細菌性髄膜炎の症状・診断・治療法のまとめ|原因菌と救急受診の目安

小児から成人までかかると怖い病気の中に、髄膜炎があります。

その髄膜炎には種類があり、今回はその中でも細菌が原因となる細菌性髄膜炎について

  • 症状
  • 原因
  • 診断
  • 治療法

を詳しくお話ししたいと思います。

細菌性髄膜炎って、どんな症状?

高い熱、強い頭痛、首のうしろが硬くなるのが特徴です。命にかかわるので、すぐに抗菌薬で治療を始める必要がありますよ。
先に結論

  • 細菌性髄膜炎は、脳や脊髄を包む髄膜に細菌が感染する病気で、命にかかわる緊急の病気です。
  • 代表的な症状は発熱、頭痛、首の後ろが硬くなる(項部硬直)、吐き気・嘔吐、意識の変化です。成人でこのうち2つ以上がある人は95%という報告があり(van de Beek 2004)、典型的な症状がそろわない人も多くいます。
  • 診断は髄液検査が中心で、細菌性では髄液が濁り、好中球と蛋白が増え、糖が下がります。
  • 治療は原因菌の判明を待たず、抗菌薬をすぐ始めます。成人では、ステロイド(デキサメタゾン)の併用が転帰を改善した報告があります(de Gans 2002)。
  • 発熱に強い頭痛や首の硬さ、意識がぼんやりするなどが加わったら、すぐに救急受診してください。

細菌性髄膜炎とは?

細菌性髄膜炎とは、その名の通り、細菌感染によって起こる髄膜炎です。

別名、急性化膿性髄膜炎とも呼ばれます。

新生児や乳児といった抵抗力の弱い幼い時期にかかることの多いもので、診断・治療が遅れると命にかかわるケースもある髄膜炎の中でも特に重い病気です。

成人の細菌性髄膜炎をまとめたオランダの研究(696例)では、死亡率は21%で、肺炎球菌では30%、髄膜炎菌では7%でした(van de Beek 2004)。国や時代で異なるため、あくまで目安です。

その他には、化膿性脳室炎、脳炎・脳膿瘍、硬膜下蓄膿といった病気があります。

では、次に細菌性髄膜炎はどんな症状が出るのか見ていきましょう。

脳の中に膿がたまる病気については、脳膿瘍とは?症状・原因、MRI(リング状増強)の診断と治療法のまとめで解説しています。

細菌性髄膜炎の症状は?

医師
以下のような症状が現れます。
  • 発熱
  • 項部硬直
  • 意識の変化
  • 嘔吐
  • 頭痛
  • 悪心
  • 皮疹
  • 痙攣
  • 乳頭浮腫
  • 脳局所症状

 

などがありますが、髄膜炎の古典的な三徴は、発熱・項部硬直・意識の変化です。頭痛や嘔吐もよくみられます。

ただし、この三徴がそろうのは成人の細菌性髄膜炎の44%にとどまり、頭痛・発熱・項部硬直・意識の変化のうち2つ以上がみられたのは95%でした(van de Beek 2004)。症状がそろわなくても、髄膜炎は否定できません。

また、これらは風邪症状と似ているため、見逃されることも多く、症状が進行してしまうと、頭蓋内圧亢進・脳浮腫・意識障害などを認めるようにもなってしまいます。

これらの中枢神経症状の原因には、原因菌による直接障害のほか、免疫反応に伴うサイトカイン障害も関与すると言われています。

※ここでのサイトカインとは、インターロイキン(IL)、腫瘍壊死因子(TNF)などを指します。

高熱と頭痛で横になる男性

細菌性髄膜炎の原因は?

原因は、この病名の通り、細菌感染によるものですが、実は細菌性髄膜炎は年齢に応じてその原因となる起炎菌は大きく異なります。

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医師
年代別に細菌性髄膜炎を発症しやすい起炎菌をご説明します。

新生児期(生後すぐ~4ヶ月)

以下の年齢区分や菌の種類は目安で、国や時代、ワクチンの普及状況によって変わります。

  • B群レンサ球菌
  • 大腸菌
  • インフルエンザ菌

特に新生児期に多いのがB群レンサ球菌です。また、頻度は低いもののリステリア菌も原因となり、その場合重症化しやすくなる特徴があります。

乳幼児(4ヶ月~6歳)

