全国の65歳以上の高齢者において、認知症の推計有病率は15%といわれており、高齢化が進む日本において、深刻な問題となっています。
そもそも認知症の条件として
- 明らかな記憶障害がある
- 記憶障害以外の認知機能障害がある
- 生活に支障がある
といったことがあり、これらは本人だけでなく、家族の問題にもなってきます。
また、高齢者だけでなく、65歳未満の若年性認知症も増加傾向にあります。
今後ますます増えていくことに加え、昨今の医学の進歩により、認知症の原因として最も多いアルツハイマー病の診断も進歩しています。
そのため、早期診断が重要となってきますが、
「認知症とひとまとめにいっても、どんな種類があるのか?」
「画像検査では、どんなことがわかるのか?」
など、認知症の診断をする上で、このようなことが気になってくると思います。
そこで今回は、認知症の主な画像検査のポイントや種類について、説明致します。
認知症の画像診断は?
認知症を客観的に画像で見るには主に次の2種類があります。
- 脳MRI検査
- 脳血流SPECT検査
脳MRI画像検査における認知症診断とは?
主として脳の萎縮や出血、梗塞などの形態変化や脳血管に狭窄〜閉塞がないかを評価するのに用いられます。
とくに、アルツハイマー病で特徴的な海馬や海馬傍回の萎縮の有無をチェックします。
症例 70歳代男性 認知症
両側の海馬及び海馬傍回の萎縮を認めています。
他の臨床情報と合わせてアルツハイマー病と診断されました。
脳のMRI検査にかかる時間をまとめた記事はこちら→脳のMRI検査にかかる時間は?子宮や腰・膝の場合は?
脳血流SPECT検査における認知症診断とは?
アイソトープ(核医学)を用いて行う検査です。
認知症の種類によって、脳の血管や脳の形態に異常がなくても、特定な部位の脳の血流低下が見られることがあります。
脳血流SPECT検査では、脳の血流状態を見ることにより、特徴的な認知症のパターンがあるかないかをチェックすることができます。
症例 70歳代女性 認知症
脳血流シンチグラフィ(の3DSSPと呼ばれる解析)において、両側の側頭頭頂部及び後部帯状回から楔前部にかけて血流低下を認めています。
アルツハイマー病に特徴的な初見で、他の臨床情報と合わせてアルツハイマー病と診断されました。
画像統計解析による自動診断とは?
これらの脳MRIの画像や、脳血流SPECT検査の結果を見て、医師により診断が異なってはいけません。
そのため、現在では画像統計解析により自動的に、
- 相対的にこの部位の萎縮が強い
- 脳血流が低下している
などということを教えてくれるソフトがあります。
最終的な判断は医師が行いますが、自動的に解析してくれます。
上の写真のように、Z score(ゼット スコア)という点数を出してくれます。
2つ受けることにより、認知症の原因の非常に高い検出率と他の病気との区別をできるようになります。
病院によっては、この2つの検査を1日で受けることができます。
ただし注意点として、画像検査で異常があるからといって、症状がなければそれは病気とは言えません。
あくまで症状があった上で、画像診断を行います。
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認知症の種類や鑑別は?
そもそも認知症を起こす病気にはどのようなものがあるのでしょうか?
一言に認知症と言っても、様々な種類があります。
代表的なものは以下の通りです。
アルツハイマー病
最も多い認知症で、海馬・後帯状回・頭頂葉内部の楔前部・頭頂葉に異常が現れます。
レビー小体型認知症
後帯状回・頭頂葉内部の楔前部・頭頂葉・後頭葉に異常が現れます。
とくに、後頭葉の血流低下が特徴的と言われます。
前頭側頭型認知症(FTD)
前頭葉・側頭葉が萎縮するため、前頭葉・側頭葉に異常が現れます。
脳血管性認知症
前頭葉にある中大脳動脈や前大脳動脈が支配する領域に、脳出血や脳梗塞が起こることによって、起こる認知症のことです。
参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P168〜186
参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P336〜351
認知症疾患治療ガイドライン2010(認知症の診断)P64〜67
最後に
認知症の原因と主な画像診断のポイントについてまとめました。
脳の萎縮の程度は人様々であり、萎縮が見られても症状がほとんどない人もいます。
また、萎縮が見られなくても認知症の症状がある方もいます。
そのため、あくまで症状がある場合に、画像の検査に回ることになります。
その際に、画像の検査では、
- MRIは脳の形態を見る検査
- 脳血流SPECTは脳の血流の状態を見る検査
とそれぞれの役割があり、2つを合わせることにより、より診断能が上がります。