
肝臓に生じる悪性の腫瘍には、原発性と転移性の2つに分けられます。
原発性肝臓がんは、さらに肝細胞がんと肝内胆管がんに分けられますが、一般的に肝臓がんといったら、この肝細胞がんのことをいいます。
今回はその原発性肝臓がんの大部分(90%以上)を占める肝臓がん(肝細胞癌)について
- 症状
- 原因
- 検査(エコー、ダイナミックCT、ダイナミックMRI)
- 治療
を図や実際の画像を用いて分かりやすく、説明したいと思います。
- 日本の肝臓がんの90%以上は肝細胞がんです。一般に「肝臓がん」は肝細胞がんを指します(国立がん研究センター 2026)。
- 初期にはほとんど症状がありません。症状だけでは判断できず、症状が出たときには進行していることもあります。
- 原因は慢性の肝臓の炎症や肝硬変です。B型・C型肝炎ウイルス、アルコール、脂肪肝(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)などが関係します。C型肝炎治療の進歩で発生率は減少傾向ですが、アルコールや脂肪肝に関連した肝臓がんは増加傾向です。
- 診断は、血液検査(AFP・PIVKA-Ⅱ・AFP-L3)と超音波検査、造影CT・MRIで行います。
- 肝炎ウイルスの感染や慢性肝炎・肝硬変がある人は、3〜6か月ごとの超音波検査などの定期検査が勧められています。
- 健診で肝機能の異常や肝炎ウイルス感染を指摘されたら、内科・消化器内科などを受診してください。
肝臓がんとは?
最初にお話ししました通り、肝臓がんは、原発性と転移性に分けられ
- 原発性は→肝細胞がん・肝内胆管がんとに分けられ、日本の肝臓がんの90%以上が肝細胞がん
- 転移性は→ほかの臓器のがんが肝臓に転移したもの。原発巣(最初にできたがん)に準じた治療を行います
とされています(国立がん研究センター 2026)。

肝内胆管がんは、胆管がんのうち、肝臓内に生じるものをいい、転移性肝臓がんは肝臓以外の原発性悪性腫瘍のある人に生じるものをいいます。

その肝細胞がんは、肝細胞由来の上皮性悪性腫瘍です。

肝臓がんの症状は?
肝臓は沈黙の臓器とも言われる場所であり、症状が出にくいのが特徴です。
ただし、症状が進行し、腫瘍が増大すると
- 腫瘍に手で触れる
- 出血に伴う突然の腹痛
といった症状が現れたり、肝硬変の症状として
- 黄疸
- クモ状血管腫
- 手掌紅斑
- 腹水貯留
- 浮腫
- 吐血
- 下血
- 肝性脳症
- 女性化乳房
- 出血傾向
- 意識混濁
などが見られることもあります。これらは慢性肝疾患でも起こるため、症状だけで肝臓がんかどうかを判断することはできません(国立がん研究センター 2026)。
肝臓がんの原因は?

