人間ドックや胃がん検診での、バリウム検査のあの発泡剤やバリウムは、まずくて飲みにくく、コツを聞いても飲み込むのに苦労しますよね。
そして、飲み込む時にも勢いつけて無心で飲むもんだから、んっ!と気管に入ってしまい、誤嚥してしまう可能性もあります。
(誤嚥は読み方は「ごえん」、飲み込んだものが食道ではなく、誤って呼吸をする気管に入ってしまうこと)
私も、苦手なものを飲み込む時、かまえてしまうと特に、誤嚥してしまい咳き込んでむせてしまったことがありますが、それがバリウムだった場合、影響はないのか?気になりますよね。
そこで今回は、
- バリウムを誤嚥した場合、体に影響はあるのか
- バリウムを誤嚥してしまった時の処置方法
- 自然に出てくることもあるのか
- 誤嚥を予防するための対策
これらについて徹底的に解説します。
バリウムを誤嚥してしまった!体への影響は?
まずバリウムは、化学反応などを起こしにくい物質で、発ガン性や化学毒性はありません。
バリウムを誤嚥してしまった場合、ほとんどは微量なことが多く、誤嚥した時に反射的に起こる咳で自然に出ることが多いのです。
また、なかなか出なくても、適切な処置をして排出させることで身体に影響が出ることはほとんどありません。
ただし、うまく排出されなかった場合は、
- 呼吸困難
- 肺炎
- 肺肉芽腫の形成等
を引き起こすこともあります。
では、これらの中で、肺炎と肺肉芽腫について説明します。
肺炎
誤嚥により肺炎を合併することが稀にあります。
誤嚥の頻度は高齢者ほど多くなります。
バリウムの誤嚥を契機に、細菌性の肺炎や誤嚥性肺炎を合併することもありますので、注意が必要です。
咳や発熱、喀痰、喉がゴロゴロする、などの症状が出た場合は、すみやかに受診しましょう。
肺肉芽腫
バリウムが、肺に貯留してしまった場合は、そこに肉芽腫を形成することがあります。
肉芽腫とは、慢性的に起こっている炎症によってできる腫瘤のことです。
バリウムによる肉芽腫の場合は、発がん性がないため、切除手術をする必要性は報告されていません。
万が一、呼吸困難や肺炎の症状(発熱・咳など)や肺の異変などが見られる場合は、すみやかに呼吸器内科を受診し、治療しましょう。
その際は、バリウムを誤嚥したことも伝えましょう。
では、次でバリウムを誤嚥した場合の対応について見ていきましょう。
バリウムを誤嚥した場合の処置方法は?
80歳代の女性の胃がん術前の検査でバリウム検査が施行されました。
右の気管支の壁にバリウムが付着して右の気管支が明瞭化しているのがわかります。
検査は途中で中止となりました。
方法を教えて下さい。
バリウムが気管に入った場合は、まず、誤嚥したバリウムを咳払いのように出すハッフィングと呼ばれる排痰法を行います。
ハッフィングでうまく排出できない場合は、スクイージングという呼気圧迫法と呼ばれる介助者を必要とする方法でさらにバリウムの排出を促します。
その後、肺をレントゲンで透視し、きちんと排出されたかどうか確認します。
ハッフィング
ハッフィングは、誤嚥したらすぐに行う方法です。
大抵の場合は、この方法で排出することができます。
- 胸の前で腕を交差させます。
- 下を向き、胸を圧迫するようにします。
- ゆっくり息を吸います。(深く吸わないのがポイント)
- 口を開き、声を出さないように、「はー」っと強く吐ききります。
- その後、数回咳をします。
この方法で排出できない場合は、スクイージングも組み合わせます。
スクイージングについては以下で説明しますね。
スクイージング
スクイージングは、介助してもらいながらする排出法です。
- ベッドなどに横になる
