
虚血とは、血管の狭窄や閉塞によって血流が減少し、血流障害が起こったものをいいますが・・・
腸間膜血管の血流障害によって、虚血性の変化や壊死が起こる疾患の総称を虚血性腸疾患といいます。
その虚血性腸疾患の中で代表的なものが虚血性大腸炎です。
今回は、この虚血性大腸炎(英語表記で「ischemic colitis」)について
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療
- 食事
画像とともに詳しくご説明致します。
- 虚血性大腸炎は、大腸の血流が一時的に悪くなり、粘膜に炎症やただれが起こる病気です。
- 突然の腹痛、そのあとの下痢、血便が典型的な症状で、左側の大腸(下行結腸〜S状結腸)に多く見られます。
- 多くは軽症(一過性型)で、安静・絶食・点滴などの保存的な治療で改善します(ACG 2015)。
- 腹痛が強くなる、発熱や嘔吐がある、血便が多い、お腹が硬くなるといったときは、早めに医療機関(強い症状は救急)を受診してください。
虚血性大腸炎とは?
虚血により、大腸粘膜に限局的(部位や範囲が局地的)に
- 浮腫(むくみ)
- びらん(ただれること)
- 潰瘍
- 壊死
を生じる炎症性の病変のことを虚血性大腸炎と言います。

虚血性大腸炎には、一過性型(いっかせいがた)・狭窄型(きょうさくがた)・壊疽型(えそがた)とあります。
- 一過性型・・・虚血性大腸炎の大部分が一過性型
- 狭窄型・・・急性期を過ぎた後に、腸管の狭窄をきたす
- 壊疽型・・・腸管壁の全層性壊死に至る(まれ)
という特徴があります。
虚血性大腸炎は、中高年から高齢者に多く、特に左側結腸に多く発生します。若い人に起こることもあります。

虚血性大腸炎の原因は?
- 便秘
- 排便時のいきみ
- 高血圧
- 動脈硬化
- 糖尿病
- うっ血性心不全
- 脳血管障害
- 腹部手術
腸管内圧の亢進(便秘やいきみなどによって)、基礎疾患や腹部手術の既往歴などによって起こります。
虚血性大腸炎の症状は?
- 腹痛
- 下痢
- 血便
が特徴で、特に腹痛は突然あらわれ、それに続くように水のような下痢や一過性の血便症状が出現します。

血便は比較的出血量は少なく、貧血やショックをきたすほどになることは少なく、症状は1・2週間で落ち着きます。
しかし、狭窄型ではそれよりも症状が長く続き、壊疽型では腹痛が強いうえに進行性で数日以内に腹膜炎の症状をともなってくることが多くあります。
また、高齢者などでは腹痛が目立たないこともあります。
血便が出るほかの病気として、大腸憩室出血については、大腸憩室出血とは?痛みのない血便の原因・治療・再発率と予防を解説でくわしく解説しています。
虚血性大腸炎の診断は?
- 血液検査
- 内視鏡検査
- 注腸造影
- CT検査
などの検査をおこないます。
血液検査
- 白血球増加
- CRP増加
- 赤沈亢進(赤血球沈降速度を調べる検査)
炎症すると白血球が増加しますが、炎症性疾患であるため、この白血球増加が確認でき、またCRP増加や赤沈亢進がみられます。
内視鏡検査
- 縦走傾向
- 発赤
- 浮腫
- 粘膜下出血
- びらん
などがみられ、問題のない部位との境界が明瞭です。
注腸造影
母指圧痕像(thumbprinting)や縦走潰瘍が特徴的です。
一過性のものの場合、数日でこれらの所見は消失します。
CT検査
下行結腸〜S状結腸といった左半結腸を中心に腸管の3層構造を保ったやや範囲の広い壁肥厚を認めるのが一般です。
周囲に脂肪織濃度の上昇を認めることもあります。
症例 70歳代女性 血便、腹痛

