便潜血検査で陰性の場合、がんが隠れているのではないか?と疑い始めると、いかなる検査も疑うことになってしまいます。
大腸がん検査で最も優れている大腸内視鏡検査でさえ、5-15%で見逃しがあるわけですから・・・。
ここで大事なのは、陰性の場合に疑うことではなく、陽性の場合に必ず精密検査を受けるということです。
便潜血検査で陽性の場合、精密検査はどうするべきか?
繰り返しになりますが、大腸がんの検査で最も発見率が高いのが、大腸カメラ=全大腸内視鏡検査です。
是非、この検査を受けましょう。
大腸カメラの代替検査は?
こちらの意志というのは、一つに大腸カメラがどうしても苦手という人がいます。
人によっては、肉体的あるいは精神的にかなりの苦痛を伴う検査であるからです。
その場合は、肛門から奥(大腸の始まる盲腸の部位)までではなく、少しだけ管を入れて、そこからはバリウムを流して大腸の状態を見る下部消化管透視検査(いわゆるバリウム検査の大腸版)で代用することもあります。
ただし、どうしてもがんの発見率は内視鏡に比べて劣ってしまいます。
便潜血検査で陽性の場合、やってはいけないことは?
では逆に、便潜血検査で引っかかった場合、最もやってはいけないことは何でしょうか?
それは、その結果を放置して、精密検査を受けないことであることは言うまでもありません。
そして、次にやってはいけないことは、もう一度便潜血検査をすることです。
前述したように、大腸がんがあってもこの検査で引っかからないことがあります。
つまり、もう一度検査をして、仮に陰性であったとしても、大腸がんを否定することはできないということです。
数ヶ月以内に2度検査をして、
「1度目は引っかかったけど、2度目は引っかからなかったので大丈夫」
なんてことは全くないということです。
便潜血検査で陽性になった場合は、必ず精密検査を受けましょう。
そもそも便潜血検査とは?
大腸がんは大腸に少しずつ出血をきたすことが多く、この出血を検出するのが、便潜血検査です。
名前の通り、便に血液が混入しているかをチェックする検査です。
この便鮮血検査には、化学法と免疫法の2種類があります。
日本では、簡便性、感度・特異度においてより優れている免疫法が一般的に用いられます。
それぞれの特徴は以下の通りです。
化学法
- ヘモグロビンのもつペルオキシダーゼ活性を検出する検査。
- 2-3日の食事および薬剤の制限が必要。
- ビタミンCの服用で偽陰性になることがある。
免疫法
- 便中のヒトヘモグロビンに特異的に反応するため、特異度が高い。
- 食事や薬剤の制限は不必要。
- 単に陽性か陰性だけではなく、便中のヘモグロビンの定量も可能で、がんの大きさや深達度と相関するため、高値を示した場合は、是が非でも精密検査を受けるべき。
- 胃などの上部消化管からの出血に弱く、偽陰性(出血があるのに拾えない)を示すことがある。
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最後に
繰り返しになりますが、せっかくのがんの早期発見に役立つ便潜血検査を受けて、引っかかった場合に精密検査を受けないことには見つけることはできません。
必ず精密検査を受けましょう。
なぜここまでしつこく述べるのかというと、便潜血検査で引っかかった(陽性と出た)人のうち、たったの54%しか精密検査を受けていないからです。(レジデントノート vol.15 No.8,2013 P44)
つまり、大腸がんの可能性がある人の約半分は、検査で引っかかっているにも関わらず、放置しているのです。
これでは、せっかくの便潜血検査も台無しですよね。
まずは、精密検査を受けてください。
そしてその上で、この記事をもう一度見直していただけると幸いです( ^ω^ )
全くもっておっしゃる通りなんですが、、、大腸内視鏡検査がとても痛い、つらいと聞くと検査に二の足を踏んでしまいます。そういう人とても多いのではないでしょうか。
精密検査を受ける人を増やすために、何とぞ、痛くない検査方法を開発して欲しいです。術者の技量の差で死ぬような思いをするのは嫌です。
鎮静をかけることもできますので、鎮静をかけてくれるところを探すのも一つだと思います。私もやってもらいましたが、胃カメラも大腸カメラも鎮静をかけてもらいました。