血清鉄・フェリチン・TIBCとは?鉄欠乏の血液検査の見方と貧血との関係・受診の目安

健康診断で貧血を指摘されたあと、病院で「血清鉄」「フェリチン」「TIBC」といった検査を勧められ、どう違うのかわからず戸惑う人は多い。

結論からいうと、血清鉄は血液中を流れている鉄の量、フェリチンは体にたくわえた鉄(貯蔵鉄)の量、TIBCは鉄を運ぶたんぱく質の余力を表す検査であり、3つを組み合わせて鉄が足りているかを調べる。貧血の原因でいちばん多いのは鉄不足だが、炎症などでも数値が動くため、1つの数字だけで判断しない。

この記事では、3つの検査の意味、基準値(確認できたもの)、貧血との関係、低い・高いときの原因、受診の目安を整理する。

ヘモグロビンが低く、医師から血清鉄とフェリチンを測ると言われました。何がわかるのですか?
貧血の原因が鉄不足なのか、別の病気なのかを見分ける手がかりになります。血清鉄は「いま血液中にある鉄」、フェリチンは「たくわえている鉄」を表しているので、あわせて見ると鉄の状態がよくわかります。
この記事のポイント

  • 血清鉄は血液中の鉄、フェリチンは貯蔵鉄、TIBCは鉄を運ぶたんぱく質が鉄を結びつけられる力を表す。
  • 鉄欠乏性貧血では、フェリチンが低下し、TIBCが増加する。
  • フェリチンは炎症や感染でも上がる(急性期のたんぱく質)ため、炎症があると鉄不足を見逃すことがある。
  • 中高年で鉄欠乏がわかったときは、出血の原因を調べることが大切である。

血清鉄・フェリチン・TIBCとは

血清鉄(Fe)は、血液中を流れている鉄の量である。フェリチンは鉄をためておくたんぱく質で、血液中の値が体内の貯蔵鉄を反映する。低ければ鉄不足、高ければ鉄の過剰を疑うが、フェリチンは炎症や感染でも上がるため、読み方には注意がいる(Cochrane 2021)。TIBC(総鉄結合能)は、血液中で鉄と結びつくたんぱく質が、鉄を結びつけられる力の総量である。TIBCはフェリチンと逆の動きをするため、フェリチンが測れないときにTIBCを代わりに測る(日本臨床検査医学会 2005/2006)。

日本臨床検査医学会のガイドラインでは、貧血の精査の基本検査に血清鉄とフェリチン(またはTIBC)が挙げられている。小球性貧血(赤血球の大きさを示すMCVが小さい貧血)では、血清鉄とフェリチンを測ると、頻度の高い鉄欠乏性貧血と、慢性の病気や炎症に伴う貧血を区別しやすいとされている。ヘモグロビンの基準値や貧血そのものについては、血色素量(ヘモグロビン・Hb)の基準値は?で解説している。

鉄分不足で疲れた女性と食材

基準値と判定区分

血清鉄は、日本臨床検査標準協議会(JCCLS)の共用基準範囲で次のように示されている(JCCLS 2022)。

血清鉄の共用基準範囲(JCCLS 2022)

一方、フェリチンとTIBCは、JCCLSの共用基準範囲に載っておらず、日本人間ドック・予防医療学会の判定区分(2026年4月1日改定)にも、これらの区分はない。測定法や施設で異なるため、結果票に書かれた自分の検査機関の基準範囲で見る必要がある。日本臨床検査医学会のガイドラインの診断の流れ図では、小球性貧血でフェリチンが低下(10 ng/mL以下)し、TIBCが増加していれば、鉄欠乏性貧血と判断される。

鉄欠乏性貧血と慢性疾患に伴う貧血でのフェリチン・TIBCの違い

フェリチンが低いのに、貧血ではないと言われました。鉄は足りないのですか?
鉄不足は、貯蔵鉄が減る段階から始まり、進むと貧血になります。貧血がなくても貯蔵鉄が少ない「鉄欠乏」の状態はあり、疲れやすさなどが出ることもあります。値の意味は医師と確認してくださいね。

低い・高いときに考えられる原因

鉄が不足すると、貧血がなくても、疲れやすさ、イライラ、集中しにくさ、むずむず脚症候群、氷をむしょうに食べたくなる(異食症)、息切れ、立ちくらみなどが出ることがある(JAMA 2025)。数値だけでなく、こうした症状も受診のきっかけになる。

鉄が足りないとき(フェリチン低値・TIBC高値):鉄欠乏の原因でとくに多いのは、月経や消化管からの出血、胃や腸からの吸収の低下(萎縮性胃炎、セリアック病、肥満手術など)、食事からの摂取不足、妊娠である(JAMA 2025)。高所得国では、妊娠していない生殖年齢の女性の約38%が貧血を伴わない鉄欠乏、約13%が鉄欠乏性貧血とされる。胃を切除した後の鉄不足については、胃切除後の貧血の原因は?鉄欠乏とビタミンB12不足を参照してほしい。