- 肝硬変
- 慢性肝炎
などが誘因となり肝臓がんが発生します。
主な原因は、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスの持続感染です。ウイルス感染以外の危険因子には、アルコールの摂取、喫煙、肥満、脂肪肝(NASHなど)、糖尿病があります(国立がん研究センター 2026)。
近年は、C型肝炎の治療が大きく進歩したことから肝臓がんの発生率は減少傾向ですが、アルコール関連肝疾患や代謝機能障害関連脂肪性肝疾患に関係する肝臓がんは増加傾向です。これらにあてはまらなくても発症することがあります。
- 肝炎ウイルス→慢性肝炎→肝硬変→肝臓がん
というように移行します。
原因となる肝硬変の治療については、肝硬変の治療法は?腹水や黄疸など合併症によって異なる?で解説しています。
肝臓がんの検査は?どんなときに受診する?
肝炎ウイルスの感染による慢性肝炎や肝硬変がある人、ウイルス感染を伴わない肝硬変の人は、3〜6か月ごとの腹部超音波検査や腫瘍マーカー検査が勧められています。なお、肝臓がんは現在、国の指針で定められたがん検診の対象ではありません。肝炎ウイルスの検査は、保健所や医療機関で受けられます(国立がん研究センター 2026)。
- 血液検査
- 画像検査(超音波検査・CT検査・MRI検査・血管造影・PET)
- 病理組織検査
などを行い、診断されます。
血液検査
肝細胞がんの腫瘍マーカーには、AFP(αフェトプロテイン)・PIVKA-Ⅱ・AFP-L3分画があります。腫瘍が小さい場合は、2種類以上を測定することが推奨されています。腫瘍マーカーが上がらない肝臓がんもあり、単独では診断できません(国立がん研究センター 2026)。
超音波検査
halo(読み方は「ハロー」辺縁の低エコー帯)やモザイクパターン(腫瘍内部が隔壁により分割された状態)が確認できます。
また、造影剤を使用することによって、高エコーとして描出されるため、早期診断においても有用です。
CT検査
造影剤を用いたダイナミックCT検査をおこなうと、典型的な肝細胞がんは、動脈血優位相で腫瘍は濃く映し出されます(濃染)。
門脈・後期相では、造影剤は洗い出され(wash out)、周囲の組織よりも低濃度に描出されます。
症例① 80歳代女性

肝左葉に動脈優位相でよく染まる多血性腫瘤を認めています。
平衡相では、その染まりが抜けており(washout)、肝細胞がんを疑う所見です。
手術が施行され、中分化型の肝細胞がんと診断されました。
MRI検査
CTと同様に、造影検査による血流の評価が可能で、特にEOB・プリモビスト造影剤を使うことで、CTでは撮影できない肝細胞相を撮影することができます。
これによりCTでははっきりしない病変や小さな病変を捉えることができるようになりました。
症例② 70歳代 男性

肝臓の形態は辺縁が鈍で凹凸不整で肝硬変を疑う形態です。
肝右葉S8に動脈優位相でよく染まる多血性腫瘤を認めています。
しかし、平衡相での抜け(washout)ははっきりしません。

EOB・プリモビストによるダイナミックMRI検査では、上のようにCTと同様動脈優位相で多血性腫瘤を認めています。
さらに肝細胞相では抜けを認めています。
肝細胞がんを疑う所見です。
さらに肝細胞がんは腫瘍の内部に脂肪を含有することがしばしばあり、その検出にもMRIは優れています。
症例③ 50歳代 男性

EOB・プリモビストによるダイナミックMRI検査で、肝右葉S8に多血性腫瘤を認めています。
さらに肝細胞相では抜けを認めており、肝細胞がんを疑う所見です。

さらにIn-phase 及びout of phaseという撮影を行い、In-phase からout of phaseにかけて抜けを認めれば、そこには脂肪が含有されているということを意味します。
上のように腫瘍のある部位には信号の低下を認めており、より肝細胞がんを疑う所見といえます。
ただし、脂肪の含有=肝細胞がんというわけではありませんので、注意も必要です。
血管造影
腹部血管造影検査で、腫瘍が濃く染まります(濃染)。
現在では診断目的よりは、肝動脈化学塞栓療法(TACE)を行う治療目的で血管造影がなされます。
上で提示した症例②の方には、肝動脈化学塞栓療法(TACE)が施行されました。

これは腫瘍のある部位までカテーテルを持っていき、腫瘍の手前から抗がん剤と塞栓物質を流す治療法です。
治療後の単純CT検査で腫瘍があった部位にリピオドールの沈着があることがわかります。
PET
悪性腫瘍に反応するPETをおこなえば、肝臓がんの特定だけでなく、転移の有無も確認できます。
病理組織検査
皮膜を有し、肝細胞に似た上皮性悪性細胞からなるため、好酸性の細胞質・大きな核・好酸性の核小体などの所見が見られることがあります。
肉眼分類

