尿に白血球が出る病気にはどんなものがありますか?
試験紙を用いる検尿のみでは、もし異常が発見されたとしても、どのような病気が考えられるのかということは尿検査だけで推定することは困難です。
そこで検尿で異常が発見された際には、その尿の沈渣を調べることになります。
試験紙法では、試験紙に尿をつけて検査をしますが、尿沈渣では尿を遠心分離機にかけて、顕微鏡で観察します。
この検査をする事でさらに多くの情報が得られます。
尿沈渣により、異常な部位や原因の推測が可能となり、特に腎臓病の検査には必要不可欠な重要な検査となります。
しかし、その尿沈渣において白血球が多い!(膿尿である)と診断されてもそれが何を示しているのか理解できなければ、ただ不安になってしまうものだと思います。
そこで今回は、
- 尿沈渣で白血球が多い原因
- 異常があった場合はどうなるのか
- 尿沈渣で白血球が多い場合考えられる病気
- 白血球の種類から考えられる病気
以上について解説します。
尿沈渣で白血球が多い!基準値は?
白血球の基準値は男性と女性で異なります。
- 男性の場合・・・1個以下/HPF(1視野に1個以内)
- 女性の場合・・・5個以下/HPF(1視野に5個以内)
HPF(Hi power field)という単位は顕微鏡で400倍に拡大した1視野のことです。
その視野の中に女性であれば白血球が5個以上、男性であれば1個でもあれば異常ということになります。
検査結果で「白血球:5-9個/HPF」という結果の場合はこの400倍にした顕微鏡の1視野の中に白血球が5〜9個あるという意味になります。
ただし、白血球が5個以上あっても一過性のものである場合もあります。
特に女性の場合は、オリモノ(帯下)が混入していたりすると、白血球の数値が高くなる場合もあります。
そのため、女性の正常値が高く設定されています。
白血球が多い場合の詳しい原因と疾患については、後述したいと思います。
では、白血球が基準値よりも高い場合について次で見ていきましょう。
白血球が基準値よりも多い場合は?
その検査結果から再び異常値が出て感染症が疑われれば、細菌培養検査で原因となっている菌を調べることになります。
では、次に尿沈渣で白血球が多い場合(膿尿)に考えられる原因や疾患について見ていきましょう。
細菌についてはこちらの記事をどうぞ→尿沈渣で細菌3+⁈原因や対処法は?
尿沈渣で白血球が多い場合考えられる原因や病気は?
尿沈渣で白血球の数値が高くなる場合は主に泌尿器系(尿路)と腎臓系の疾患が考えられます。
そして前でも軽く触れましたが、白血球が5-9や10-19などの数値が出ても、異常がない場合もあります。
- 採尿時に、中間尿がうまく採れなかった
- 女性の場合、オリモノが混入した
- 長期間、ステロイド剤の投与を受けている
疾患がなくても、これらの原因がある場合、多少の白血球が混入することがあります。
なぜ中間尿だと白血球が多くなるかというと、出始めの尿には尿道口周辺の粘膜にある、赤血球、白血球、細菌などが混入してしまうためです。
また、オリモノが混入することでも白血球が陽性となることもありますので、女性の場合は特に数値が高くなりやすくなります。
- 泌尿器系の疾患
- 腎臓系の疾患
- それ以外の疾患
これらについてまとめてみました。
泌尿器系(尿路)の疾患がある場合
泌尿器系(尿路)で考えられる疾患は以下です。
- 膀胱炎
- 尿道炎
- 前立腺炎
- 精嚢炎
- 前立腺肥大症
- 尿路狭窄
- 膀胱尿管逆流症
- 膀胱腫瘍
- 神経因性膀胱による残尿での水腎症
- 腎・尿路結石
- カテーテル使用などの異物挿入による粘膜の損傷や感染
尿に白血球が多い場合には炎症が起こっていると考えられ尿道炎や膀胱炎・前立腺炎・精嚢炎を起こしている可能性が高いです。
白血球が増加する90%以上の原因がこれら尿路感染症です。
これは尿道などにバイ菌が侵入するとそれを殺菌しようと白血球が尿の中にもでてくるからです。
特に女性の場合は、男性と比べて尿道口から膀胱までの距離が短く膀胱炎などを起こしやすくなっています。
年を重ねると共に尿の量が減ったり出が悪くなり、バイ菌を流しだす力も弱くなっているため、尿路感染を起こしやすくなるので、水分をしっかりと摂ることが大切です。
また、炎症だけではなく、尿路狭窄や膀胱尿管逆流症・膀胱腫瘍・前立腺肥大症・神経因性膀胱による残尿での水腎症などは細菌感染を受けやすいため、白血球が多くなります
では次に、腎臓系の疾患がある場合についてみていきましょう。
腎臓系の疾患がある場合
腎臓系で考えられる疾患は以下です。
- 腎盂腎炎
- 水腎症
- 間質性腎炎
- 腎結核
- 糸球体腎炎
- ネフローゼ症候群
- 骨髄腫腎
この他にも尿路系、腎臓系以外でも白血球が多くなる場合があります。
次で見ていきましょう。
腎・泌尿器系以外の疾患
腎臓・泌尿器系以外で考えられる疾患は以下です。
- 淋病
- 腫瘍
- ループス腎炎に代表される膠原病
- 寄生虫症
- 腎移植後の拒絶反応
- 妊娠中毒症
- 長期間にわたるステロイド投与
- 異物(カテーテル使用など尿路に異物がある場合)
白血球が多い時に考えられる疾患は以上ですが、白血球の種類からも予測できます。
以下で説明しますね。
白血球の種類別の疾患
白血球には色々な種類があり、白血球はほとんど(90〜95%)が好中球です。
特に尿路感染症を起こしている場合には好中球という白血球が見られます。
他に
- 好酸球
- リンパ球
- 単球
があり、これらの種類によって、ある程度の病気が予測できます。
以下の表を参考にしてみてください。
その他は、白血病細胞や悪性リンパ腫細胞です。
この場合、形質細胞も出現することがあります。
他にも、白血球を染色した際の分類でも疾患がある程度特定できます。
怖い病名ばかり並んでいますが、上記でも述べたように、白血球は正常な場合でも混入する場合がありますので、再検査の結果を待ちましょう。
参考文献
- 最新 尿検査 その知識と病態の考え方 第2版 p.84
- 尿沈渣ガイドブック 東海大学出版会 p.134-136
尿沈渣に関する他の記事はこちら
まとめ
- 尿沈渣の基準値は400倍にした顕微鏡の1視野に5個以内
- 白血球はオリモノの混入やステロイド剤の長期服用や採尿の仕方によっても陽性になる
- 白血球が多い場合考えられる病気は泌尿器系の疾患・腎臓系の疾患
- 泌尿器系の疾患・腎臓系の疾患以外の疾患の場合もある
検査に際して出始めの尿を採取すると雑菌が混じってしまい検査に誤差が生じる可能性があります。
また女性では腟の分泌物が混入することで扁平上皮細胞の増加を伴う白血球増加がみられることもあり必ずしも尿路感染があるとは限りません。
この様な点から必ず何かの疾患があると決め付けず再検査の結果を待つようにして下さい。