人間ドックや健康診断の胸部CT検査で「肺尖部ブラ(bulla)」と記載されることがあります。

胸部レントゲンで右肺尖部(はいせんぶ)ブラまたは嚢胞影」

「肺尖ブラの疑い」

などと指摘されると「肺尖部ブラって何のこと?」って不安になってしまいますよね?

そこで今回は、肺尖部(はいせんぶ)ブラについて

  • 症状
  • 診断
  • 治療法

についてイラストや実際のCT画像を見ながら、動画も交えてわかりやすく解説しました。

肺尖部ブラとは?

肺尖部(はいせんぶ)にできたブラのことです。

肺尖部とは、下のように肺のてっぺんのエリアを指します。

そもそもブラ(bulla)とは?

肺胞というガスを交換する小さな空間の間の隔壁が決壊してしまったために、融合して大きな空間になってしまったもののことで、直径が1cm以上、壁の厚さは1mm以下と薄めです。

ブレブ(Bleb)とは?

ブラと似たものにブレブがあります。

肺胞の外で、胸膜(下結合織)内にある空気が貯留した状態のものをブレブと言います。

従って、内部は空気のみで肺実質は含まれていません。

また、画像や外科的(肉眼)で見るブレブは、胸膜下の肺気腫やブラが含まれています。

 

このブラとブレブはレントゲンやCTで鑑別できるものではありません。

ですので、ブラなのかブレブなのかは区別は重要ではありません。

 

ブラ(Bulla)やブレブ(Bleb)を好発しやすい人は?

好発しやすい人は

  • 高齢者
  • 喫煙者
  • 男性
  • 高身長
  • 痩せ型
  • 胸板が薄い人

が挙げられます。

肺尖部ブラは、文字の通り肺尖部(はいせんぶ)に出来るものです。

肺尖部ブラは加齢によって肺気腫などになると多発しますが、1・2個程度なものが多く、その際、症状もなければ経過観察となることが多くあります。

また、喫煙が関係するとも言われています。

下でも説明しますが、肺尖部ブラが、胸膜腔で破れると自然気胸を起こします。

特発性自然気胸は圧倒的に男性に多く発症します。

ブラやブレブは、伸長が高いほど、肺尖部の胸腔内圧が低下し、形成されやすいものです。

それ以外に痩せ型や胸板が薄い人も肺が拡張されやすく、ブラからブレブになりやすいとされています。

肺尖部ブラの症状は?

肺尖部ブラがあるだけでは症状が出ないことが多いです。

しかし、以下のような症状が現れることもあります。

  • 呼吸困難
  • 胸の痛み
  • 胸が苦しい
  • 動悸

このような症状が現れた場合、嚢胞が破裂して空気が漏れ出し、気胸を起こしている場合もあります。

また、10cmを超える巨大化したブラ(巨大ブラ)によって健常な肺が圧迫され縮小し、このような症状が出ることもあり、症状が現れるのには、その嚢胞の状態や個数、大きさが関係します。

 

肺尖部ブラの診断は?

胸部X線でも診断が出来ることがありますが、更に詳しく診断するにはCT検査が有用です。

胸部CT(横断像)におけるブラのイメージはこんな感じです。

ちなみに、CT検査でもブラとブレブの区別がつきません。

ブラは肺胞自体が崩れている、ブレブは肺胞自体は崩れていないといった違いはありますが、それを肉眼で確認することは不可能で、区別しても臨床意義はないため、まとめてこれらをブラと診断します。

ちなみにレントゲン(単純X線)でブラがみられるのは中等度以上の肺気腫のみとされます。

肺気腫があれば肺がんのリスクも高くなるため、レントゲンでブラが見つかった場合は、CT検査で精査となることがあります。

その他、ブラのサイズが大きくなって来たり、壁の肥厚を認めた場合、ブラの内腔に液体貯留が出現して来たときなどにはCT検査で精密検査を行うことが多いです。

 

では、実際の症例の画像を見てみましょう。

症例 40歳代男性 左胸痛

胸部CTの肺野条件の横断像(輪切り)です。

両側の肺に巨大なブラを多数認めています。左(向かって右側)では肺の構造がなく空気だけのエリアがあります。

これは胸腔に漏れ出た空気であり、ブラやブレブが破れて自然気胸を起こした状態です。

症例 20歳代男性

こちらも胸部CTの横断像です。

こちらの症例は肺尖部に2箇所ブラを認めています。

さらに右側(向かって左側)には一部で肺の構造がなく空気だけのエリアがあります。

これは上の症例と同様に胸腔に漏れ出た空気であり、ブラやブレブが破れて自然気胸を起こした状態です。

 

このようにブラは気胸を起こして胸痛といった症状を起こすことがありますが、気胸が起こらななければ、通常は無症状です。

こちらの動画で肺尖部のブラを見てみましょう。こちらは気胸は起こしてない無症状の方です。

肺尖部ブラの治療法は?

基本的には症状がなく、数が少ない、ブラが小さい場合には、経過観察で済む場合が多くあります。

ですが、ブラが片肺の3分の1以上となる大きさ(巨大気腫性嚢胞「巨大ブラ」)のものだったり、気胸を繰り返す様な場合などには、外科的手術で、ブラを切除する必要が出てきます。

胸腔鏡と自動吻合器により、3〜4カ所の穴を開けるだけで行う、患者の負担を少なくした手術方法もあります。

肺尖部ではブラの他に、胸膜肥厚を指摘されることがあります。
→胸膜肥厚についてはこちらにまとめました。【画像あり】胸部レントゲンで肺尖部に胸膜肥厚!これって異常?

最後に

肺尖部ブラについてまとめました。

  • 先天性に末梢気管支の先(肺尖部)に出来た閉塞性の嚢胞
  • 高齢者・喫煙者・男性・高身長・痩せ型・胸板が薄い人に好発
  • 症状が出ない場合も多い
  • 嚢胞が破裂、気胸をおこしてる場合、症状が出る
  • X線やCT検査で診断する
  • 経過観察となる場合が多い
  • 大きさが大きくなったり、気胸を繰り返す場合には、外科的手術の適応となる

 

基本的に気胸などを起こして症状を起こさない限りは、ブラは経過観察となります。
悪性疾患ではないので、過度な心配は必要ありませんが、サイズが大きくなっていかないかなど経過を追うことは大事と言えます。

参考にしていただければ幸いです。

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