肺が正常に機能しているかを調べる検査で使われる検査機器を、スパイロメーターといいます。
このスパイロメーターを用いて測定される数値を知る事で、どの様な肺の病気があるのかがわかります。
そこで、今回はそのスパイロメーターについて
- 基準値
- 見方
- わかる病気
についてまとめました。
スパイロメーターの基準値は?
努力性肺活量
肺一杯に息を吸い込み、最大の速さで、一気に吐き出した空気の量をチェックします。
基準値:男性→3500ml・女性→2300ml2)
ただし、この基準値はあくまでも目安で、年齢・性別・身長によっても異なります。
%肺活量
性別や年齢から予測される肺活量と実測肺活量を比較し、その比率をチェックします。
基準値:80%以上3)
1秒量
努力肺活量のうち、最初の1秒間に吐き出された空気の量をチェックします。
基準値:70%以上4)
スパイロメーターの見方は?
呼吸機能の検査に使用される機器、スパイロメーターから全肺気量・肺活量などを測定する事が可能です。
測定された数値は、スパイログラムという波グラフに表され、検査結果の数値は、フローボリューム曲線というグラフに表示されます。
これは、
- 縦軸=流量
- 横軸=容量
で表され、健康な方のフローボリューム曲線はキレイな山を描く線になりますが、気管支喘息などの病気が疑われる場合は、下降線のへこんだ様な形になります。
呼気気流速度の最大値をピークフローといいます。
そして肺気量の50%を呼出した瞬間の呼気気流速度、25%の部分では努力肺活量の75%を呼出した呼気気流速度を見ます1)。
上記で述べた、スパイログラムとフローボリューム曲線から、肺の換気機能を表す項目には、以下の3つがあります。
- 努力性肺活量
- %肺活量
- 秒率
これらの基準値を割り出すことで、疑われる病気を発見する事につながります。
スパイロメーターの詳しい使い方はこちら→スパイロメーターとは?使い方や原理を徹底解説!
スパイロメーターで異常の場合、考えられる病気は?
- 努力性肺活量→低下が認められる数値
- %肺活量→80%以下の場合:拘束性換気障害(肺が萎縮している)
- 1秒量→70%以下の場合:閉塞性換気障害(気道が狭くなっている)5)
がありますが、主な疾患によりフロボリューム曲線にもパターンがありますので、分かりやすくフロボリューム曲線とともに説明します。
拘束性換気障害とは?その原因は?
拘束性換気障害とは、肺が萎縮して肺の容積が減少する病態です。
これには、肺自体の容積が減少する拘束性肺疾患だけでなく、神経や筋肉、胸郭の異常で正常よりも肺が膨らまない疾患も原因となります。
拘束性肺疾患に含まれる疾患
- 肺線維症
- 間質性肺炎
- 肺炎
- 無気肺
- サルコイドーシス
- 塵肺
- 肺切除後 など
神経筋疾患・胸壁疾患
このような疾患が、拘束性換気障害の原因となります。
これらの疾患が原因であることを突き止めるには、胸部レントゲンや、胸部CTの画像検査が重要となります。
拘束性換気障害のフローボリューム曲線は?
排気量が減少しているため、曲線の幅が狭くなり、ピークフローも低下しているのがわかります。
閉塞性換気障害とは?その原因とフローボリューム曲線は?
一方で閉塞性換気障害とは、気道の狭窄によって、息を吐くこと(呼出という)が不十分になる病態です。
- 喘息
末梢気道が全体的に狭くなっているため、気流速度が低下します。
- COPD
- びまん性汎細気管支炎
ピークフローが低下し、末梢に高度な狭窄があるため、ピーク以降気流速度が急激に低下します。
上気道閉塞パターン
- 悪性腫瘍
- 炎症性瘢痕などによる上起動の狭窄
上気道が閉塞しているため、気流速度が一定以上に上昇せず、このように台形の形となります。
スパイロメーターで異常を認めたら?
検査の結果、何らかの病気が疑われる場合には、呼吸器科という専門科を受診します。
必要に応じて以下の精密検査が行なわれます。
- 胸部CT
- 胸部X線
- 動脈血ガス分析
- 血液検査など
これらの検査で病気が判明しましたら治療を行うという流れが一般的です。
参考文献:
1)5)病気がみえる vol.4:呼吸器 P58~63
3)4)よくわかる検査数値の基本としくみP178・179
最新 健康診断と検査がすべてわかる本P150・151
新 病態生理できった内科学 2呼吸器疾患 P60~65
参考サイト:
2)肺機能検査(スパイロメーター)
最後に
換気機能異常は、スパイロメーターをすることによって判定できますが、閉塞性換気障害はこのフロボリューム曲線を見ると、気道閉塞の部位をある程度判定できます。
そのある程度判定できたことを参考に、画像診断等さらに詳しい検査をすることで、病気の詳細を知ることができます。
スパイロメーターはあくまでも疾患の手がかりを探す検査であって、これだけで確定診断というわけではありませんが、他の検査に比べ簡便におこなえます。
そのため、予想もつかない疾患を探るよりもある程度予想ができるため、患者の負担を減らすことができるのです。