脳ドックで脳動脈瘤が見つかり、かつ破裂の危険が高い動脈瘤の場合、治療検討の対象になります。

治療法には手術として、大きくコイルによる動脈瘤の塞栓術と、動脈瘤をクリップで止めるクリッピング術があります。

ですが、この手術にリスクはないのでしょうか?

今回は、脳動脈瘤の手術について

  • リスク
  • 適応基準
  • 合併症
  • 破裂した場合

など、気になる情報をお話ししたいと思います。


脳動脈瘤の手術をするリスクは?

脳動脈瘤が見つかって手術を受けるかどうかを決める際には以下のことを考えなくてはなりません。

  • 動脈瘤が見つかった場合、放置しても一生破裂しないかもしれない
  • また治療を行ったばかりに合併症が起こり、それで亡くなるかもしれない
  • あるいは、危険な動脈瘤が見つかり、治療することにより、結果的に破裂を未然に防ぐことができ、その人の寿命が大きく伸びるかもしれない

つまり、手術のリスクはあっても、手術をしない場合もリスクもあり・・・動脈瘤が見つかった場合、それを放置するか、リスクを取りながら治療するか、どちらがいいのかという点については実は答えはありません。

Cerebral aneurysm

ちなみに、未破裂の動脈瘤が破裂する確率は、年間平均破裂率として

  • 3〜4mmの動脈瘤→0.36%
  • 5〜6mmの動脈瘤→0.50%
  • 7〜9mmの動脈瘤→1.69%
  • 10〜24mmの動脈瘤→4.37%
  • 25mmの動脈瘤→33.40%

動脈瘤が大きくなるほど破裂する確率は上がりますが、動脈瘤が小さくても破裂の可能性はあるのです。

サイズだけでなく、動脈瘤の形なども破裂には関与し、破裂しやすい動脈瘤があります。

ですので、破裂しやすい動脈瘤があるなら、それは治療すべきだということです。

では、治療すべき動脈瘤とはどのようなものでしょうか?

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脳動脈瘤の手術の適応基準は?

上記で、破裂しやすい動脈瘤は治療すべきと申しましたが、以下のような場合、手術適応となります。

  • 動脈瘤の大きさが5mm〜7mm以上
  • 年齢が45-65歳
  • 動脈瘤が複数あるもの
  • 破裂の危険因子である、高血圧・喫煙・多発性嚢胞腎などがある場合
  • 動脈瘤破裂の家族歴がある場合
  • 動脈瘤の部位が脳底動脈先端部・前交通動脈・内頚動脈-後交通動脈分岐部など

これらに当てはまる場合、当てはまらない場合に比べて破裂のリスクが高くなるため、医師と相談の上、手術適応となることがあります。

医師
手術をすることのリスクである合併症についてもお話しします。

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未破裂の脳動脈瘤の手術で合併症が起こる可能性は?

脳動脈瘤の手術には塞栓術とクリッピング術がありますが、クリッピング術は従来から行われていた治療であるのに対して、塞栓術は比較的新しい治療法です。

塞栓術における合併症の起こる確率は低下傾向にあり、まだ破裂していない動脈瘤に対して

  • 塞栓術による合併症のリスク8.8%
  • クリッピング術による合併症のリスク17.8%

という報告があります。(AJNR 26:1902-1908,2005)

この論文によると塞栓術による合併症のリスクの方が低いことはわかりますが、それでもいずれにせよ結構高いですよね。

ということは、破裂していない動脈瘤(未破裂動脈瘤)の治療方針を決定するにあたっては、手術ではなく、血圧のコントロールやさまざまな画像検査による「経過観察」を行う保存的治療を選ぶ重要性が増しているとも言えます。

また、治療法を選択するにあたり、比較的新しい塞栓術の選択なしで、クリッピング術しか選択できないというのも問題ですね。

破裂した後の動脈瘤(破裂動脈瘤)に対する治療法は?

脳動脈瘤が破裂をして、一命をとりとめた場合、その動脈瘤がもう一度破裂しないように治療することが必要になります。

その場合、コイル塞栓術クリッピング術どちらがよいのでしょうか?

Cerebral aneurysm 1

どちらの治療法も可能な患者さんに治療を行った報告によると、術後1年の死亡・重度障害が起こった確率は、

  • コイル塞栓術で23.5%
  • クリッピング術で30.9%

つまり破裂した動脈瘤に対する治療もコイル塞栓術の方が治療成績はよいということです。

さらに、この優位性は術後少なくとも7年までは保たれていると報告されています。(Lancet 360:1267-1274,2002,Lancet 366:809-817,2005)

2015年脳卒中データバンクによると血管内治療(コイル塞栓術)の割合は近年増加傾向にあります。

  • この治療を行う施設が増えたこと
  • この治療で用いるデバイスや手技が発達したこと

がその要因とされています。

ただし、もちろん一概にコイル塞栓術がいいとも言えません。

その人の年齢や背景にあるリスク因子をしっかり考慮した上で治療法を選択することになります。

参考文献:新・病態生理できった内科学 7 神経疾患 P191・192
参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P106〜109
参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P146〜151
参考文献:脳卒中データバンク2015P168・169

最後に

  • 手術をしてもしなくても、リスクはある
  • 破裂しやすい動脈瘤があるならば、治療すべき
  • どちらの手術方法であれ、合併症のリスクはある
  • 破裂した場合の手術や未破裂の場合の手術、それぞれに合った方法を選択

 

手術をする、しない・・・どちらが正解でどちらが失敗ということはありませんが、リスクを理解し選択することが重要です。

手術をしておけば、手術をしなければ、どちらの後悔もありえるからこそ、十分な説明を受けた上で、患者本人だけでなく家族で十分に話し合う必要もあるでしょう。




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