左半結腸に3層構造を保った広範な腸管壁肥厚を認めており、周囲脂肪織濃度上昇を認めています。
虚血性腸炎を疑う所見です。
症例 60歳代女性 左下腹部痛および血便

左半結腸に3層構造を保った広範な腸管壁肥厚を認めており、虚血性腸炎を疑う所見です。
虚血性大腸炎の鑑別診断は?
鑑別(他の疾患を除外)としては、
- 感染性腸炎
- 大腸癌
- 大腸憩室炎
- 抗生物質起因性腸炎
- 腸間膜動脈閉塞症
- クローン病
などが挙げられます。
鑑別にあがる抗生物質起因性腸炎のひとつ、偽膜性大腸炎については、偽膜性大腸炎とは?原因・症状・診断と治療薬、抗菌薬のあとの下痢に注意でくわしく解説しています。
鑑別にあがるクローン病については、クローン病とは?原因、症状、診断基準、治療法と完治するかをわかりやすく解説でくわしく解説しています。
虚血性大腸炎の治療は?
保存療法または外科的治療が選択されます。
保存療法
- 安静
- 輸液
- 絶食
を基本とし、一過性の場合は数日程度で症状が改善してきます。
また、必要に応じて鎮痛剤・鎮痙薬・抗菌薬が投与されます。
外科的治療
虚血が重度な場合
- 壊死型(麻痺性イレウス・腹膜炎「粘膜の壊死脱落や穿孔」)
- 狭窄
などの程度により、腸管切除手術をおこないます。
虚血性大腸炎の食事は?
治療中は、絶食となります。
治療後は医師の指導に従い食事を進めることになりますが、腸の負担にならない食事に気をつける必要があります。
つまり、脂質の多いもの・刺激物・消化の悪いものは控えるのが基本です。
また再発を予防するために重要なのは、便秘にならないような食生活を送ることで、水分を多く摂る・水溶性食物繊維(海藻類や果物類)を多く摂ることも必要です。

参考文献:
Brandt LJ, et al. ACG clinical guideline: epidemiology, risk factors, patterns of presentation, diagnosis, and management of colon ischemia (CI). Am J Gastroenterol. 2015;110:18-44. PubMed
内科診断学 第2版 P870
病気がみえる vol.1:消化器 P176・177
消化器疾患ビジュアルブック P108・109
新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P122・123
受診の目安
- 突然の腹痛に、下痢や血便が続く → 消化器内科(休日・夜間は救急外来)
- 腹痛が強くなっていく、お腹が硬い、吐き気や嘔吐、発熱がある → すぐに受診(腸管の血流障害が重い可能性)
- 血便が続く、ふらつく、顔色が悪い → 早めに受診
気になる症状や検査結果があれば、医療機関へ相談してください。
よくある疑問
虚血性大腸炎は何科で診てもらえますか?
消化器内科が基本です。強い腹痛や血便があるときは、救急外来のある医療機関を受診してください。
虚血性大腸炎は自然に治りますか?
多くは一過性型で、安静と絶食などで数日〜1・2週間ほどで落ち着くとされます(ACG 2015)。ただし、狭窄型や壊疽型のように経過が長引く、あるいは手術が必要になる場合もあるため、自己判断せず医師の診察を受けましょう。
再発しますか?
再発することがあります。便秘やいきみは原因の一つとされるため、水分や食物繊維をとり、便秘を避けることが予防につながります。持病(高血圧・糖尿病・動脈硬化など)がある人は、治療を続けることも大切です。
大腸カメラはいつ受けますか?
診断や他の病気(大腸がん・感染性腸炎・炎症性腸疾患など)との区別のために行われますが、時期は症状の強さによって異なります。担当の医師の指示に従ってください。
最後に
- 虚血により、大腸粘膜に限局的に壊死・浮腫・びらん・潰瘍を生じる炎症性の病変を虚血性大腸炎という
- 腸管内圧の亢進・基礎疾患・腹部手術既往歴が原因となる
- 突然の腹痛・下痢・血便が特徴
- 血液検査・内視鏡検査・注腸造影・CT検査などをおこない診断する
- 保存療法・外科的手術が選択される
- 便秘にならないような食生活を送ることで予防にもつながる
高齢者に多いといっても、若年者にも起こることはあります。
その場合、便秘などの影響も大きいため、日頃から便秘にならない食生活を送ることも重要です。





