10代後半から20代の若い世代に多く発症するクローン病。
口腔から肛門までの広範囲の消化管、どの部位でも起こりうる疾患です。
今回は、このクローン病(英語表記で「Crohn disease」)について
- 原因
- 症状
- 診断基準
- 治療法
などをイラストを交えてわかりやすく解説します!
クローン病とは?
クローン病は、潰瘍や線維化をともなう肉芽腫性炎症性疾患です。
潰瘍性大腸炎や結核とともに、慢性的に腸管に炎症を起こすため、慢性炎症性腸疾患の1つに分類されます。
消化管のどの位置にも発生する可能性がありますが、中でも回盲部に好発します。
病変が存在する部位によって、小腸型・小腸大腸型・大腸型の3つに分類されます。
寛解、再燃を繰り返し、炎症は全層に及びます。
また、消化管以外の皮膚にも病変が起こることがあります。
近年クローン病は増加傾向にあり、特に若い世代に多く発症し、男女比は2:1でやや男性に多い特徴があります。
上部消化管病変
アフタ、竹の節のような外観、ノッチ様陥凹(粘膜ひだに縦列するびらんの小さなくぼみ)が特徴です。
肛門病変
肛門の周辺に潰瘍ができたり、痔、裂肛をともなうこともあります。
その他
瘻孔
瘻孔(ろうこう)といい、隣り合う臓器と交通をもった状態となることもあります。
- 腸管と腸管
- 腸管と膀胱
- 腸管と皮膚:痔瘻など
という風に腸管と別の臓器に交通が見られるようになります。
下のイラストは腸管と腸管が交通している様子です。
縦走潰瘍
縦走潰瘍(じゅうそうかいよう)といって、4〜5cm以上の腸管の長軸に沿った潰瘍をともなうこともあります。
(出典:医師国家試験過去問101E19)
内視鏡で、腸管を縦に走る潰瘍(白い部分)が見られます。
敷石像
敷石像といって、大小、大きさのことなる密集した粘膜隆起をともなうこともあります。
(出典:医師国家試験過去問101E19)
内視鏡で、敷石像と呼ばれる凸凹を認めています。
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クローン病の原因は?
原因不明の疾患です。
- 発症要因
- 遺伝因子
- 感染(最近やウイルス)
- 環境因子(喫煙・高脂質や高糖質な食事)
などにより、腸管の免疫異常となり、病態を形成する要因となっているのではないかといわれています。
クローン病の症状は?
- 発熱
- 体重減少
- 腹痛・圧痛
- 下痢
- 吸収不良症候群
- 貧血
これらの症状が代表的です。
さらに病変が主に小腸に起こっている小腸型、大腸に起こっている大腸型に分けられ症状が以下のように異なります。
小腸型クローン病の症状
消化管の消化吸収能力が低下することにより
- るいそう(痩せる)
- 脂肪便
- 下痢(水様便)
- 強い腹痛
といった症状が現れます。
大腸型クローン病の症状
- 下痢
- 粘血便
- しぶり腹(テネスムス):病変がS状結腸にある場合。
といった症状が起こります。
しぶり腹(テネスムス)とは腹痛があって便が出そう(便意がある)なのにトイレに行っても便は出ない。ということを繰り返す症状のことを指します。
合併症
- 虹彩毛様体炎
- アフタ性口内炎
- 関節痛・関節炎
- 肝障害
- 貧血
- 肛門病変
- 結節性紅斑(けっせつせいこうはん)
特に、肛門病変が高頻度に起こります。
クローン病の診断基準は?
臨床症状の他
- 便培養検査
- 血液検査
- 内視鏡
- X線検査
- 超音波検査
- CT
- MRI
など総合的におこない、他の腸疾患との鑑別をしつつ、診断に至ります。
この他の疾患との鑑別が難しく、潰瘍性大腸炎や腸結核などとも重なる部分も多いため、1つの所見にとらわれず、1つ1つ他の疾患を除外していくことが重要です。
そのため確定診断までは時間を要することもあります。
上記でご説明した縦走潰瘍・敷石像・細胞肉芽腫を主要所見としたアフタ・肛門病変・特異的な胃十二指腸潰瘍などが診断基準となります。
症例:21歳男性
右下腹部痛と下痢を訴え受診。
(出典:医師国家試験過去問101E19)
粘膜障害を確認、臨床症状や血液・内視鏡所見よりクローン病と診断。
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クローン病の治療法は?
- 栄養療法
- 薬物療法
- 手術療法
が治療法としてあり、それぞれに合った選択をします。
栄養療法
クローン病治療の第一選択となり、特に小腸型に有用で、腸管の安静や食事性アレルゲンの除去をすることが目的となります。
完全静脈栄養療法・成分栄養剤などの経腸栄養療法にて症状の改善を待ちます。
症状が重篤な場合や消化管狭窄などの合併症をともなう場合には、完全静脈栄養をおこないます。
薬物療法
- アミノサチル酸製剤・・・大腸型・小腸型・大腸小腸型それぞれに合った薬を選択
- 副賢皮質ステロイド・・・中等症や重症例に用いる
- 免疫調整薬・・・効果発揮までには2〜3ヶ月かかる
- 抗TNF-α抗体製剤・・・活動期のクローン病、痔瘻や皮膚瘻症例の緩解導入に有用
- 抗生物質・・・肛門病変に有用
などが選択されます。
手術療法
- イレウス
- 消化管穿孔
- 大量出血
では、絶対適用となります。
また、上記以外では症状の緩和のためにおこなうこともありますが、術後の再熱・再発も高確率で起こるため、腸管切除は小範囲が原則です。
クローン病は完治する?
難病指定される疾患で、現在根治治療法はありません。
症状が出ない寛解期を維持するために、生活の質を高める必要があります。
- 参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P156〜167
- 参考文献:消化器疾患ビジュアルブック P100〜104
- 参考文献:新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P863〜865
最後に
- 潰瘍や繊維化をともなう肉芽腫性炎症性疾患で、消化管のどの位置でも起こりうる
- 小腸型・小腸大腸型・大腸型の3つに分類される
- 原因不明の疾患
- 発熱・体重減少・腹痛・圧痛・下痢が特徴
- 縦走潰瘍・敷石像・細胞肉芽腫を主要所見としたアフタ・肛門病変・特異的な胃十二指腸潰瘍などが診断基準となる
- 栄養療法・薬物療法・手術療法など、症状に合った治療法が選択される
- 根治治療はなく、完治は難しい
中には、クローン病と診断されるまでに時間がかかり症状に苦しみ続ける方もいます。
広範囲に起こりうる疾患だからこそ診断が難しく、特に1つの検査だけで診断するのは難しく、総合的にみる必要があります。
また、手術を行ったから完治というわけではなく、食事内容をしっかり見直すことが大切です。