  • インフルエンザ菌
  • 肺炎球菌
  • 髄膜炎菌

特にこの年代に多いのが、インフルエンザ菌です。誰にでもかかりうる病気で、保育園や幼稚園に通い出すと特に冬場にかけてもらいやすい病原菌でもあります。

小児~成人期(6歳~50歳)

  • 肺炎球菌
  • インフルエンザ菌
  • 髄膜炎菌

この年代に多いのが肺炎球菌なんですが、誰にでもかかりうる菌によって髄膜炎になってしまいます。

壮年~老年期(50歳以降)

  • 肺炎球菌
  • 黄色ブドウ球菌
  • 大腸菌

この年代になると肺炎球菌に加え、黄色ブドウ球菌が原因となることが増えてきます。また、老年期は新生児期同様、抵抗力が弱くなるため、リステリア菌によって重症化することも稀にあります。

年代別にかかりやすい菌の表

細菌性髄膜炎の診断は?

髄膜刺激徴候検査や脳脊髄液検査が一般的です。

医師
それぞれについてご説明します。

髄膜刺激徴候検査

髄膜に負荷を加えることで、痛みに対する特徴的な防御反応を示すため、それを利用し検査を行います。

項部硬直

仰向けに寝せ、患者の頭部を前屈させた時の抵抗を見ます。髄膜炎の場合、この時首が硬く、顎が胸に付かない特徴があります。

ケルニッヒ徴候(Kernig’s Sign)

仰向けに寝せ、足を持ち上げます。強い抵抗があり、膝を135度以上まっすぐに伸ばすことが出来ない特徴が見られます。

下の動画はその様子ですが、この場合は膝を135度以上まっすぐ伸ばせており、ケルニッヒ徴候は陰性ということになります。

ブルジンズキー徴候(brudzinski’s sign)

仰向けに寝せた状態で項部を前屈させると股関節や膝関節が自動的に曲がる特徴が見られます。

下の動画では、ブルジンズキー徴候が陽性となる様子が示されています。

jolt accentuation(読み方は、ジョルトアクセンチュエーション)

頭部を左右に振ると頭痛がひどくなる徴候が見られます。

羞明および眼球圧痛

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眩しさのチェックで、閉じた瞼の上から指で押すと光が異常に眩しく感じ、瞼を押すと痛む特徴があります。

髄膜刺激徴候が見られなくても、髄膜炎が否定できるわけではありません。まず、この髄膜刺激徴候検査はかかりつけの小児科や内科でも行えるため、髄膜炎を疑った場合、この検査をし、疑いがある場合、大きな病院に回され、脳脊髄液検査を行うことになります。

脳脊髄液検査

検査ではこの脳脊髄液検査が非常に重要です。

外観や髄液圧、糖などを調べます。

無菌性髄膜炎では髄液から細菌が検出されないため、この検査で他の髄膜炎との鑑別にもなります。

細菌性髄膜炎では、外観は混濁して見えます。

また、細菌感染により白血球の多形核球(好中球)が増加し、蛋白は上昇し、糖は著明に低下します。

ただし、頭蓋内圧亢進下では、腰椎穿刺は脳ヘルニアを起こす危険性があるため、意識障害やうっ血乳頭の有無を確認し、疑わしい場合には、CTにより占拠性病変を除外し、穿刺の可否を判断します。

 

 

髄液の細胞数増加から推測

髄液の細胞数増加が

  • 好中球優位→細菌性
  • 単核球優位→無菌性

を疑います。

ただし、無菌性には、ウイルス性、薬剤性、自己免疫性、結核性、真菌性などが含まれます。

また、髄液中の糖が

  • 正常→ウイルス性
  • 低下(<40mg/dlあるいは血糖値の1/2)→その他

の髄膜炎を考慮します。

 

更に正確な診断には、グラム染色検査によって原因菌を特定することが重要です。

グラム染色検査

グラム陽性、陰性とに分けられ、更にそれを球菌もしくは桿菌という形状に分けられ、原因菌を特定します。

また、血液検査を行うと、CRP上昇などの強い炎症反応が見られます。

MRI画像

造影剤を用いた造影MRI検査で、髄膜に異常な造影効果を認めることがあります。

ただし、この所見が見られなくても髄膜炎であることはしばしばあり、症状や髄液検査などで髄膜炎が疑わしい時は髄膜炎として治療していきます。

髄液検査で区別する結核性の髄膜炎については、結核性髄膜炎とは?症状・髄液検査・MRI・治療法をわかりやすく解説で解説しています。

脳に炎症が及ぶ病気のひとつとして、単純ヘルペス脳炎とは?症状・原因・診断・治療法と早期受診の大切さもあわせてご覧ください。

細菌性髄膜炎の治療法は?

