染色体遺伝子の変異による遺伝性疾患でvon Hippel-Lindau病という難病があります。聞きなれない病名ですが、36,000人に1人の割合で発生する珍しい病気ですが、日本には約600~1,000人の患者数が報告されています。
今回はこのvon Hippel-Lindau病(フォンヒッペル・リンドウ)略してVHLについて
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療法
をご説明します。
von Hippel-Lindau病とは?
小脳や脳幹、脊髄といった中枢神経系と網膜に多発する血管芽腫に加え、多臓器に嚢胞性腫瘍が多発する常染色体優勢遺伝疾患で母斑症の1つです。小脳の血管芽腫により小脳失調症状や頭蓋内圧亢進症状をきたし、20~40代で初発します。
von Hippel-Lindau病の症状は?
皮膚症状
皮膚症状として頭頸部の単純性血管腫があります。
中枢神経症状
中枢神経系に出る小脳血管芽腫があり、小脳失調症状として、(めまい・ふらつき・眼振・四股協調運動障害)が現れます。
眼症状
また、眼に出る症状として網膜血管芽腫があり、緑内障が現れ、視力低下を感じます。
その他の症状
腎・副腎・膵・脾などに現れるもので
- 嚢胞性腫瘍
- 腎細胞癌
- 副腎褐色細胞腫
- 膵臓腫瘍
などがあり、血圧上昇なども見られます。その他、血液に出る赤血球増加症が見られることもあります。
発生部位として最も多いのは小脳ですが、延髄や脊髄にも発生します。そして、細かく言うと発生した部位によって感じる症状は異なります。
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von Hippel-Lindau病の原因は?
VHL遺伝子(3番染色体に存在)の変異が原因となります。両親のどちらかがvon Hippel-Lindau病の場合、50%の確率で子供に遺伝子ます。
von Hippel-Lindau病の診断は?
臨床症状の他、血液検査、画像診断、眼科検査を行い、von Hippel-Lindau病診断確定となります。
血液検査
血液を採取し、遺伝子情報を調べます。それによる異常はないか?原因を探ります。
画像診断
腹部超音波検査、CT検査、MRI検査によって腫瘍の大きさや位置を調べます。
MRIを行うと、小脳に嚢胞を伴う結節性病変(血管芽腫)が多発して見られます。血管芽腫の約25%は充実性腫瘍であり、造影MRIにて強く描出されます。
症例 30歳代女性 頭痛で救急外来受診
造影MRI(T1強調像) 横断像
小脳の正中部から左側にかけて嚢胞性病変あり。後方には造影効果を有する結節あり。手術の結果、血管芽細胞腫と診断されました。
眼科検査
眼底検査を行い、網膜に腫瘍はないか、緑内障はないか、調べます。
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von Hippel-Lindau病の治療方法は?
腫瘍に対しては腫瘍摘出、もしくは臓器摘出術を行います。手術が第一選択で、腫瘍が小さなうちに行えば、完治が見込めます。しかし、脳幹部に影響を及ぼす拡大した腫瘍では、手術によるリスクもあるため慎重に検討する行う必要があります。
また、放射線療法であるガンマナイフを行うこともありますが、腫瘍の縮小が見込める確率は70~85%程で、完治を望む方法ではありません。また、中には浮腫が起こり、後遺症が残る可能性もあります。
網膜の血管腫に対しては、レーザー焼灼術を行います。
最後に
- 血管芽腫、多臓器に嚢胞性腫瘍が多発する常染色体優勢遺伝疾患
- VHL遺伝子(3番染色体に存在)の変異が原因
- 臨床症状の他、血液検査、画像診断、眼科検査を行い特徴的な所見から診断
- 手術が第一選択となる
同じvon Hippel-Lindau病でも、腫瘍の大きさ、場所によって手術のリスク等も大きく異なります。早期に発見、早期に治療することが大切で、家族内にvon Hippel-Lindau病がいる場合は、もしかして・・・を予測して、定期的な健康診断(画像検査)を受けておくことも大切でしょう。