
10代後半から20代の若い世代に多く発症するクローン病。
口腔から肛門までの広範囲の消化管、どの部位でも起こりうる疾患です。
今回は、このクローン病(英語表記で「Crohn disease」)について
- 原因
- 症状
- 診断基準
- 治療法
などをイラストを交えてわかりやすく解説します!
先に結論
- クローン病は、口から肛門までの消化管のどこにでも炎症や潰瘍ができる慢性の病気で、10代〜20代の若い人に多く、男女比は約2対1で男性に多いとされています(難病情報センター)。
- 腹痛・下痢・体重減少・発熱・肛門病変(痔ろうなど)が代表的な症状で、症状が続くときは消化器内科(炎症性腸疾患を診る施設)を受診します。
- 診断は症状に加え、縦走潰瘍・敷石像・非乾酪性類上皮細胞肉芽腫などの所見を、内視鏡・画像・病理検査で確認して総合的に行います(厚生労働省 診断基準)。
- 原因は不明で、遺伝的な要因と環境要因が重なり、免疫の異常反応が起こると考えられています。
- 現時点で根本的に治す治療法はありませんが、栄養療法・薬物療法・手術を組み合わせて症状を抑え、寛解(症状が落ち着いた状態)を保つことが目標です。
クローン病とは?
クローン病は、潰瘍や線維化をともなう肉芽腫性炎症性疾患です。
潰瘍性大腸炎とともに、慢性的に腸管に炎症を起こすため、炎症性腸疾患(IBD)の1つに分類されます。

消化管のどの位置にも発生する可能性がありますが、中でも回盲部に好発します。

病変が存在する部位によって、小腸型・小腸大腸型・大腸型の3つに分類されます。
寛解、再燃を繰り返し、炎症は全層に及びます。
また、消化管以外の皮膚にも病変が起こることがあります。
患者さんの数は増えており、医療費助成を受けている人は令和元年度の約4.4万人から令和5年度には約5.2万人になっています。10代〜20代の若い世代に多く発症し、男女比は約2:1で男性に多い特徴があります(厚生労働省・難病情報センター)。
上部消化管病変

アフタ、竹の節のような外観、ノッチ様陥凹(粘膜ひだに縦列するびらんの小さなくぼみ)が特徴です。
肛門病変

肛門の周辺に潰瘍ができたり、痔、裂肛をともなうこともあります。
その他
瘻孔
瘻孔(ろうこう)といい、隣り合う臓器と交通をもった状態となることもあります。
- 腸管と腸管
- 腸管と膀胱
- 腸管と皮膚:痔瘻など
という風に腸管と別の臓器に交通が見られるようになります。
下のイラストは腸管と腸管が交通している様子です。

縦走潰瘍
縦走潰瘍(じゅうそうかいよう)といって、腸管の長軸(縦方向)に沿った潰瘍をともなうこともあります。
(出典:医師国家試験過去問101E19)
内視鏡で、腸管を縦に走る潰瘍(白い部分)が見られます。
敷石像
敷石像といって、大小、大きさのことなる密集した粘膜隆起をともなうこともあります。
(出典:医師国家試験過去問101E19)
内視鏡で、敷石像と呼ばれる凸凹を認めています。
クローン病の原因は?
原因不明の疾患です。
- 遺伝的な因子
- 環境因子(ウイルスや細菌などの微生物感染、腸内細菌叢の変化、食事に含まれる成分など)
が複雑に関わり、免疫系の異常な反応が起こって病気になると考えられています(厚生労働省 指定難病)。
クローン病の症状は?

- 発熱
- 体重減少
- 腹痛・圧痛
- 下痢
- 吸収不良症候群
- 貧血
これらの症状が代表的です。
さらに病変が主に小腸に起こっている小腸型、大腸に起こっている大腸型に分けられ症状が以下のように異なります。
小腸型クローン病の症状
消化管の消化吸収能力が低下することにより
- るいそう(痩せる)
- 脂肪便
- 下痢(水様便)
- 強い腹痛
といった症状が現れます。
大腸型クローン病の症状
- 下痢
- 粘血便
- しぶり腹(テネスムス):病変がS状結腸にある場合。
といった症状が起こります。
しぶり腹(テネスムス)とは腹痛があって便が出そう(便意がある)なのにトイレに行っても便は出ない。ということを繰り返す症状のことを指します。
合併症
- 虹彩毛様体炎
- アフタ性口内炎
- 関節痛・関節炎
- 肝障害
- 貧血
- 肛門病変
- 結節性紅斑(けっせつせいこうはん)
特に、肛門病変が高頻度に起こります。
高頻度に起こる肛門病変のひとつ、痔瘻については、痔瘻(じろう)とは?原因・症状・診断と手術による治療法、再発予防まででくわしく解説しています。
腹痛や下痢をくり返す別の病気として、過敏性腸症候群の薬については、過敏性腸症候群の薬とは?処方薬・漢方薬・市販薬の選び方と警告症状でくわしく解説しています。
クローン病の診断基準は?
臨床症状の他
- 便培養検査
- 血液検査
- 内視鏡
- X線検査
- 超音波検査
- CT
- MRI
など総合的におこない、他の腸疾患との鑑別をしつつ、診断に至ります。
この他の疾患との鑑別が難しく、潰瘍性大腸炎や腸結核などとも重なる部分も多いため、1つの所見にとらわれず、1つ1つ他の疾患を除外していくことが重要です。
そのため確定診断までは時間を要することもあります。
厚生労働省の診断基準(2017年改訂)では、次の所見を組み合わせて診断します。
主要所見
- A 縦走潰瘍
- B 敷石像
- C 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫(顕微鏡で見つかる特徴的な炎症の塊)
副所見
- a 消化管の広範囲に認める不整形〜類円形の潰瘍またはアフタ(3か月以上続くこと)
- b 特徴的な肛門病変(裂肛、痔瘻、肛門周囲膿瘍など)
- c 特徴的な胃・十二指腸病変(竹の節状外観など)
主要所見のAまたはBがあれば「確診」とされます。主要所見Cと副所見のaまたはbがある場合や、副所見のa・b・cがすべてそろう場合も確診です。ただし、腸結核、腸型ベーチェット病、単純性潰瘍、NSAIDs潰瘍、感染性腸炎などを除外することが必要です。
症例:21歳男性
右下腹部痛と下痢を訴え受診。
(出典:医師国家試験過去問101E19)
粘膜障害を確認、臨床症状や血液・内視鏡所見よりクローン病と診断。

