健康診断でリパーゼが高いと言われたら?アミラーゼとの違い・原因・受診の目安

健康診断の血液検査で「リパーゼが高い」「膵酵素が高め」と書かれていると、膵臓に悪いところがあるのではないかと不安になる人は多い。

結論からいうと、リパーゼは主に膵臓の病気を調べる血液検査で、急性膵炎の診断に使われるが、高いからといって膵炎とは限らない。上腹部や背中の強い痛み、吐き気や嘔吐があるときは早めの受診が必要である。一方、症状がなく、軽く高いだけの場合は、まず再検査で確かめるのが一般的な進め方である。

この記事では、リパーゼとは何か、アミラーゼとの違い、基準値の考え方、高くなる原因、受診の目安を整理する。

健診でリパーゼが高めと出ました。アミラーゼは正常です。膵臓が悪いのでしょうか?
リパーゼだけが高いこともありますが、それだけで膵臓の病気と決まるわけではありません。腹痛などの症状があるか、ほかの検査はどうかを合わせて見ます。症状があれば早めに、なければ再検査を受けてくださいね。
この記事のポイント

  • リパーゼは膵臓でつくられる消化酵素で、膵臓に炎症があると血液中に増える。
  • 急性膵炎の診断では、アミラーゼよりリパーゼのほうが感度が高く、高い状態が長く続くとされる。
  • 肝臓や腎臓の病気でも上がることがあり、リパーゼが高い=膵炎とは限らない。
  • 強い腹痛や背中の痛み、嘔吐があるときは、数値にかかわらず早めに受診する。

リパーゼとは

リパーゼは、膵臓でつくられて十二指腸に分泌される消化酵素の一つである。膵臓の働きや場所については、膵臓の働きとは?場所、消化酵素とインスリンの役割で解説している。膵臓に炎症が起こると、酵素が血液中に漏れ出して数値が上がるため、血液検査で膵臓の異常を調べる手がかりになる。

急性膵炎の診断では、「上腹部の特徴的な痛み」「血液中のリパーゼの上昇」「画像検査での特徴的な所見」の3つのうち2つを満たすこととされている(ドイツの診療ガイドライン、Dtsch Arztebl Int 2022)。つまり、リパーゼの値は診断の一部であり、数値だけで決まるものではない。

膵臓の位置を示す人体図

アミラーゼとの違い

膵臓の酵素を調べる血液検査には、リパーゼのほかにアミラーゼがある。急性膵炎の診断では、どちらを使うかが検討されてきた。これまでの研究をまとめた総説では、リパーゼはアミラーゼより感度が高く、上昇している期間も長いため、発症早期にも、時間がたってからにも診断に役立つとされている。そのため、複数の診療ガイドラインがアミラーゼよりリパーゼを推奨している(Clin Biochem 2017)。ただし、どちらの検査も、それだけで病気の重さまでは決められない。

アミラーゼの基準範囲は、日本臨床検査標準協議会(JCCLS)の共用基準範囲で44〜132 U/Lとされている(JCCLS 2022)。アミラーゼの基準値や、高い・低いときの病気については血清アミラーゼ(AMY)の基準値は?で詳しく説明している。

リパーゼが高くなる主な原因(膵臓の病気・膵臓以外・見かけ上の上昇)

アミラーゼとリパーゼは、両方とも測るものですか?
施設によって異なります。リパーゼを中心に調べるところもあれば、両方を測るところもあります。健診では項目に入っていないことも多いので、結果票に書かれた項目を見てくださいね。

基準値と判定区分

日本人間ドック・予防医療学会の判定区分(2026年4月1日改定)を原本で確認したところ、リパーゼの判定区分は設けられていなかった。また、リパーゼの値は測定法によって異なり、基準範囲は検査機関ごとに違う。そのため、数字の大小は結果票に書かれた自分の検査機関の基準範囲と照らして見る必要がある。

研究では、基準範囲の上限の3倍を超える値を「著しい上昇」として扱うことがある(Pancreas 2016)。この3倍という区切りは、急性膵炎の診断を考えるときの目安として用いられているものであり、健診の判定区分ではない。

リパーゼが高いときに考えられる原因

膵臓の病気:代表は急性膵炎である。日本の2021年の全国調査では、急性膵炎の原因は、アルコールが31.2%、胆石が22.5%、原因が特定できないものが22.1%だった(J Gastroenterol 2025)。中性脂肪が高い状態も、急性膵炎の危険を高めることが知られている(Acta Physiol 2023)。薬による膵炎もあるため、服用中の薬は医師に伝えるとよい(J Pak Med Assoc 2024)。