医師
早期に治療を開始することが重要です。

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早期治療のため、起炎菌の同定を待たずに、すぐに治療を開始します。

起炎菌が特定されていない場合

以下の表は一例です。抗菌薬の選び方は、国や施設、耐性菌の状況、ガイドラインの改訂によって変わるため、実際の治療は医師が判断します。
患者の年齢に応じた抗菌薬を投与します。

新生児期 アンピシリン+第三世代セフェム系
乳幼児期 カルバペネム系+第三世代セフェム系
小児~成人期 カルバペネム系+第三世代セフェム系+バンコマイシン
壮年~老年期 第三世代セフェム系+バンコマイシン+アンピシリン

起炎菌が特定されている場合

起炎菌に応じた抗菌薬の投与を行います。

肺炎球菌 カルバペネム系・第三世代セフェム系+バンコマイシン
B群レンサ球菌 第三世代セフェム系・アンピシリン
ブドウ球菌 バンコマイシン・第三世代、第四世代セフェム系・カルバペネム系
リステリア菌 アンピシリン
髄膜炎菌 第三世代セフェム系
インフルエンザ菌 第三世代セフェム系・メロペネム・両方の併用
緑膿菌 第三世代、第四世代セフェム系・カルバペネム系
大腸菌群 第三世代、第四世代セフェム系・カルバペネム系

特定されていなかった場合、起炎菌解明後には、起炎菌に応じた抗菌薬に切り替え治療をします。また、成人では、抗菌薬の投与直前もしくは同時に、副腎皮質ステロイド(デキサメタゾン)を併用することがあります。成人の細菌性髄膜炎を対象にした臨床試験では、ステロイド併用群で不良な転帰(相対リスク0.59)と死亡(相対リスク0.48)が減ったと報告されています(de Gans 2002)。

最後に

  • 発熱・項部硬直・意識の変化が古典的な三徴だが、そろわないことも多い
  • 細菌感染が原因で、年代別にかかりやすい菌が異なる
  • 髄膜刺激徴候検査・脳脊髄液検査・グラム染色検査・血液検査で原因を特定、診断
  • 早期に治療を開始する必要がある
  • 起炎菌に応じた抗菌薬を使う

 

特に、乳幼児の細菌性髄膜炎の起炎菌となるインフルエンザ菌b型(Hib)に対するHibワクチンや、肺炎球菌ワクチンの導入後に、小児の重い感染症が減ったと報告されています(Sano 2018)。(インフルエンザ菌はインフルエンザウイルスとは別のものです。)

悪化すると死に至るケースもある怖いものだからこそ、予防接種の重要性が分かると思います。

よくある疑問

Q. 風邪や、ウイルス性(無菌性)髄膜炎との違いは何ですか?
A. 風邪より症状が強く、強い頭痛や首の硬さ、意識の変化があるのが特徴ですが、見分けは難しく、髄液検査が必要です。ウイルス性は一般に細菌性より軽いことが多いとされます。

Q. どんなときに救急受診すべきですか?
A. 高熱に加えて、強い頭痛、首が硬くて前に曲げられない、意識がぼんやりする、けいれん、赤ちゃんでは哺乳できない・ぐったりしている・泉門(頭のやわらかい部分)が張っている、などがあれば、すぐに受診してください。

Q. 予防できますか?
A. Hibワクチンや肺炎球菌ワクチンなどの予防接種が有効です。接種の時期は、お住まいの自治体や小児科で確認してください。

参考文献

  • van de Beek D, et al. Clinical features and prognostic factors in adults with bacterial meningitis. N Engl J Med 2004. PubMed
  • de Gans J, et al. Dexamethasone in adults with bacterial meningitis. N Engl J Med 2002. PubMed
  • Sano T, et al. The incidence of pediatric invasive bacterial diseases in Nippon Medical School Chiba Hokusoh Hospital before and after the introduction of conjugate vaccines. J Nippon Med Sch 2018. PubMed