乳がんの検診を定期的に受ける事で早期発見にもつながり、それにより治癒率も上がります。
その乳がん診断の方法の一つとして、乳腺MRI検査があります。
しかし、乳腺MRI検査とはどのような検査なのでしょうか?
また、検査の際に造影剤は必要なのでしょうか?
そこで今回は、乳腺MRIについて
- どんな検査?
- 造影剤は必要なのか
- 検査料金
- 他の検査との違い
- どんな人が受けるべきなのか
以上についてまとめました。
乳腺MRI検査とは?
乳腺MRI検査とは、強い磁力を発するMRI装置を使用して、乳房内部に認められる病巣を画像に映し出し、診断する検査方法です。
MRI検査では様々な撮像方法で乳腺を評価することができ、これらを組み合わせることでマンモグラフィーや乳腺エコー検査などで見つかったしこり(腫瘤)が
- 嚢胞(のうほう)
- 線維
- 出血
- 脂肪
などを含んでいるかといったことや、悪性(乳がん)が疑わしいかどうかなどを判定することができます。
また、腫瘍が見つかった場合には、その広がりがどの程度であるのかを評価することが可能です。
1回の検査で、両側の乳房を評価することができるため、実は反対側の乳腺にも腫瘍があったということの見逃しにも役立ちます。
また、他の検査よりも、癌を検出する感度はもっとも高いと言われています。
乳腺MRIと他の検査との違いは?
- 乳房触診
- マンモグラフィ
- 超音波検査(エコー検査)
一般的に上の3つは、乳がん検診でもおなじみのものです。
一方で、乳腺MRI検査は現状日本ではおなじみとはまだまだいえません。
上の3つが、乳がん検診でスクリーニングとして用いられる一方で、基本的に乳腺MRIはその精密検査(精査)に当たります。
乳腺MRI検査は、上記に挙げた他の検査法では十分な判断が難しい場合などに行なわれます。
乳腺MRI検査の弱点は?特異度が低い!?
すごいですね。では、乳腺MRIは完璧ですか?
どんな検査にも完璧はありません。
乳腺MRI検査は、他の検査よりも感度は高いのですが、特異度が低いことが知られています。
特異度が低いということは偽陽性が多いということで、実際は病気じゃないのに病気として検出してしまうことが多いということです。
乳腺MRI検査をしてしまったがために新たな心配が増えた。ということが起こる可能性があります。
この場合、MRIで新たに見つかった病変については、再度、エコーで観察し、生検にて病理学的診断を行なうことが推奨されています。
これをsecond look(セカンドルック)超音波検査と言います。
マンモグラフィーや乳房超音波検査から、second look(セカンドルック)超音波検査となる流れは上のようになります。
乳腺MRI検査はどんな人が受けるべき?適応は?
先ほど述べたように、乳腺MRI検査の適応として、マンモグラフィや超音波検査(エコー検査)で良悪性がはっきりしないときなどに行われます。
ただし、乳腺MRI検査の適応はそれだけはありません。
主に海外のガイドラインによると以下のような場合で、乳腺MRI検査は適応となります。
- 乳房のしこりの質的診断
- 乳がんの術前診断
- 乳がんの術前化学療法の効果判定
- 乳房の術後診断
- ハイリスク女性のスクリーニング
乳房のしこりの質的診断
乳房にしこりがあるけれども、マンモグラフィや超音波検査(エコー検査)で良悪性がはっきりしないときです。
乳腺MRI検査を行うことにより、しこりの性状にさらに情報が追加されます。
最終的な良悪性は、しこりの組織を生検し、病理診断しないとわかりませんが、このMRI検査により、そのしこりがより良性らしいのか、悪性らしいのかの情報が追加されることがあります。
乳がんの術前診断
病理診断により悪性であることがわかっている場合に、
- 乳がんがどの程度広がっているのか
- 乳がんが周囲へ浸潤しているかどうか
- リンパ節転移を疑う所見がないか
- 指摘されている乳がん以外に乳がんを疑う所見がないか
- 反対側の乳腺には乳がんを疑う所見がないか
と言ったことを術前に評価する目的で乳腺MRI検査が行われます。
せっかく手術したのに、もう一つ乳がんがあった!では困りますからね。
また、思ったよりも乳がんが広がっていた、転移があったということであれば手術は一旦延期されることもあります。
