ヘルニアというと、腰や首のものを想像される方が多いでしょうが、横隔膜ヘルニアというものもあります。先天性の横隔膜ヘルニアは congenital diaphragmatic hernia の頭文字をとって、でCDHとも略されます。
横隔膜は、体の中でいうと肺の下にある胸とお腹を仕切る役目のある膜(筋肉)なんですが、それがどうしてヘルニアに?と気になりますよね。横隔膜ヘルニアは、その中でも先天性と後天性に分けられます。
今回は先天性横隔膜ヘルニアについて
- 原因
- 診断方法
- 治療法
をご説明したいと思います。
先天性横隔膜ヘルニアの原因とは?
先天性のものは、その中でも・・・
- Bochdalek(ボックダレック)孔ヘルニア(後外側裂孔ヘルニア)
- 傍胸骨孔ヘルニア
- 食道裂孔ヘルニア
とに分けられます。
これは横隔膜に生まれつき穴が開いてることが原因で、その部分から腹部臓器である小腸や大腸、胃や脾臓や肝臓などが胸にまで入り込み、肺を圧迫するというものなんです。
ですが、中には胎児期でなく、出生後に見つかる場合もあります。出生後に見つかるものはACDH(acquired congenital diaphragmatic hernia)と呼ばれ、乳児期を過ぎ発見されたものは呼吸器症状よりも消化器症状として嘔吐などがあり他の病気とも間違えられやすく、発見が遅れてしまうことがあります。
どうして先天的に横隔膜に穴が開いてるのか?という原因は、未だはっきりと解明されていないんですが、遺伝子の染色体異常やビタミンA欠乏症なども原因にあるのではないかと言われています。
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どうして横隔膜ヘルニアと分かるの?診断方法は?
妊娠中のエコー検査で胎児を見てる時に発見されるものが多いのが現状です。穴を確認出来るというよりも、本来なら腹部にある臓器が胸にあることで判明します。
また、乳児期を過ぎて見つかるものは、症状などから色々な病気と間違えられる可能性も多くありますが、画像診断で判明します。
この先天性横隔膜ヘルニアが胎児期に見つかると、出産方法や時期等も医師の指示に従い、胎児の臓器の成長や具合を見ながら、綿密な計画を立てる必要があります。詳しく診断するために、超音波やMRI、染色体検査を行ったりします。
先天性横隔膜ヘルニアの治療法
- 妊娠時期から検査を繰り返し計画的出産をする
- 出産直後、早急に人工呼吸器を
- 胸に進入した臓器を戻す
- 穴を塞ぐ手術をする
- 呼吸機能が回復するまで酸素供給
- 合併症や再発に注意し経過観察
まず、出産直後から治療が必要になります。肺がどの程度圧迫されて、どれだけ肺が作られていたかも重要です。呼吸器障害が出ているかにもよりますが、へその緒からの酸素供給が出生後は失われるわけですから、早急に産声をあげることなく、肺を膨らませないうちに人工呼吸器をつけ呼吸を整える処置が必要になります。
その呼吸状態を見たうえで、胸に進入した臓器を正しい場所に戻し、穴を塞ぐ手術が必要になります。しかし、術後も肺機能がすぐに戻るわけではないので、呼吸機能が回復するまで酸素供給が必要になります。
また、術後も合併症や再発などの可能性もあるため、長期的に経過観察をしていく必要があります。
最後に
- 横隔膜ヘルニアには先天性と後天性がある
- 先天性横隔膜ヘルニアは生まれつき横隔膜に穴が開いてることが原因
- 胎児期に見つかるものが多いが、中には乳児期を過ぎ消化器症状が出て見つかることもある
- 画像診断が有効
- 胎児期に見つかった場合は計画的出産が必要で生後すぐに処置が必要
- 臓器を元の位置に戻し、穴を塞ぐ手術が必要
- 合併症や再発に注意
この記事を読むと、どれだけ妊婦検診が重要か分かると思います。もし、きちんと検診を受けていなかったら・・・助かる命も助からなくなる可能性も・・・。
また、この病気は先天性のものです。まだはっきりとした原因は解明されていないため、特に妊娠中のお母さんが自分を責めてしまわないよう、周りのフォローも大切です。
このお母さんの心理状況は子供の発育にも影響しかねませんからね。