お酒が原因となる肝臓の病気に、アルコール性肝炎という疾患があります。
この病気は、進行すると肝硬変へと移行し、命に関わる事もある大変怖いものです。
その様な事になる前に!
お酒の摂り方に十分に気をつけ、早期に発見出来れば、治療で回復する事も可能ですので、病気の症状を見逃さない事も重要です。
そこで、今回はアルコール性肝炎(英語表記で「Alcoholic hepatitis」)について
- 症状
- 診断
- 治療法
などをまとめました。
参考になさってください。
先に結論
- アルコール性肝炎は、長年の多量飲酒を背景に、さらに大量に飲んだことをきっかけに起こる急性の肝障害です
- 日本アルコール医学生物学研究会(JASBRA)の診断基準では、長期(通常5年以上)の純エタノール換算で1日60g以上の飲酒が目安です(日本酒で3合程度)。女性や体質によっては40g程度でも起こり得ます
- 診断は、正確な飲酒歴の確認、血液検査、ほかの肝障害の除外が基本で、必要に応じて肝生検が行われます
- 治療の基本は禁酒と栄養療法です。重症度が高い(JAS 10点以上)場合は入院で積極的な治療が必要です
- 発熱・黄疸・腹痛・意識がぼんやりするなどがあれば、早めに受診してください
アルコール性脂肪肝とアルコール性肝炎のちがい
| アルコール性脂肪肝 | アルコール性肝炎 | |
|---|---|---|
| 状態 | 肝臓に脂肪がたまる(飲酒への初期の反応) | 肝細胞が壊れ、炎症が強く出る |
| 症状 | 目立たないことが多い | 発熱、黄疸、腹痛などが出ることがある |
| 禁酒 | 症状・検査値の改善が期待できる | 最も大切な治療。重症では入院が必要 |
肝炎情報センター(国立健康危機管理研究機構)によると、常習飲酒家の90%に脂肪肝がみられ、飲酒を続けるとそのうち10〜20%がアルコール性肝炎へ進展するとされています。
アルコール性肝炎とは?
アルコール性肝障害の一つで、長年の過剰な飲酒を背景に、大量飲酒をきっかけに生じる急性の肝障害で、炎症反応が強く現れます。

組織学的には肝細胞の壊死、小葉中心部の肝細胞の風船様の腫れ、好中球の浸潤、Mallory-Denk体などが特徴で、血液検査では白血球(好中球)の増加などがみられます(肝炎情報センター)。
アルコール性肝炎の症状は?
アルコール性肝炎になると、肝細胞が壊されてしまい炎症が起こるため、次のような症状が現れることがあります。ただし、アルコール性肝障害に特異的な症状はなく、軽いうちは疲れやすい、食欲がないなどにとどまることもあります(肝炎情報センター)。
- 全身の倦怠感
- 腹痛
- 発熱
- 嘔吐
- 下痢
- 意識障害(重症のとき)
- 黄疸
また、体の表面から腫大した肝臓を触れることもあります。
意識障害が出る肝性脳症については、肝性脳症の症状とは?昏睡度Ⅰ〜Ⅴの段階ごとの変化と家族の体験談を紹介で解説しています。
アルコール性肝炎の診断は?
基本的な事ですが、重要とされるのは、問診により正確な飲酒歴を確認することです。
日本のアルコール性肝障害の診断基準(JASBRA 2011年版)では、①長期(通常5年以上)の過剰な飲酒(純エタノール換算で1日60g以上。女性や体質によっては40g程度でも起こり得る)、②禁酒によりAST・ALT・γ-GTPが明らかに改善する、③B型・C型肝炎ウイルスのマーカーや自己免疫性の肝臓病を疑う検査が陰性、といった条件が示されています(肝炎情報センター)。
肝臓の生検(肝臓を針で刺して肝臓の組織を採取し病理診断します。)では、アルコール性肝炎の組織の特徴として、
- 肝細胞の壊死
- 小葉中心性の肝細胞の風船様の腫れ(ballooning)
- 白血球(好中球)の浸潤
- 胆汁うっ滞
- 中心静脈周囲や肝細胞周囲の線維化
- Mallory-Denk体(アルコール硝子体)
などがみられるとされています1)。背景が脂肪肝、肝線維症あるいは肝硬変であっても、このような特徴を満たせばアルコール性肝炎と診断されることがあります。
また、ウイルス性肝炎・自己免疫性肝炎・薬剤性肝障害など、他の肝機能障害を除外することも重要です。
アルコール性肝炎の重症度スコア(JAS)
アルコール性肝炎は、JASBRA診断基準(2011年版)で示された「アルコール性肝炎重症度スコア(JAS)」で重症度を評価します。以下の項目でそれぞれ点数をつけ、その合計点で判定します。

