脳は、

から構成されています。

その中で、後頭部・大脳の後下方にある小脳にはどんな働きがあるのかご存知ですか?

小脳のある場所は、なんとなくイメージできたけど、機能まではわからないわ。

そこで今回は、小脳(しょうのう「cerebellum」)にスポットを当て

  • 機能
  • 構造
  • 障害による症状

などを説明したいと思います。


小脳の機能は?

小脳は、

  • 運動機能の調整
  • 体の動きを記憶(運動の学習)
  • 大脳の思考をコピーして保持する

機能があると、近年分かってきました。

またこの小脳は、のちほど詳しくお話ししますが、大脳小脳(新小脳)・脊髄小脳(旧小脳)・前庭小脳(原小脳)と分けられ、上記の機能をそれぞれが担っています。

それぞれについて説明しますね。

大脳小脳(新小脳)

四股の動きを調節したり、言語などに関する働きをしています。

脊髄小脳(旧小脳)

姿勢や歩行、体幹の動きを調節しています。

前庭小脳(原小脳)

頭部と眼球運動の調整や、体の平衡の維持をしています。

少し専門的な話しをしますと・・・

海馬の記憶の形成は長期増強(LTP)が使われるのに対し、小脳の運動の学習には、長期抑圧(LTD)・長期増強という両方向のシナプス可塑性が使われます。

そのため、水泳(泳ぎ方)や自転車の乗り方、スキーなど体で覚える記憶は小脳に蓄えられると考えられているのです。

そもそも小脳とは?構造について解説

小脳は、大脳の後下方かつ、脳幹の背側にあります。

小脳の場所について、詳しくはこちらをご覧ください。→【CT,MRI画像あり】小脳の解剖学的位置を徹底解説! 

 

成人の場合、重さは120~140グラムで、脳全体の重さの10%強を占めます。

また、大脳と同じく、灰白質と白質を持っています。

小脳の構造は、小脳半球・虫部・片葉小節葉(へんようしょうせつよう)に分けられます。

前葉・後葉・片葉小節葉と区分されることもある。)

brain-6

また、先ほど少し申しましたが、系統発生学的には、

  • 大脳小脳(新小脳)
  • 脊髄小脳(旧小脳)
  • 前庭小脳(原小脳)

の3つにも分けられます。

brain-5

この小脳が病気などで障害されると、どんな症状が起こりうるのでしょう?

小脳が障害された場合に起こりうる症状は?

小脳の障害というと、血管障害(閉塞など)・腫瘍などがありますが、小脳の持つ働きが阻害されることになります。

そして、しばしば運動失調など、協調運動の欠如が現れるのです。

働きと同様に、大脳小脳(新小脳)・脊髄小脳(旧小脳)・前庭小脳(原小脳)という部位別にご説明すると、以下のような症状が現れます。

大脳小脳(新小脳)

  • 四股の協調運動の障害
  • 構音障害

などが起こります。

運動がスムーズに行えなくなり、行動がひとつひとつに分解されてしまう症状(運動の分解)が出現するのです。

脊髄小脳(旧小脳)

  • 立位や座位での動揺
  • 歩行障害

などが起こります。

少し難しい話しになりますが、これは・・・小脳の筋紡錘への制御に異常が生じて、筋トーヌスが下がるためとも言われています。

前庭小脳(原小脳)

  • 平衡障害
  • 目眩
  • 眼振

など、眼球運動障害が起こります。

参考文献:
全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P38・47
病気がみえる vol.7:脳・神経 P42・43
解剖学講義P709〜717
イラスト解剖学P465〜470

最後に

小脳について、ポイントをまとめます。

  • 小脳の構造は、小脳半球・虫部・片葉小節葉に分けられる
  • 系統発生学的には、大脳小脳(新小脳)・脊髄小脳(旧小脳)・前庭小脳(原小脳)に分類される
  • 小脳は、運動機能の調整・体の動きを記憶(運動の学習)・大脳の思考をコピーして保持する機能がある
  • 運動失調など、協調運動の欠如などを中心に症状が現れる

 

アルツハイマー型認知症患者の脳をPETで検査した結果、頭頂連合野や側頭連合野は認知症により脳の萎縮が進み、まったく機能していなかったものの、小脳はなぜか活発に活動しているということが判明しました。

アルツハイマー型認知症患者の場合、例外なく小脳が活動し、通常より強化されているということが確認されました。

どうして、認知症で脳が萎縮するのに、小脳は活発になるのですか?

それは、大脳から失われてしまった精神的な機能を、小脳が代替していると考えられているのです。




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