乳がんの術前化学療法の効果判定
病理診断により悪性であることがわかっている場合、乳がんの組織型や大きさなどにより、手術の前に化学療法(抗がん剤治療など)が先に行われることがあります。
(これを術前化学療法(NAC(読み方はナック):neoadjuvant chemotherapyの略
neoadjuvantはネオアジュバントと読み、手術前の補助治療という意味です。)
この場合、化学療法の前後で乳がんがどの程度小さくなったのかを評価する効果判定として乳腺MRIが撮影されます。
乳房の術後診断
乳がんなどで乳房を手術した後に、乳がんが再発していないかなどをチェックする目的で乳腺MRIが撮影されます。
ハイリスク女性のスクリーニング
現状日本では、すべての女性にスクリーニング目的として乳腺MRIは施行されていません。
遺伝性乳癌のリスクがある女性(BRCA1もしくはBRCA2遺伝子変異を持つ女性)に、スクリーニング目的として乳腺MRIが施行されることがあります。
参考)
- American collage of Radiology (ACR): Breast imaging and intervention, practice guidelines (2008)
- Breast MRI: guidelines from the European Society of Breast Imaging (2008)
- 臨床画像vol.24.No.4:p453,2008
乳腺MRI検査に造影剤は必要なの?
乳腺MRI検査では、造影剤が必要となる場合がほとんどです。
乳腺MRI検査では、静脈から造影剤を注射をして、しこり(腫瘤)が造影されるか否か、どのように造影されるかをチェックします。
造影剤を用いた乳腺MRIではダイナミックカーブが重要
乳腺MRI検査で、腫瘤の良悪性の判別に最も重要なのが、ダイナミックカーブ(Time intensity curveと呼ばれる)と言われるものです。
これは、造影剤を投与して、経時的に撮影していき、その腫瘤の染まりの程度がどのように変化していくかをグラフにしたものです。
上のように
- 2分までの早期によく染まる=rapid、中等度染まる=medium、ゆっくり染まる=slow
- 2分以降の遅延相で染まりが増強していく=persistent、あまり変わらない=platau、染まりが洗い出される=washout
の9つのパターンに分けることができます。
この中でも、悪性の場合は、造影剤を投与して早期に造影(rapidのパターン)され、徐々に洗い出される(wash outされる)ことが多いのです(rapid-washoutパターンと呼ばれる)。
このダイナミックカーブのパターンを見ることが造影剤を用いる最大の目的と言えます。
ただし、個人の体質や持病、妊娠中などの理由により造影剤が使えない場合があるので注意が必要です。
症例 50歳代 女性 左乳房のしこり
左乳腺C領域に腫瘤性病変を認めておりダイナミックカーブにて早期濃染され、washoutされています。
手術の結果、乳がん(組織タイプは浸潤性乳管癌(充実腺管癌))と診断されました。
乳腺MRI検査の料金は?
乳腺MRIの場合は、他のMRI検査と異なり、乳房MRI撮影加算が100点加算されます。
また乳腺MRIの検査は造影剤を用いた検査がほとんどであるため、
造影剤を用いた乳腺造影MRI検査の場合、
- 保険適用外:23,000円~43,000円ほど
- 保険適用:6,900円~12,900円ほど
が料金の目安となります。
まとめ
- 乳腺MRI検査とは、強い磁力を発するMRI装置を使用し、乳房内部に認められる病巣を画像に映し出し診断する方法である。
- 乳腺MRI検査では造影剤が必要となる場合がほとんどである。
- 乳腺MRI検査の費用の相場は、保険適用3割負担で6,900円~12,900円である。
- 乳腺MRI検査は、乳房触診やマンモグラフィ、超音波検査では十分な判断が難しい場合に行なわれる。
世界中で多くの女性が乳がんと闘っています。
日本だけでも発症する方は多いのですが、早期発見できれば、生存率も極めて高いとされています。
ですから、とくにリスクが高いとされる40代の方は、万が一に備えて定期的に健康診断を受ける様にして下さい。