膵臓以外の原因:リパーゼが基準範囲の3倍を超えて入院した221人のうち、膵炎でなかったのは51人で、おもな原因は肝硬変と腎不全だった。膵炎でない人の値は、膵炎の人より低い傾向があった(Pancreas 2016)。腎臓の働きが落ちていると、酵素が体から出にくくなって高めに出ることがある。

見かけ上の上昇:「マクロリパーゼ」とは、リパーゼが免疫グロブリン(抗体)と結びついて大きくなり、腎臓から排泄されにくくなって高い値が続く状態である。体に害はないとされるが、膵炎と間違われることがある。報告は症例が中心で、まれな状態と考えられる(Natl Med J India 2024)。

数値がずれる・一時的に変わる場合

リパーゼは、腎臓や肝臓の状態によって、膵臓に異常がなくても高くなることがある。また、痛みや画像の異常がなく、リパーゼだけが高い「孤立性の上昇」の意味は、はっきりしない場合もあるとされている(Pancreas 2016)。そのため、1回の値だけで膵臓の病気と決めつけず、症状・他の検査と合わせて判断することが大切である。

症状はまったくないのですが、どうすればいいですか?
症状がなければ、慌てて受診する必要はありません。結果票の指示に従い、一定の期間をあけて再検査を受けましょう。もし再検査でも高ければ、内科や消化器内科で詳しく調べてもらってくださいね。

再検査・受診の目安(何科)

  • 強い腹痛(とくに上腹部や背中)、吐き気・嘔吐がある:急性膵炎の可能性があるため、早めに受診する。夜間や休日は救急外来も考える。
  • 症状はなく、軽く高いだけ:結果票の指示に従って再検査を受ける。再検査でも高ければ内科・消化器内科へ。
  • 肝臓・腎臓の病気がある、中性脂肪が高い:かかりつけ医に結果を見せて相談する。

受診先は、消化器内科または内科でよい。医療機関では、血液検査のくり返しに加えて、腹部エコーやCTなどの画像検査で膵臓の状態を調べることが一般的である。膵臓の場所や痛みの出る場所については、膵臓の場所はどこ?図とCT画像で解説、痛みが出る場所と受診の目安も参考になる。

自分でできること

  • アルコールが急性膵炎の最多の原因なので、飲酒量を見直す。
  • 中性脂肪が高い人は、食事や運動で下げる工夫を医師と相談する。
  • みぞおちや背中の痛みが続く、胆石を指摘されているといった場合は、早めに相談する。
  • 結果票、過去の健診の値、服用中の薬の一覧を持って受診する。

よくある疑問

Q1. アミラーゼは正常で、リパーゼだけが高いのは問題ですか?
A. リパーゼはアミラーゼより高い状態が長く続くとされ、診断に役立つ期間も長い(Clin Biochem 2017)。ただし、どちらか一方だけの値で病気を決めることはできず、症状や画像検査と合わせて医師が判断する。

Q2. 腎臓が悪いとリパーゼは上がりますか?
A. 腎不全が、膵炎でない高値のおもな原因の一つとされている(Pancreas 2016)。腎臓の病気があるときは、結果をかかりつけ医に伝えておくとよい。

Q3. リパーゼは健診でいつも測りますか?
A. 人間ドック学会の判定区分には、リパーゼの項目はない。健診のコースによって、測るかどうかは異なる。

気になる症状や結果があれば、医療機関に相談してほしい。

参考文献

  • 日本人間ドック・予防医療学会「判定区分 2026年4月1日改定」 https://www.ningen-dock.jp/ningendock/wp-content/uploads/2026/02/2026hanteikijun.pdf
  • 日本臨床検査標準協議会 基準範囲共用化委員会「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲 解説と利用の手引き」2022/10/01版 PDF
  • Lipase or amylase for the diagnosis of acute pancreatitis? Clin Biochem. 2017. PubMed 28720341
  • Serum amylase and lipase and urinary trypsinogen and amylase for diagnosis of acute pancreatitis. Cochrane Database Syst Rev. 2017. PubMed 28431198
  • Clinical Practice Guideline: Acute and Chronic Pancreatitis. Dtsch Arztebl Int. 2022. PubMed 35945698
  • Origin, Presentation, and Clinical Course of Nonpancreatic Hyperlipasemia. Pancreas. 2016. PubMed 26646268
  • Nationwide epidemiological survey of acute pancreatitis in Japan, 2021. J Gastroenterol. 2025. PubMed 40745500
  • Mechanisms linking hypertriglyceridemia to acute pancreatitis. Acta Physiol (Oxf). 2023. PubMed 36599412
  • Acute pancreatitis: A narrative review. J Pak Med Assoc. 2024. PubMed 38783446
  • Macrolipasemia variant of macroenzymes: An endocrine laboma. Natl Med J India. 2024. PubMed 39096232