- 介助者が手のひらで背中側から肺のあたりに手を当てる
- 患者が息を吐くのに合わせて介助者は、ゆっくりと肺を圧迫する
- 息を吸い始めるのと同時に胸の圧迫を離す
- 2〜4を繰り返す
スクイージング(2〜3回)→ハッフィング→咳
これを繰り返すと効果的と言われています。
バリウムの誤嚥予防
まずは、緊張をほぐし、リラックスすることが大切です。
ここでは誤嚥予防の準備運動と、誤嚥しないための飲み方のコツについてまとめています。
では、準備運動から見てみましょう。
誤嚥予防の準備運動
誤嚥予防は、特に首の部分をリラックスさせることが大切です。
まずは準備運動をしておきましょう。
- 深呼吸し、肩の力を抜きましょう
- 腹式呼吸(息を吸いお腹を膨らませ、吐く時にお腹をへこませる)をしましょう
- 首を右回り・左回りにゆっくりと回す
- 首を左右にゆっくりと倒す
- 息を吸いながら肩をあげる
- 息を吐きながら肩を下げる
- 息を吸いながら両手を上げて背伸びをする
- 息を吐きながら両手を下げる
- おでこに手を当てて、力強く押して、おヘソを覗き込む
- 腹式呼吸をする
わかりやすい動画がありますので是非ご覧ください。
この誤嚥予防の準備運動をして、さらに誤嚥しにくい飲み方をマスターすればバッチリです。
では、次で誤嚥を予防する飲み方のポイントについて紹介しますね。
誤嚥しないための飲み方のポイント
先ほどの誤嚥予防の準備運動プラスこちらのバリウムの飲み方のポイントを抑えて、誤嚥を防ぎましょう。
- 唾液を飲み込んで喉を湿らせる
- 一度に飲む量は、普段飲み物を飲む時の量で
- あわてずにゆっくりと飲む
では、それぞれについて説明しますね。
唾液を飲み込んで喉を湿らせる
口や喉が乾燥していると、誤嚥しやすいのです。
なので、唾液を飲み込んで喉を湿らせておくことで、誤嚥を防ぐことができます。
一度に飲む量は普段の一口の量で
バリウムはまずいですし、口当たりも悪いので一気に飲んでしまおうと、一回に飲み込む量を多くしてしまいがちです。
しかし、それが誤嚥の原因になるのです。
一度に飲み込む量は普段、飲み物を飲むのと同じ一口の量で飲みこみましょう。
あわてずゆっくりと飲む
誤嚥をしてしまった方は「素早く飲むように」とアドバイスを受けたりすることで、焦ってしまったという方が多いのです。
高齢でなくとも、あわてて飲み物を飲んでむせた経験がある方は多いと思います。
どんな飲み物でも慌てて飲めば誤嚥しやすいのです。
ですから、とくに誤嚥しやすい方は、ゆっくりと飲むことを意識することが大切です。
また、バリウムといっても、緊張することなく、最近では色々な味のバリウムを選べる施設も増えています。
味を楽しみながらリラックスして挑めると良いですね。
- バリウムの味についての記事もありますので、参考にご覧ください。→バリウムの味付けは何がいい?おすすめと評判をご紹介!
- 胃カメラについてはこちらの記事がオススメです→胃カメラ検査とは?経鼻法のメリットは?
参考HP:硫酸バリウム製剤の誤嚥を防止するために
参考:バリコンミール添付文書
最後に
- ほとんどの場合、誤嚥しても自然に痰で出てくるので影響はない
- 発熱、咳が続くなどの症状が続く場合は、呼吸器内科へ(バリウムを誤嚥したことを伝える)
- 稀に肺炎や肺肉芽腫になる場合もある
- ハッフィングやスクイージングで排出できる
- リラックスして誤嚥しないよう焦らずゆっくり飲む
特に、高齢者の方や脳卒中などを起こしたことのある方は、注意が必要です。
誤嚥しても、適切な処置をすれば、ほとんどの場合は問題ありませんが、検査後に異常を感じたらすぐに受診しましょう。