- 小結節境界不明瞭型
- 単純結節型
- 単純結節周囲増殖型
- 多結節癒合型
- 浸潤型
に分類されます。
PET検査の原理については、FDG-PET検査の原理は?SUVとは?生理的集積と見つけにくいがんで解説しています。
肝臓の検査の種類や費用は、肝臓の検査の種類と方法は?血液検査の基準値・画像検査・何科を受診するかで紹介しています。
肝臓がんのステージ
ステージは、
- 腫瘍
- リンパ節転移
- 遠隔転移
に応じてⅠ〜ⅣBに分類されます。
遠隔転移としては、肺・リンパ節・副腎・脳・骨などに認められます。再発は肝臓内で起こることが多いとされています(国立がん研究センター 2026)。

肝臓がんの治療は?
肝障害度・腫瘍数・腫瘍径を考慮して、治療方針が決まります。
肝障害度やChild-Pugh分類で「肝予備能(肝臓がどのくらい働いているか)」を確認し、がんの個数・大きさ・広がりとあわせて選びます。同じステージでも、肝予備能によって勧められる治療が異なることがあります。治療方法としては、
- 外科的手術(肝切除)
- 化学療法(抗がん剤)
- 放射線療法
- 経皮的エタノール注入療法(PEIT)
- ラジオ波焼灼療法(RFA)
- 肝動脈カテーテル療法
- 肝動脈化学塞栓療法(TACE)
- 肝移植
などがあり、それぞれに合った治療法が選択されます。目安として、アブレーション(ラジオ波焼灼療法など)は大きさ3cm以下かつ3個以下、肝切除はがんが肝臓内にとどまり3個以下の場合に行われ、手術やアブレーションが難しい場合に肝動脈化学塞栓療法(TACE)が選ばれます。遠隔転移がある場合は薬物療法を行います(国立がん研究センター 2026)。実際の治療は主治医と相談して決めます。

上で提示した症例③の方にはRFA治療がなされました。
治療後のMRI検査では、腫瘍のあった部位は、凝固壊死を示唆するT1強調像高信号に置き換わっていることがよくわかります。

肝臓がんのよくある疑問
Q. 肝臓がんの初期症状はありますか?
A. 初期にはほとんど症状がなく、「沈黙の臓器」と呼ばれます。健診での肝機能異常の指摘や、他の病気の検査で見つかることも少なくありません(国立がん研究センター 2026)。
Q. 何科を受診すればよいですか?
A. 内科、消化器内科、または身近な医療機関です。肝炎ウイルス感染や肝機能異常を指摘されたら、症状がなくても受診してください(国立がん研究センター 2026)。
Q. 腫瘍マーカーが正常なら安心ですか?
A. いいえ。腫瘍マーカーが上がらない肝臓がんもあるため、超音波検査や造影CT・MRIとあわせて評価します。
Q. 再発しやすいですか?
A. 肝細胞がんの再発は肝臓内で起こることが多いとされ、治療後も定期的な検査が必要です(国立がん研究センター 2026)。
参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P328〜341
参考文献:内科診断学 第2版 P891〜894
参考文献:消化器疾患ビジュアルブック P199〜205
参考文献:国立がん研究センター がん情報サービス 「肝臓がん(肝細胞がん)」(2026年閲覧、肝癌診療ガイドライン2025年版などに基づく) https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/index.html
参考文献:新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P202〜211
最後に
- 肝細胞がんは、肝細胞由来の上皮性悪性腫瘍
- 症状が出にくいのが特徴
- B型・C型肝炎ウイルスの持続感染のほか、アルコールや脂肪肝も原因になる
- 血液検査・画像検査(超音波検査・CT検査・MRI検査・血管造影・PET)・病理組織検査などを行い、診断
- 小結節境界不明瞭型・単純結節型・単純結節周囲増殖型・多結節癒合型・浸潤型に分類
- 腫瘍・リンパ節転移・遠隔転移に応じてステージがⅠ〜ⅣBに分類される
- 肝障害度・腫瘍数・腫瘍径を考慮して、治療方針が決まります
肝臓がんは、肝臓内で再発することが多いがんです。そのため、治療が終わったあとも、定期的な検査を受けることが大切です。気になる症状や健診での異常があれば、医療機関に相談してください。