フェリチンが高いとき:鉄の過剰が心配されがちだが、フェリチンが高い人の多くは鉄の過剰ではない。炎症や感染、慢性の肝臓の病気、多量の飲酒、悪性腫瘍などで上がることがあり、鉄の過剰かどうかはトランスフェリン飽和度(TSAT)も合わせて調べる(Medicina 2026、Lakartidningen 2024)。

炎症があるとき:感染症などの炎症では、血清鉄が下がり、フェリチンが上がる変化がみられる(Clin Exp Med 2023)。慢性の病気に伴う貧血では、フェリチンが正常〜増加し、TIBCは正常〜低下する(日本臨床検査医学会 2005/2006)。

数値がずれる・一時的に変わる場合

フェリチンは炎症や感染があると高くなるため、鉄が不足していても、数値が基準範囲に入ってしまうことがある(Cochrane 2021)。そのため、炎症の指標であるCRPなどと合わせて見ることが大切である。検査結果票のCRPの値もあわせて医師に確認してほしい。

また、鉄欠乏に鉄剤で対応したあと、貯蔵鉄が回復するまでには3か月くらいかかるとされる(日本臨床検査医学会 2005/2006)。治療中の数値は、治療の経過で変わっていく。

再検査・受診の目安(何科)

  • 健診で貧血を指摘された:内科を受診し、血清鉄・フェリチンなどで貧血の原因を調べる。
  • 鉄欠乏がわかった:原因の追究が大切である。消化管の出血や、女性では子宮筋腫などの婦人科の病気の有無も確認する。中高年で発症した鉄欠乏性貧血では、痔があっても大腸がんの検索を行うべきとされている(日本臨床検査医学会 2005/2006)。
  • 鉄欠乏以外の貧血が疑われる、フェリチンが著しく高い:血液内科など専門医への相談がすすめられる。
  • 息切れ、動悸、強い疲れ、黒い便や血便があるときは、検査結果を待たずに受診する。

自分でできること

鉄が足りない原因が何かで、対処は変わる。数値が低めだったからといって、すぐに自己流の対策を始めるのではなく、まず原因を調べることが近道である。

  • 鉄欠乏の原因は出血や吸収の低下のこともあるため、食事だけで解決しようとせず、まず原因を調べる。
  • 鉄剤などのサプリメントは、自己判断で始めず、医師に相談してから使う。
  • 月経が多い、黒い便が出る、胃腸の手術をしたことがあるなどは、受診時に伝える。
  • 健診の結果票と過去の値を、受診時に持参する。

よくある疑問

Q1. 血清鉄が低いと、すぐに鉄欠乏ですか?
A. 血清鉄は炎症でも下がるため、これだけでは決められない。フェリチンやTIBCと合わせて判断する(Clin Exp Med 2023)。

Q2. フェリチンの基準値はいくつですか?
A. 測定法や施設で異なるため、結果票の基準範囲を見る。日本臨床検査医学会のガイドラインでは、10 ng/mL以下が鉄欠乏性貧血の目安として示されている。

Q3. 男性でも鉄欠乏になりますか?
A. 成人男性の鉄欠乏性貧血は約2%と、女性より少ない(Am Fam Physician 2007、米国の数字)。だからこそ、男性や中高年で鉄欠乏がわかった場合は、消化管からの出血がないかを調べることが重要である。65歳を超える鉄欠乏性貧血の人の約9%に消化管のがんがみつかったという報告もある(Am Fam Physician 2007)。

気になる症状や結果があれば、医療機関に相談してほしい。

参考文献

  • 日本臨床検査標準協議会 基準範囲共用化委員会「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲 解説と利用の手引き」2022/10/01版 PDF
  • 日本人間ドック・予防医療学会「判定区分 2026年4月1日改定」 https://www.ningen-dock.jp/ningendock/wp-content/uploads/2026/02/2026hanteikijun.pdf
  • 日本臨床検査医学会「臨床検査のガイドライン JSLM2005/2006 貧血」 PDF
  • Serum or plasma ferritin concentration as an index of iron deficiency and overload. Cochrane Database Syst Rev. 2021. PubMed 34028001
  • Iron Deficiency in Adults: A Review. JAMA. 2025. PubMed 40159291
  • Iron deficiency anemia. Am Fam Physician. 2007. PubMed 17375513
  • Anemia in Older Adults. Am Fam Physician. 2018. PubMed 30252420
  • Iron and iron-related proteins in COVID-19. Clin Exp Med. 2023. PubMed 35849261
  • Differential diagnosis of hyperferritinemia. Medicina (B Aires). 2026. PubMed 41961610
  • Hyperferritinemia – investigation, diagnosis and treatment. Lakartidningen. 2024. PubMed 39411810