合計点数が10点以上は重症とされ、積極的な治療介入が必要とされています(肝炎情報センター)。
肝臓の検査の種類や受診する科は、肝臓の検査の種類と方法は?血液検査の基準値・画像検査・何科を受診するかで解説しています。
アルコール性肝炎の治療は?
- 禁酒
- 栄養療法
- 肝庇護療法(かんひごりょうほう)
などが治療法としてあります。
何よりも大切な事は、禁酒する事です。

初期の状態では、禁酒に加えて栄養を整えることで症状が改善する事もあります。
アルコール性肝炎の方は、たんぱく質やカロリー、ビタミン、微量元素などが不足していることが多く、栄養療法で補います。長期の飲酒でビタミンB1が不足することもあるため、入院が必要と診断された場合は、点滴などで補う事もあります(肝炎情報センター)。
そのほか、肝庇護療法として、肝臓を守る薬が使われることもあります。薬の選択は、症状や検査値をみて医師が判断します。
しかし、中には禁酒しても炎症が続き、脳症・肺炎・腎不全・消化管出血などの合併症を伴うこともあります。
そのような重症例(重症度10点以上)では
- 副腎皮質ステロイド療法
- 血漿交換や白血球除去療法などの血液浄化療法
などが試みられています。副腎皮質ステロイドの予後改善効果の評価は定まっておらず、長期に使うと感染症を起こしやすくなる点にも注意が必要です(肝炎情報センター)。
関連記事)【保存版】肝臓の病気や症状まとめ
参考:
1)肝炎情報センター(国立健康危機管理研究機構)アルコール性肝障害
新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P225〜227
消化器疾患ビジュアルブック P180・181
病気がみえる vol.1:消化器 P308・309


進行して肝硬変になった場合の食事療法については、肝硬変の食事療法は?エネルギー・たんぱく質・塩分の目安とレシピ・看護で解説しています。
よくある疑問
Q. どれくらいの飲酒でなりますか?
JASBRAの診断基準では、1日あたり純エタノール60g以上の長期の飲酒が目安とされ、女性や体質によっては40g程度でも起こり得るとされています(日本酒1合は純エタノール約22gです)。ただし、個人差が大きく、少ない量でも肝障害が起こる人もいます。
Q. 禁酒すれば治りますか?
軽い場合は、禁酒と栄養療法で改善することがあります。一方、重症では合併症(腎不全、消化管出血、肝性脳症など)を起こして命に関わることもあるため、自己判断せず医療機関の指示に従ってください。
Q. 何科を受診すればよいですか?
消化器内科や肝臓内科が中心です。飲酒をやめるのが難しい場合は、依存症の相談もできる医療機関への相談が大切です。
気になる症状や結果があれば、医療機関に相談してください。
最後に
- アルコール性肝障害の一つで、長年の過剰な飲酒を背景に、大量飲酒をきっかけに生じる急性の肝障害
- 肝細胞が壊されてしまい炎症が起こるため、様々な症状が現れる
- 正確な飲酒量の確認や、他の肝障害を除外し、重症度判定を行う
- 禁酒・栄養療法・肝庇護療法などの治療法がある
- 重症例では、副腎皮質ステロイド療法や血漿交換などの血液浄化療法が試みられる
何よりも重要なのは、禁酒、そして早期に診断治療を開始することです。
毎日楽しみにしているお酒が飲めないとなると、症状を無視し、飲酒を続ける方も多々いらっしゃいますが、重症化するとその分治療も大変なものとなります。
気になる症状がある方は、早期に受診することをオススメします。





