
脳腫瘍の1つに髄膜腫(読み方は「ずいまくしゅ」)があります。
ほとんどは良性で、症状を起こすこともまれですが、中には悪性のものもあります。
多くは人間ドックなどの頭部のCT検査やMRI検査でたまたま見つかるものです。
実はこの髄膜腫は、頭の中にできる腫瘍の中で最も多いもののひとつとされています(EANO 2021)。
ほとんどは良性なのですが、場所が脳だけに
「手術は必要なのか?」
といったことが気になります。
そこで今回は、髄膜腫(英語表記で「meningioma」読み方はメニンジオーマ)についてご説明しつつ、手術の適応基準や予後についてもお話ししたいと思います。
- 好発部位
- 好発年齢
- 症状
- 画像診断
- 治療法
- 手術の適応基準
- 再発
上記のような流れでご説明しますので、ぜひ参考にされてください。
先に結論
- 小さくて症状がない髄膜腫は、手術せずMRIなどで経過観察することが多い腫瘍です。
- 手術を考えるのは、症状がある・増大が速い・大きい・重い症状が出うる場所にある場合で、年齢や全身状態もあわせて決めます。
- 無症状の髄膜腫を調べた報告のまとめでは、増え方が止まる・ゆっくりになるものが約半数で、急速に増えるものは4分の1未満でした(Nakasu 2020)。
- 症状が出やすい目安として、年間2.1cm³以上の増大が最も強い指標と報告されています(Nakasu 2020)。
- 手術後の再発は、取りきれたか・腫瘍の悪性度で変わります。
髄膜腫とは?
脳のクモ膜の表層細胞から発生して、硬膜を巻き込んで発育する腫瘍です。

ほとんどは無症状で、サイズもほとんど変わらないものです。
ただし、中には徐々にサイズが大きくなるものもあります。
その場合、周辺脳や脳の神経、静脈洞などを徐々に圧迫しながら発育するため、それにともない様々な症状が出現することがあります。
好発部位
実はこの髄膜腫、色々なところに発生します。
- 大脳半球円蓋部
- 大脳鎌
- 傍矢状洞部
- 鞍結節部
- 嗅窩部
- 蝶形骨部
- 海綿静脈洞部
- 小脳橋角部
- 小脳テント
- 錐体斜台部
- 大孔
- 側脳室
などです。
徐々に時間をかけて腫瘍が大きくなっていき、たまたま人間ドック等でCTやMRIなどを撮って発見されることが多いものです。
好発年齢
女性に多い傾向にあります。
女性ホルモンの影響が原因の1つとしても考えられていますが、男性でも起こることはあります。
その中でも40代〜70代、中年から高齢者に多いといわれています。

頭のMRIで偶然見つかるきっかけとなる脳ドックについては、脳ドックを受けるべき人はどんな人?で解説しています。
髄膜腫の症状は?
基本的に腫瘍が小さければ症状もありません。
ですが、大きくなってくると症状も出てきます。
症状は発生した場所によっても異なりますが、腫瘍が神経を圧迫したり、圧が高まってしまうことによって以下のような症状が出ることがあります。
- 視力視野障害
- 顔面神経麻痺
- 聴力障害
- 運動障害
- 頭痛
- めまいやふらつき
- 嘔吐
- 意識障害
- てんかん発作
物が二重に見える複視や、顔面の神経障害による麻痺、頭蓋内圧亢進症状や局部的な症状が出たりします。
髄膜腫のCT,MRI画像診断は?
髄膜腫は文字通り髄膜を構成する細胞からなる腫瘍であり、この髄膜というのは脳を囲む膜の事です。
つまり、この髄膜腫というのは脳腫瘍ではありますが、脳内ではなく脳の外にできる腫瘍です。
画像診断ではこのことを示唆する
- 硬膜に広く接するdural tail sign
という形態を示すことがあり、脳実質外腫瘍の特徴とされます。
その上で、
- CTではやや高吸収
- MRIでは、T1強調像で等信号、T2強調像で等〜やや高信号を示し、造影剤により均一な造影効果
を示します。
もちろん典型的な髄膜腫ばかりではなく、石灰化や嚢胞変性、壊死などを伴うこともあります。
【症例】90歳代男性

