大脳の中心に位置する頭頂葉は、他の前頭葉や側頭葉、後頭葉、全てと隣接する部位です。
そんな頭頂葉は、全てと隣接する場所にあるがゆえ、障害を受けた場合様々な影響が現れます。
今回はこの頭頂葉(英語表記で「Parietal lobe」)について、
- 働き
- 障害を受けた場合の症状
など、詳しくご説明したいと思います。
頭頂葉とは?
頭頂葉は、端は中心溝・頭頂後頭溝・Sylvius裂に位置する場所にあります。
大脳の他の領域である前頭葉や側頭葉、後頭葉に接する部位です。
その頭頂葉はイラストでご覧頂くと・・・
- 体性感覚野である一次体性感覚野・二次体性感覚野
- 頭頂連合野である上頭頂小葉・下頭頂小葉
に分けられます。
更に、上頭頂小葉は体性感覚連合野に、下頭頂小葉は縁上回・角回に分類されます。
体性感覚野 | 一次体性感覚野 | |
二次体性感覚野 | ||
頭頂連合野 | 上頭頂小葉 | 体性感覚連合野 |
下頭頂小葉 | 縁上回 | |
角回 |
頭頂葉の働きは?
頭頂葉は身体の各部位の体性感覚や、他の感覚との統合、認知に関わる領域です。
しかし、頭頂葉の機能は複雑で、様々な働きを担っています。
- 体性感覚
- 刺激感覚
- 空間認識
- 立体認識
- 物体認識
- 読み書きや計算認識
これらすべての機能が、頭頂葉による働きによって認識されています。
しかし、細かく分けると以下のイラストのように、部位別にその働きが異なります。
一次性感覚野
対側の身体各部の体性感覚に関わる働きをします。
二次性感覚野
一次体性感覚野や視床からの感覚刺激を受け取る働きをします。
体性感覚連合野
一次性感覚野から感覚情報を受け取ります。
その感覚情報を統合し、空間の認知や物の識別などを行い、立体視や空間感覚にも関わる働きをします。
縁上回
体性感覚連合野から、感覚情報や視覚情報受け取り、物体を認識する機能があります。
角回
後頭葉から言語に関する視覚情報受け取り、読み書きや計算などに関与する働きをします。
頭頂葉が障害を受けた際に起こりうる症状は?
頭頂葉に外傷を受けた場合や脳梗塞、皮質下出血を起こした場合、以下のような症状が起こりえます。
- 半側空間無視
- 身体失認
- 着衣失行
- 失読失書
- 失算
- Gerstmann症候群(ゲルストマン)
- 構成失行
- 観念性失行
- 観念運動性失行
- 肢節運動失行・・・など
半側空間無視 | 自分の体の半分を認識できず、認識できない半分を使おうとしない。 |
身体失認 | 触られているのは分かるものの、その部分を指示できない。 |
着衣失行 | 服の脱ぎ着がうまく出来なくなる。 |
失読失書 | 今まで書けていた文字を読めない。書けない。 |
失算 | 計算が出来なくなる。 |
Gerstmann症候群 | 失読・失書・失算もこれに含まれますが、手指や左右なども認識できなくなる。 |
構成失行 | 三次元の構成ができず、模写や全体的な形の把握ができなくなる。 |
観念性失行 | 日常の一連の動作ができなくなる。手順が分からなくなる。 |
観念運動性失行 | 指示された動きができなくなる。 |
肢節運動失行 | 手(指先)を使った、細かい作業ができなくなる。 |
これらの症状は、衝撃を受けた側に応じて、対側の片側のみ、もしくは両側に出現します。
症例 50歳代 男性 頭頂葉皮質下出血
左の頭頂葉に皮質下出血を認めています。
- 参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P43
- 参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P28〜33
最後に
- 大脳の他の領域に隣接する、脳の中心部に頭頂葉はある
- 頭頂葉は、一次体性感覚野・二次体性感覚野・体性感覚連合野・縁上回・角回に分類される
- 体性感覚・刺激感覚・空間認識・立体認識・物体認識・読み書きや計算認識機能がある
- 頭頂葉の持つ機能が障害され、認識や今まで出来ていたことが出来なくなる
頭頂葉が障害されると、その障害の進行に伴い、症状は徐々に悪化します。
「最近、物忘れが多い」と言った症状から、今まで行っていた日常動作ができなくなり、記憶が消えゆくような症状が出現していきます。