脳神経系に腫瘍を生じさせる遺伝子疾患の難病の1つに神経線維腫症1型(NF-1)というものがあります。今回はこの神経線維腫症1型について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療法
をご説明したいと思います。
神経線維腫症1型とは?
多発性の神経線維腫とcafe-au-lait斑(カフェオレ)を特徴とする常染色体優性遺伝疾患で、vonRecklinghausen病(フォンレックリングハウゼン)とも呼ばれる母斑症の一つです。
遺伝性疾患なものの、突然変異の発生率が50~70%と高率でもあります。神経線維腫症は1型と2型がよく知られていますが、頻度が高いのは1型で、若年者に好発する特徴があります。
神経線維腫症1型の症状は?
皮膚症状として
- 腋窩に見られる、雀卵斑様色素斑
- 全身に見られる、カフェオレ斑
- 全身に見られる、皮膚神経線維腫
- 胸部に見られる、貧血母斑
また、皮膚以外の症状や病変として
- 軽度知能障害(多くは正常)
- 学習障害
- 痙攣発作
- 脳波の異常
- 眼に見られる、虹彩過誤腫
- 神経線膠腫
骨に見られる症状として
- 脊椎側彎
- 蝶型骨翼
- 胸郭の変形
- 骨欠損
- 低身長
- 長管骨の狭細化
- 湾曲
- 偽関節
などがあり、痒みなどの自覚症状はありません。これらは出生児から小児期、学童期にかけて現れ、加齢と共に症状が出現します。カフェオレ斑は出生児より見られることが多く、神経線維腫症は思春期頃から出現します。また、神経線膠腫は小児期に多く見られます。
深部の末梢神経にも神経線維腫が生じて脳神経ならびに脊髄神経の神経線維腫、髄膜腫、グリア細胞腫など中枢神経病変が現れることもあります。
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神経線維腫症1型の原因は?
常染色体優性遺伝疾患ですが、約半数の患者には家族歴がありません。17番染色体上に存在するがん抑制遺伝子・NF1遺伝子の突然変異に基づく発症と考えられています。
神経線維腫症1型の診断は?
特徴的な症状を確認し、CTやMRIで画像診断を行います。
画像診断
頭蓋内、脊柱管内の腫瘍の描出が重要です。神経症状が現れている場合は、頭部や脊髄周辺の腫瘍の有無を画像検査で調べます。カフェオレ斑と神経線維腫症が見られれば、診断は確実です。
- カフェオレ斑6個以上(最大径思春期前で5mm以上、思春期後は15mm以上)
- 2個以上の神経線維腫症または1個の神経鞘腫
- 腋窩あるいはそけい部の雀卵斑様色素斑
- 神経経膠腫
- 2個以上の虹彩小結節
- 骨病変(蝶形骨形成異常、長管骨皮質の菲薄化)
- 親、子供、兄弟姉妹に診断基準で明らかな患者がいる
上記のうち2項目以上を満たすものが診断の条件となります。
症例 70歳代男性
神経線維腫症1型と診断されており、全身の皮下に神経線維腫を多数認めていることがわかります。
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神経線維腫症1型の治療法は?
根本的な治療手段はありません。ですが、生命予後は良好であるため、対処的な治療を行います。
皮膚の色素斑に対しては、レーザー治療を試みることもあります。神経線維腫に対しては、その出現部位と大きさ、圧迫症状によって切除が必要です。
しかし、中には神経線維腫が悪性化し、悪性末梢神経鞘腫瘍となる場合も頻度は少ないものの、あります。
最後に
- 多発性の神経線維腫と全身のカフェオレ斑を特徴とする母斑症
- 腋窩や全身、脳や眼、骨に症状が現れる
- 常染色体優性遺伝疾患なものの、約半数の患者には家族歴がない
- 特徴的な症状を確認し、画像診断を行う
- カフェオレ斑と神経繊維腫症が見られれば、診断は確実
- 診断項目7つのうち2項目以上を満たせば、診断確定
- 根本的な治療手段はなく、対処療法を行う
- 稀に神経線維腫が悪性化し、悪性末梢神経鞘腫瘍となる場合もある
治療法が確立されていないため、色々な飲み薬や治療法を試して効果を見るしかありません。個人個人効果は異なりますが症状が改善されることもあるため、色々な方法を試みてみるのも良いでしょう。