クローン病の治療法は?
- 栄養療法
- 薬物療法
- 手術療法
が治療法としてあり、それぞれに合った選択をします。
栄養療法
栄養療法は、薬物療法とともに症状の勢いをおさえる「寛解導入療法」の柱の一つで、腸管を安静にし、食事による刺激を減らすことが目的です。
成分栄養剤などの経腸栄養療法や、中心静脈栄養療法があります。
高度の狭窄などがある場合には、中心静脈栄養がおこなわれます(難病情報センター)。症状が落ち着いたあとも、自宅での経腸栄養を続けることがあります。
薬物療法
- 5-ASA製剤(メサラジンなど)・・・軽症例に用いる
- 副腎皮質ステロイド・・・中等症以上に用いる
- 免疫調節薬(アザチオプリンなど)・・・中等症以上、ステロイドをやめにくい場合の維持などに用いる。効果が出るまでに時間がかかる
- 抗TNF-α抗体などの生物学的製剤・・・難治例に用いる。痔瘻の治療にも使われる
- 抗菌薬・・・肛門病変(痔瘻など)に用いることがある
などが選択されます。
手術療法
- イレウス(腸閉塞)
- 消化管穿孔
- 大量出血
- 中毒性巨大結腸症、癌の合併
では、手術が第一に必要とされます。
また、症状を伴う狭窄、膿瘍、瘻孔(内瘻・外瘻)、内科治療が効かない場合などでは、症状の緩和のためにおこなうこともあります。手術後も再燃・再発が起こることがあり、再手術率は5年で28%と報告されているため、腸管の切除は小範囲にとどめるのが原則です(厚生労働省 指定難病)。

手術が必要になる合併症のひとつ、イレウス(腸閉塞)については、イレウス(腸閉塞)とは?症状・原因・診断・治療のポイントをCT画像つきで解説でくわしく解説しています。
クローン病は完治する?
指定難病とされる疾患で、現在根治治療法はありません。
一方で、多くの患者さんで寛解(症状が落ち着いた状態)に導くことが可能になってきています。症状が出ない寛解期を維持し、生活の質を高めることが治療の目標です。症状が落ち着いていても病気は進行することがあるため、定期的な検査が大切です(難病情報センター)。
- 参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P156〜167
- 参考文献:消化器疾患ビジュアルブック P100〜104
- 参考文献:新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P863〜865
よくある疑問
Q. クローン病は遺伝しますか?
遺伝的な因子が関係すると考えられていますが、原因は不明で、親から子へそのまま遺伝する病気ではありません。心配な場合は主治医に相談してください。
Q. どの科を受診すればよいですか?
消化器内科が目安です。腹痛や下痢、体重減少が続く、痔瘻をくり返すといった症状があれば、早めに受診してください。
Q. 医療費の助成は受けられますか?
クローン病は指定難病です。重症度などの基準を満たすと医療費助成の対象になります。手続きは主治医や自治体の窓口に相談してください。
Q. 潰瘍性大腸炎とはどう違いますか?
どちらも炎症性腸疾患です。クローン病は口から肛門までのどこにでも、飛び飛びに病変ができ、腸の壁の深くまで炎症が及ぶ点が特徴です。潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に連続して炎症が起こります。
最後に
- 潰瘍や繊維化をともなう肉芽腫性炎症性疾患で、消化管のどの位置でも起こりうる
- 小腸型・小腸大腸型・大腸型の3つに分類される
- 原因不明の疾患
- 発熱・体重減少・腹痛・圧痛・下痢が特徴
- 縦走潰瘍・敷石像・非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を主要所見とし、副所見(アフタ・潰瘍、肛門病変、特徴的な胃十二指腸病変)と組み合わせて診断する
- 栄養療法・薬物療法・手術療法を、症状に合わせて組み合わせる
- 根治治療はなく、完治は難しい
中には、クローン病と診断されるまでに時間がかかり症状に苦しみ続ける方もいます。
広範囲に起こりうる疾患だからこそ診断が難しく、特に1つの検査だけで診断するのは難しく、総合的にみる必要があります。
また、手術を行っても再燃・再発することがあるため、手術後も通院を続けることが大切です。
参考:厚生労働省 指定難病 96 クローン病 / 難病情報センター クローン病