【CT所見】右前頭部に一部でdural tail signを呈する脳実質外の高吸収腫瘤あり。
髄膜腫を疑う所見です。
【症例】70歳代女性

【MRI所見】大脳鎌と接する腫瘤あり、dural tail signを呈している。
髄膜腫を疑う所見です。
【症例】60歳代女性

【MRI画像所見】 左の髄膜腫小脳橋角部に脳実質外腫瘤あり。髄膜腫を疑う所見です。
【症例】70歳代男性

【MRI所見】大脳鎌右側に髄膜腫あり。また右半卵円中心に静脈奇形の所見あり。
【症例】70歳代男性

【MRI所見】頭蓋底の左蝶形骨縁に造影効果を有する脳実質外腫瘍あり。
髄膜腫と診断され手術となりました。
髄膜腫が見つかった後のフォローは?
基本的に脳神経外科の受診となります。その後のフォローについては、脳ドックのガイドライン2014では、髄膜腫らしき腫瘍が見つかった場合、一例として
- 蝶形骨縁内側型の髄膜腫
- それ以外の髄膜腫
に分けます。
なぜ分けるかというと、蝶形骨縁内側型の髄膜腫は、視力障害を生じやすい場所にあるため、手術を含めた積極的な対応が検討されるためです。
一方で、それ以外の髄膜腫の場合は、MRIで経過観察していきます。
経過観察の間隔の一例は、最初の2回は半年ごと、その後変化がなければ1年ごと、というものです。実際の間隔は、場所・大きさ・年齢などをふまえて主治医が決めます。
- 蝶形骨縁内側型の髄膜腫:手術を含めた積極的な対応を検討
- それ以外の髄膜腫:MRIでフォロー(間隔の一例:6か月、6か月、以後1年毎)
健診のMRIで見つかる別の脳の腫瘍として、下垂体腺腫とは?症状・診断・治療と、健診で見つかったときのMRIフォローの目安もあわせてご覧ください。
髄膜腫の治療方法は?
基本的に腫瘍が小さく症状がなければ、すぐには治療を必要とせず、経過観察となります。無症状の髄膜腫を調べた報告のまとめでは、画像上わずかに大きくなるものは約3分の2ありましたが、その伸びは4〜5年ほどで頭打ちになる傾向があり、増え方が止まる・ゆっくりになるものが約半数、急速に増えるものは4分の1未満でした(Nakasu 2020)。
ですが、腫瘍が大きくなり症状が出てくると治療が必要になりますし、部位によって今後の重篤な症状が出てくる可能性のあるものは治療の対象になります。
- 手術療法
- 放射線療法
- 保存療法
手術療法
腫瘍を摘出する目的で行われます。基本的には全摘出を目指しますが、場所によっては取りきれないこともあります。
放射線療法
大きくはないが場所により重篤な症状が出てくる可能性のあるものに対し行われますし、術後取りきれなかった腫瘍に対しておこなわれます。
保存療法
腫瘍が小さかったり、患者の年齢が高齢、もしくは体力が持たない場合等に手術は行わずに経過観察をして様子を見る場合もあります。

がんではない脳の腫瘍としては、神経鞘腫とは?がんではない?原因・症状・診断(MRI)と治療法のまとめでまとめています。
髄膜腫の手術適応は?どうやって決める?
蝶形骨縁内側型以外の髄膜腫は、MRIによる画像検査でフォローしていくことは上に述べましたが、その後どういうタイミングで手術をすることがあるのか・・・気になりますよね?
- 腫瘍による神経圧迫などで症状がある場合
- 腫瘍の増大速度が早い場合
- 腫瘍のサイズが大きい場合
- 年齢
などを考慮して決められます。
つまり、高齢者や手術によるリスクが高いと判断された場合は、放射線療法などを選択することになります。
| 経過観察を続けやすい例 | 手術や放射線治療を検討する例 |
|---|---|
| 小さく、症状がない | 症状がある(神経の圧迫、頭蓋内圧が高い症状など) |
| MRIで大きさがほぼ変わらない | 増大が速い(年間2.1cm³以上は症状が出やすい目安、Nakasu 2020) |
| 高齢や持病で手術の負担が大きい | 場所によって重い症状が出る可能性がある |
手術後の再発は?
手術をしても術後しばらくは症状が残る場合もありますが、徐々に症状は改善されていきます。
基本的に良性腫瘍であるため、摘出範囲が大きいほど再発も少なく、多くは予後も良好です。
しかし、
中には部位によって後遺症が残ったり、腫瘍を取りきれなかったりということもあります。
ほとんどの髄膜腫は良性ですが、術後腫瘍の病理検査で悪性と判明するものも中にはあります。
そうなると話はまた別で、再発の可能性もあります。
- 参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P430・431
- 参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P236・237
- 参考文献:内科診断学 第2版 P1038〜1040
よくある質問
Q. 髄膜腫が見つかりました。すぐ手術が必要ですか?
症状がなく小さい場合は、すぐには手術をせず、MRIなどで経過を見ることが多いです。症状が出てきたり、大きくなったりしたときに、手術や放射線治療を考えます。
Q. 何科を受診すればよいですか?
脳神経外科です。人間ドックで見つかった場合も、脳神経外科への受診を勧められます。
Q. 小さくなることはありますか?
多くは大きさが変わらないか、ゆっくり増えます。画像上、増え方が止まる・ゆっくりになるものが約半数という報告があります(Nakasu 2020)。大きさの変化は、定期的なMRIで確認します。
頭痛・視力の異常・けいれんなど、気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
Nakasu S, Nakasu Y. Natural History of Meningiomas: Review with Meta-analyses. Neurol Med Chir (Tokyo) 2020 PubMed
Goldbrunner R, et al. EANO guideline on the diagnosis and management of meningiomas. Neuro Oncol 2021 PubMed
最後に
- 髄膜腫は脳のあらゆる場所に出来る
- 中年〜高齢、特に女性に多い
- 腫瘍が大きくなると神経を圧迫したり、圧が高まって症状が出る
- 腫瘍のある部位によって症状が異なる
- 手術療法・放射線療法・保存療法という治療法がある
- 基本的には良性のものが多いが、中には悪性のものも
- 悪性のものでは、再発の可能性が高くなる
こういう病気もあるからこそ、定期的な人間ドックは必要なんですよね。若い方でも色々な病気の可能性はありますが、中高年になると特に色々な病気の発生が考えられます。
まずは、自分の体に日頃から注意し、気になる症状がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。





